漂着ゴミ、ドンキホーテ的アプローチ/

Coco mountain championship

2006年 1月



先日 日本のテレビ番組で漂着ゴミを特集しているのを見た。私の方は、海沿いに家を建てたので、何年か前から 漂着ゴミを拾っている。ゴミを山にして積み上げ、その高さを毎年競うように比べている。この高さを達成感の肥やしにしようとしているわけだ。毎年と書いた理由は、季節風の影響でゴミが流れ着く季節があり、1年周期で繰り返すからである。

拾っても拾っても、またゴミは流れ着くので、まさにドンキホーテの気分だが、ここでは、まず、フィリピンでの漂着ゴミを分析して、さらに、インターネットを使った漂着ゴミ拾い競争、Coco Mountain Championshipを提案したい。世界中の海岸線の総延長を、20mくらいで割った人数のエントリーがあれば、漂着ゴミ問題はかなり緩和されそうだが、それだけの参加が得られるかどうかといった見込みは、ここでは触れずにおきたい。しかしながら、「もうドンキホーテとは言わせない」と、そう公言できる可能性がゼロではないとは主張したい。

人工のゴミ

日本のテレビ番組では、漂着ゴミとしては、近隣諸国から流れ着くペットボトルやシャンプーの容器といった人工のゴミを主に問題にしていた。しかしながら、私の住んでいるフィリピンのシキホール島の海岸では、人工のゴミの割合はまだまだ少ない。スリッパ、ペットボトルのキャップ、お菓子の包装に使われていたプラスチックなどで、目障りではあるが、これらが全体に占める割合は、かなり小さい。
ペットボトルも ほとんど流れ着かない。日本のちり紙交換のように、私設でペットボトルを回収している人が私のところに来たことがある。ペットボトルを渡しても何もくれないが、ペットボトルを再利用する仕組みができていて、ゴミを減らすのに役立っていそうだ。また、現地の人が、ペットボトルを 半分に輪切りにして、口の方は、植物を仮植えする鉢として使い、下の方は、小舟に貯まった雨水を かき出すのに使ったりしているのを見かける。身近にでもうまく資源を再利用している。
漂着ゴミではないが、鉄くずもほとんど消えてなくなる。以前 私の家に近所の子供が沢山やってきて、地面に落ちている釘や針金のくずを、拾って持っていった。鉄くず屋に売って 小遣いを稼ごうというわけだ。
外国の人には想像しにくそうだが、このようにフィリピンでは リサイクルが生活に溶け込んでいる。地球に優しい国だ。

しかし、この話題も ただでは終わらない。ペットボトルのキャップはやたらと流れ着く。リサイクルに乗っかっていないことが容易に想像できる。中身を取って半分に割られた椰子の実の殻がやたらと流れ着くのと同様の理由だと想像できる。ペットボトルのキャップがリサイクルされることを期待したい。

ゴミの分類

流れ着くゴミは、以下の五つに分類できる。

  椰子の実、流木、海藻、海草、人工のゴミ

これは、処理する都合により、私がここで仮に決めた勝手な分類ではあるが、そんなに悪い分類ではないはずだ。
人工のゴミは さらにいろいろ分類可能だが、既に述べたように 現状では、全体に占める割合は少ないので、一まとめにした。海草は、これも日本のテレビで見たことがあるが、日本語で海菖蒲と呼ばれるもので、細長く薄い葉が、切れて大量に海岸に流れ着く。海草と海藻を分けているのは、海草の方は、乾燥したあと、風が吹くと簡単に飛んで行って無くなってしまうからである。風が強いと乾燥しなくても飛んで行く。これに対して、海藻の方は、枝分かれがつながっていて飛んでいきそうにない。
ただし、海草が飛んで行って無くなるのを、ただ待っているわけではない。目障りなので、さっさとほうきで掃いて取り除いている。

量が多いのは 椰子の実の殻と流木である。これらをPhilippine NO.1 Natural Resourcesと 馬鹿にしながら、そう呼んでいるが、その資源を後で利用することを考えて、と言っても燃料になるだけだが、とにかく 別々に分類して山にして積んである。椰子の実の殻や流木が海草などと混ざった状態でそのままにしておくと、海草や海藻が乾きにくいし、絡まって、始末が悪い。さっさと分類して取り除くに限る。
流木の方は、通常 流木と言った場合に連想される椰子の木のような大きな木の流木もあるが、直径数ミリの小枝も沢山流れ着き、これらも流木に加えている。

三つのゴミの山

ココ・マウンテン

椰子の実の殻を積み上げたもの。これを書いている時点では、約1.5mの高さになった。椰子殻は、半分に割られて、高く売れる果肉を取った後のものが多い。このため山に積み易い。また、凹凸凹凸の順に積み重なることが多く、かなり密に積まれる。

近くに同じような名前の宿屋があり、そのパロディーだが、この場所は この山があるので、ココ・マウンテン・ビーチリゾートだとふざけて言ったりしている。

カホイ・マウンテン

カホイは現地の言葉で木の意味で、流木を積んだ山をこう呼んだ。これを書いている時点では、約2mの高さになった。枝別れしている状態のものも多く、山はかなり疎な状態で積まれ、ココ・マウンテンとカホイ・マウンテンの高さを単純に比較するのは、あまり意味がなさそうだ。

ガベージ・マウンテン

燃料に使えそうにないその他のゴミを積み上げた山をガベージ・マウンテンと呼んだ。私の家の前の海は、海草が多いので、ガベージ・マウンテンは、ほとんどがその葉っぱだ。葉っぱが乾いて風が吹いて飛んでいくのを待てば、この山はほとんどできないのだが、目障りなので、さっさと掃除するので、結構な山になる。上の二つの山はフィリピンの海岸線のどこでも、同じものができそうだが、最後のこの山は、場所によって中身が異なりそうだ。その他のゴミということだ。

地形の影響

私の家の前の海は、凹形の地形になっていて、少し砂浜になっているのだが、海から風が吹くとゴミがたまり易い。ゴミを集めるには適した地形だが、土地の値打ちとしては明らかにマイナスだ。余談になってしまうが、土地を買う場合には その分値引きの理由になるはずだ。こういう場所に住んだら 漂着ゴミ拾いのプロジェクトを始めるにしくは無し?!

季節風の影響

アジアモンスーンという気候区分を、その昔 学校で習った。日本だと南東と北西の季節風が吹くが、フィリピンでは、北東と南西の季節風が吹き、それがかなり安定して吹いている。この影響で、海側から季節風が吹く時期には、ゴミが漂着し、その反対の時期には、ゴミがなくてきれいである。これは、海陸風や朝凪、夕凪と呼ばれる海と陸の熱しやすさの違いからくる1日の変動ではなくて、1年周期で吹くの季節風である。

ゴルフ・ボーリング方式

ゴミは、小さなゴミ箱やちり取り、ゴミ袋などで集めて、どこかに収集するのが普通だろうが、ここでは遊びの要素を取り入れ、ゴルフ・ボーリング方式を考案した。考案したというのは大げさで、単にマウンテンに向かって、同じゴミを投げるたけだ。ただし、ホールインワンが無理な離れたところもあるので、第二打(第二投)まで許すことにして、これを通常のゴミ収集の範囲としている。


漂着ゴミの収集にまつわる話題を一通り書き並べたが、これらを参考にして、以下のココマウンテン・チャンピオンシップにエントリーする人が現れることを期待したい。

実際には、「なんと馬鹿ことを言っているのだ。顔を洗って出直して来い。」と言ってお叱りの方も多いかもしれないが、ちょっと言いわけもしておきたい。

以前、これよりもさらに馬鹿馬鹿しいと言われそうな 「ハエたたきプロジェクト」をかなり精力的に実施した。どれだけ 直接の効果があったかどうかは触れずにおくが、この結果をインターネットで公開しているのを見て、インドのカルカッタ在住の日本人からメールを頂いた。「大いに参考になった。カルカッタで実施して、信奉者も増え、成果を挙げている。」ということだった。実際には、 洗練されたという意味での sophisticatedという言葉を使いたいが、そのまま同じでなくて、うまく改良して、その結果 成果を挙げられていた。
こちらのプロジェクトは役に立ったと主張したい。

ココ・マウンテン・チャンピオンシップ

とにかくゴミの山の高さをインターネット上で競うということだ。南の島らしく、椰子の実の殻の山の高さで勝負するのが良さそうだ。フィリピンや東南アジアの国ならば、こちらと同じような流木の山もできるだろう。遠く離れた国からエントリーがあれば、別の種類の漂着ゴミの山でも、こちらは挑戦を受けて立つ。

私はマイレージを貯めるのが趣味で、100万マイル飛ぶという目標で、あちこち出かけていたことがある。マイレージの上級会員のステータスを維持するため、毎年自転車操業で、あちこち出かけないといけなくなるのが普通だが、100万マイル飛ぶとそのループから抜け出せるから100万マイルを目指したのである。その時に、マイル・チャンピオンシップのパロディーで、100万マイル・チャンピオン・シップをインターネット上で始めようと思った。手作業の入らないシステムが自分で簡単に作れれば、それを始めていたのだが、100万マイルを達成してしまったこともあり、そのまま何もしないで終わった。しかし、その後 同じような競争をインターネット上で始める人が現れた。 このような場所の壁を取り払った競争が十分可能なことは、その例からだけでもわかる。

写真を掲載できる掲示板を使えば、枠組みとしては十分で、ちょっとルールを決めておくだけで、特に管理する人がいなくても、参加者だけで、このレースを運営することができそうだ。直前の表に自分の実績を書き加え、更新した表をつくり、自分の証拠写真を添付して、掲示板に書き込むだけで良い。lock, unlockの手続きもいりそうだが、参加者が爆発しない限り、そんな厳密なことは言う必要はないだろう。

現状は上記のような掲示板も準備していないので、もしも参加者が現れた場合は、写真と自己申告の高さを送って頂ければ、最新の写真入ランキング表を掲載する。その後、運営方針を決める。

もう一つは、ローカルなCoco Mountain Championshipである。パンフレットを作って、近所の人に参加を呼びかけているが、結構引き合いがある。参加するかしないかは、賞金・賞品次第のようだが、まだご褒美については何も決めていないので、それが決まるのを皆待っている。
海沿いに住む隣近所が参加してくれれば、こちらに、流れて移ってくる可能性のあるゴミを削減できるので、こちらも大いに助かる。

予算があれば、漂着ゴミ研究所を設立して、近所の人を雇って、漂着ゴミの動きを解析すれば、面白そうだし、少しは役に立つかもしれない。渡り鳥の動きをトレースするように、GPSと送信機を使うことになろう。雇用の創出にもなって良さそうだが、そのような予算があるはずはない。シュリーマンのように、まずは、ビジネスで成功して資金を蓄える必要がある。


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