土地調達時の確認書類

2012年7月26日作成
2015年5月最終更新



フィリピンに住むために土地を購入したり リースする場合、確認しておいた方が良いことはいろいろあろう。

ここでは、特に田舎の場合を想定しているが、その場合 例えばインターネットがつながるかどうかというようなことも重要であろう。
また、特に田舎の島では電気代が高いのが普通で、エアコンをずっとつけておいては高くつく。外国人が家を建てると、大きな家になりやすく、家全体を24時間エアコンで冷やしていては、電気代が月10万円でも到底足りないということも起ころう。豪邸の割りに、夜部屋の照明はほとんど消えていたり、エアコンも使っていないという状況はよく見かけ、節電で好ましい傾向とも言えるが、贅沢な造りとの矛盾も感じる。これに対して、私の家では、一年のかなりの期間 安定して季節風が吹き抜け、かなり涼しく過ごせる。風がよく通り抜ける立地というのも重要視してよい要素であろう。

その他、言い出したらきりがないし、私は不動産業者でもないし 専門家でもないので、すべてを説明できるわけではない。ここでは、上記の例のような 立地等の確認事項ではなくて、土地を購入したり、リースする場合に最低限確認しておきたい3点セットの書類について説明したい。こんなものは常識中の常識でわざわざ説明するまでもないと、これまで思っていた。しかし、当事者になった人たちに、老婆心で、書類の確認はどうなっているかたずねてみると、予期していた「当然入手して確認した。」という答えが返らない場合が多いので 心配になり、ここでまとめようと思った次第である。

タイトルのコピー

タイトル(土地の権利書)は、その土地が登記されていることを示すもので、土地のオーナーの名前が書いてあり、その人との間で土地の売買契約(Deed of sale)やリース契約を結んだりする。しかしながら、既に何度も取り上げているように、フィリピンの田舎では土地の相続の手続きを済ませていない場合が多く、例えば死んだおじいさんの名義のままだったりする。後から親戚が「私にも土地の代金を払ってくれ」と言い出すフィリピンのお家芸を避けるためにも、タイトルの確認は必須であろう。

因みに、もしも、既に亡くなった人名義の土地をその子孫から買うということなら、亡くなった人のファミリーツリーを十分に確認しておく必要があろう。

タイトルの原本はオーナー自身が持っているものと、登記所に保管されているものがあるので、そのどちらかからコピーさせてもらえばよい。通常は、土地の売買を持ちかけたオーナーが、タイトルの原本を見せてくれるはずで、それを借りてコピーするか、オーナーがそれを貸し出すのが不安であれば、オーナーにコピーしてきてもらって、それをもらえばよい。

売り手に悪意があり、例えば二重売買を企てている場合には、登記所からもタイトルのコピーをもらった方が良さそうにも思えるが、それでも悪だくみを防げない場合が多そうだし、別の対策が必要になりそうだ。

タイトルがその土地を最初に登記したものであるなら、Free patentと書かれていて、この話はまた別途まとめたいが、タイトルの日付から5年間は売買が禁止されている。この制限にひっかからないか確認するのも必須であろう。最初の登記からいきなりFree Patent以外になるものもあるだろうと ずっと思っていたが、先日登記所の担当者に聞いてみたら、タイトルなしの土地のタイトルの発行は、登記所ではなくて、DENR(Department of Enviroment and Natural Resources)が行うとのことだ。それだと自動的にFree Patentになってしまう。この職員の話では、最初はFree Patentしかないそうだ。

タイトルには、その他、土地の所在地、境界標の座標なども書かれている。最後に日本の登記簿の乙区に該当する抵当権などの権利関係が記載されている場合があり、もしもその記載があれば 要注意で、それについて 問題ないか確認の必要があろう。

土地のスケッチ

タイトルの最後の方に、土地の境界標の位置が書かれているが、他の土地も合わせた地域の土地の図面がDENRに保管されている。その中から必要な部分だけトレースしたものを、要求すればもらうことができる。これとタイトルに書かれた数字から、検討している土地がタイトルの通りであるか、自分で現地に出向いて、おおよその確認をするべきであろう。隣の塀や、境界標の位置に問題が見つかるかもしれない。正確には測量してもらうということになろうが、自分でも巻尺を持参して測ってみた方が良いだろう。巻尺は安くないので、荷造り用の紐でも十分代用できる。マジックインキで1mことにしるしをつけて、10mごとには、目立つように結び目などでしるしをつければ、概略が簡単に測れる。最後の詳細は3mか5mの工作用の巻尺で測れば良い。

スケッチには、隣の土地のロット番号も書かれるので、それを見て、必要なら、周囲の土地のタイトルのコピーまでもらってくることもあり得るだろう。土地が道路に面していないMid lotの場合には、アクセスの通路が必要になり、周辺の土地の情報が必要になるはずだ。

Tax Declaration

固定資産税の支払いのため、土地や建物を査定したものが役所に管理されている。Assessor Officeがこの査定を行い、Municipal hallなどにある、その土地を管轄するAssessor Officeに行けば、Tax delcarationのコピーをもらえる。中身は、以前サンプルをいくつか紹介したとおりである。Tax Declarationにも、オーナー名、土地の広さその他確認すべき内容がいろいろ書かれている。しかし、通常一番確認しておくべきなのは、固定資産税(Lot tax)の支払い状況であろう。結構滞納があり、滞納すると延滞料がかかってくる。

Lot taxの支払いの確認が一番重要と書いたのは、登記済みの土地の場合であり、登記のされていない土地はTax Declarationのみと呼ばれていて、その場合には、Tax Declarationが所有の証のような位置づけになるはずで、これを確認することが特に重要になろう。Tax declarationのみの土地は、登記はされていないが、日本の土地表示登記のようなものは、DENRでされていて、Lot Noごとに、境界標のデータなどのTechnical descriptionがDENRで保管されている。

Tax Declarationには、場合によっては、その土地の前の取引の売買契約書などが添付されていることもあり、それも重要な参考情報であろう。ただし、少し余談になるが、その場合の土地の価格は、売買時のCapital gain taxを誤魔化すため、一桁少ない数字になってたりすることが多いので、本当のところの取引金額はよく分からない。しかし、この金額を売り手にぶつけて、こんなに安く買っているのに、よくもまあ、高い値段で売ろうとしていると言って、値段の交渉のため使うことはできよう。すると、売り手は正直に自分の購入価格を言うかもしれないが、基本は騙し合いであろう。

さらに余談が加わるが、土地の売買取引で支払うCapital gain taxは高額なので、フィリピン人オーナーの土地を、外国人男性がお金を出して フィリピン人の奥さんの名義にして買った場合などでは、Capital gain taxは 外国人の財布から支払われるというのが暗黙の了解のようになっている。名前から判断して、当然売り手が払うべきと思われるCapital gain taxだが、 売り手の方が満額代金を受け取りたいということから、変なことになっている。 サラリーマンが会社から給料をもらったことによって、支払う必要のある所得税、これを払うと手取りが減るので、会社が替わりに払ってくれるようなものだろう。 
Capital gain taxの領収書がないと、購入した土地の登記ができないので、売り手が払ってくれないと買い手が払わざるを得ないという話もあろう。さらには、Capital gain taxは売買契約から30日以内に払わないと高額の罰金が科せられ、これも買い手側が支払わざるを得ないという方向に作用しよう。

Capital gain taxの方は、買い手払いが多そうだが、Tax declarationの確認で重要と説明した固定資産税の未納があれば、それは、普通に誰が払うべきかに従い、売り手払いになりそうだ。税金を滞納しているような土地は買いたくないと買い手が主張したら 土地が売れない。それでは売り手は困るので、安い固定資産税ぐらいは払ってやろうということになろう。

以前、ある土地のTax declarationのコピーをもらおうとAssessor Officeに行ったら、Lot tax を払って行け、みたいなことを言われたことがある。税金を誰かが肩代わりして払っても、受け付けてくれるということである。Lot taxが支払われていない土地を見つけて、代わりに払い続けて、取得時効を狙うという話もある。


弁護士とエージェントに全部任せようと思っている人は要注意

自分は、専門家でないからと言って、弁護士とエージェントに丸投げしていては、後から問題が発生する可能性が高くなる。
弁護士やエージェントは、土地を売る側のために働いていることが多く、特にエージェントは土地を買う側が、自分のために働くエージェントを雇って、しかるべき土地を探してきて、地主と交渉させるというようなことは、なかなかありそうにない。

弁護士の方は、まだ買い手が雇ってきて買い手側が有利になるように働いてくれる可能性はあるが、それでも、土地が売れないと弁護士も収入にならないので、少々問題があっても、弁護士は売買を進めたがるかもしれない。

上で取り上げた書類は、私なら自分で全部揃えるが、集めるくらいは人に任せても問題ないだろう。しかし、それぞれの確認は、専門家と平行して、自分でもきっちりやるべきだろう。

どこまで問題と言うかは意見が分かれそうだが、例えば、次のような例があった。

シキホール島で、フィリピン人のガーフルレンドの名義で土地を買おうとした日本人男性がいて、いろいろと話をする間柄になったので、できる範囲では土地購入のアドバイスをしてあげようとフォローしていた。当然ここにまとめているような話が出てくるのだが、タイトルの名義人と売買契約を結んで土地を買ったかどうかが大きなポイントなので、その点を確認したところ、その日本人は、その通りだと肯定した。それでも、念のため購入前のタイトルを確認させて欲しいとこちらから頼んだ。しかし、いつまでたっても見せてもらえないので、地番を教えてもらい、登記所に確認に行った。すると、なんとその土地は、タイトル無しで、オーナーの欄は空白だった。登記されておらず、Tax declarationのみの土地ということだった。この日本人は弁護士に丸投げしていて、自分で確認することもせず、状況も把握できていない。弁護士に騙されていたわけだが、私が出向いて弁護士にクレームをつけたら、この日本人と弁護士、そしてガールフレンドとの間の関係がこじれるだけである。土地が登記されていなくても、これまでもずっと同じだったわけで、普通に住む分には特に問題ないとも言える。
シキホール島でこの人の土地のあるSan Juanでは、外国人が一番多い地域だが、タイトル無し、土地の登記のされていない土地だらけである。登記所に確認に行った時にも、地番が近い土地は、軒並み地主名は空欄で、同様にタイトル無しで、なんとデタラメなことをやっているのかと思った次第である。

とにかく 私が行って、ややこしい話をしなければ、特にもめないことなので、その後は二度と話もしていない。こちらは特に見返りを求めて何かしたわけではないが、できるかぎりは親切にして、その後良好な関係が続けばよいと思っていただけだが、それもかなわず、踏んだり蹴ったりの結果に終わった。


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