土地購入          

手付かずの相続問題

2002年7月


フィリピンの田舎で土地を購入する際、最も多く直面するのが相続問題である。手付かずの自然とともに、手付かずの相続問題で頭を悩ますことが多い。
購入を希望する土地の権利書(タイトル)を見せてもらうと、第二次大戦後、その土地のオーナーとして、登録した人物の名前がそのまま記載されていることが多い。すなわち、2代、3代さかのぼり、祖父、曾祖父の名前になっていることが多い。オーナーが亡くなった時に、土地相続の処理を済ませる必要があるのだが、それを、ほったらかしにしているのである。子供たちに土地を分割するなら、それぞれの子供の名義で、別々に権利書を作り、それぞれ、相続税を納めないといけない。

フィリピンの田舎では、子供が多い。7人、8人兄弟は当たり前。最高では14人子供を作った人に会ったことがある。子沢山で、しかも、相続のほったらかし。この結果、土地に権利を持つ人の数は膨大に膨れ上がる。下手をすると、地主が1000人ということにもなりかねない。

こういった土地を購入しようとして、弁護士に書類作成を依頼すると、購入しようとする地主の取り分以内であれば、弁護士は売買契約書(Deed of sale)を作成してくれる。しかし、ある土地のどの部分が どの人の取り分かといったことが、不明確であったりすると、後々紛糾する可能性がある。

さらなる課題は、相続税(Inheritance tax)の未払いだ。私の知り合いはほとんど貧乏な人たちだが、彼らのなかで相続税を支払った人は皆無である。土地の権利がなくなると困るので、名義人の子孫の中で誰か管理するする人を決めて、その人の名前で固定資産税(Lot tax)は納めている。(もちろん、滞納や全く納めていない事例もある。) しかし、相続税はながらく未納のままの場合がほとんどだ。
このような土地の一部を購入する場合、オーナー側に 収入が入るわけで、税務署(BIR)に税金(Capital gain tax)を納めないと行けない。BIRへの支払いは、売買契約書の日付から約一ヶ月の間であり、遅れると多額の罰金を請求されるので、即座に納税に行かないといけない。ところが、この支払いにおいて、相続税の支払いが済んでいないと、あわせて相続税も請求される。さらなる課題は、この場合、BIRでは、土地の名義人が所有していたすべての土地に対する相続税まで要求する。相続税は、土地の評価額の10%程度だが、例えば、名義人が10ヘクタールの土地を所有していたとし、そのうちの一部で、100坪、約330平米だけ購入しようとしても、相続税は10ヘクタール分すべて支払う必要があり、100坪に対する相続税と比べ、その約300倍をまとめて、支払うよう命じられる。

以下、そんなことは非常識だと思われるかたがほとんどだろうが、フィリピンの田舎で貧乏な人から土地を買おうとすると、決めた価格の丸々が自分たちの懐に入ると考えている人がほとんどだ。その結果、特に外国人が土地を買う場合には、BIRへの支払いは、購入者側が行なうことになる可能性が高い。土地の測量に関する費用、弁護士への支払いなども同様だ。

するとどうなるかというと、100坪の土地に対する相続税の 300倍の額の相続税を購入者側が払うことになる。これは、100坪の土地の値段の30倍で、土地の価格が30倍余りになったのと同じことで、現実的でない。すなわち、未納の相続税のため、土地のごく一部だけ購入するのは現実的でない。

リースならばそういった課題はない。最長の50年契約にするのが有利だ。売買契約書の作成は弁護士が高額の手数料(土地の価格の5〜10%)を請求するが、リース契約なら、シキホール島の場合には、文書一件作成の定額料金(500ペソ)で済む。

外国人から土地を購入する場合には、通常そのような問題は、既にクリアされている。しかし、値段が、相場の何倍もすることが多い。業者を通す場合も同様だ。高い値段での取引が続くと、ますます地価は高騰する。


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