風通しを考慮した家の建て方

2006年12月



大きな家を建てても、すべてエアコンを入れるというのなら話は別だが、フィリピンは熱帯で暑いので、少しでも風通しのよい家を建てた方が 経済的で 地球にも優しく お奨めだ。現地の人の家を訪問しても、日本のように 小さい部屋がたくさんある家の造りではなくて、皆が過ごせる大きな部屋があり、必要に応じて家具などで仕切っている場合が多い。さらに、日本のように冬場の隙間風を気にするのとは対照的に、隙間だらけの家が多い。

フィリピンでは、5月の後半頃から、10月の前半頃までは、南から南西の季節風、それ以外は、北から北東の季節風が吹く。日本の夏場は、ユーラシア大陸に低気圧があり、その周りを左回りに風が吹き、日本の冬場には、大陸に高気圧があり、その周りを右回りに風が吹く。夏場は太平洋高気圧が発達し、冬場は大陸は高気圧に覆われ 放射冷却で気温が下がるという事実と つじつまが合う。

風の強さは場所にもよる。マニラの街中を歩いていたのでは、建物もあって、風が遮られたり、風向きが変わったりするので、季節風を意識するのも難しい。これに対して、田舎の方で、周囲が開けているところなら、明確に季節風がわかるはずだ。私の家は、海沿いの開けたところにあり、北より、南よりの季節風とも明確に分かる。日本と同様、例えば12月には、かなり風が強い日が多い。

ユーラシア大陸はそんなにすぐには移動しないので、南南西および北北東の風が、吹き抜けやすいかどうかがポイントと言える。

風通しの良さを、家を建てる土地選びの評価項目の一つに加えることをお奨めしたい。ただし、これにはトレード・オフがあり、風通しが良過ぎると、台風の影響を受けやすいという欠点がある。私の場合は、最初から家は消耗品と考え、台風で壊れても、貧乏な私でも建て直しを容易にするため、小さくて安い家にしてある。

家の建て方も、風通しを良くしたいということだが、これについては、現地の通常の家を参考にしたい。日本の家でも、昔ながらの農家なら、夏場に 風通しを良くできる設計になっていそうだ。

以前、私はシキホール島にある大きな家に部屋を借りて住んでいたが、家が大きいので、風上の部屋と風下の部屋ができた。自分の住む部屋が風上になる季節は窓から風が入り、過ごしよかったが、反対向きの季節風の場合には、反対側の風上の部屋に移りたいと思ったものだ。しかしながら、かなう話ではなかった。このような事態を避けるためには、家をあまり大きくせず、できれば各階に一部屋だけで、四方に窓を付けるのが一番と、私は主張するわけだが、それは、オーナーの好みによろう。
ビーチリゾートのレストランでよく見かけるような、屋根だけで周囲がなくて 広いバルコニーのようなスペースも、風通しが良くて 快適そうだ。ただし、物を盗まれるかもしれないので、それなりにセキュリティーの対策が必要だろう。

繰り返しになるが、風の強さは場所により大きく異なる。ここでの話は、主に田舎暮らしの場合と言える。都会で暮らすのなら、エアコンの利用を前提にすることになろう。


北よりの風が吹く季節で、たまに、風が南よりに変わることがある。これは通常 太平洋上に台風が発生した場合であり、台風に向かって風が吹くのが原因であることが多い。7月から9月頃の日本で言う台風シーズンには、台風は北よりに進むことが多いのに対して、11月、12月の台風は、西よりの進路を取ることが多々見受けられる。2006年の11月と12月に来た2つの台風は、どちらも、太平洋から西北西に進んで、フィリピンを横断した後、南シナ海へ出て勢力を盛り返し、海南島の南で、反対向きの風に衝突して、こまに回転と反対向きの力を加えたごとく、面白いように消えて無くなった。台風にも いろいろなパターンがあるものだと非常に興味深かった。

とにかく、北よりの風が吹く季節の台風は、特に日本人には要注意だ。12月に台風などと言っても、日本の感覚では、そんなものは関係ないし心配無用ということになろうが、今回も、アセアン会議を延期させ、観光地のボラカイに大打撃を与えた。何年か前に、セブ島の北の方でフェリーが沈んだのも12月の台風だ。
台風は、季節風が向かい風になる北へ進むよりは、西に進んでフィリピンを直撃しやすいということだろう。
危険の予兆は、風向きが変わることである。


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