長く使える浄化槽

2002年9月


中が3つに分かれた浄化槽

工事中の様子で最後に上部をセメントでふさぐ。

一杯になった時に、水分だけ土に返す仕組みを工事しているところ

フィリピンのトイレの浄化槽(マンホール、Septic Tank)は、一般に、大きな穴をあけて、すべてをそこに流し込むだけである。家族が多かったりするとすぐ満タンになる。すると、人に頼んで中の汚物をくみ出すか、新たに浄化槽をつくり直さないといけない。日本のようなバキュームカーは見かけないので、くみ出すのは大変。出費もかさむ。

これに対し、知り合いのカナダ人から、米国やカナダで広く使われている耐用年数が長い浄化設備の作り方を教えてもらったので、早速自分が建てている家で試してみた。

ポイントは2つ。

まずは、浄化槽の中を幾つかの槽に分けること。汚物は順番に槽を移動するが、最後の槽では、ほとんど水分だけになっている。

もう一つは、水分だけを漏らせて土に返す仕組みがあることである。水平に張り巡らしたパイプの上部に小さな穴を沢山あけ、水分を徐々に均等に土に漏れさせていく。

浄化槽の中の構造だが、内部を幾つかに分けてる。今回は3つに仕切った。最初の槽は便器とつながっていて、すべての汚物が入ってくる。汚物が一杯になると次の槽に移動するのだ。この際、槽同士をつなぐパイプに工夫がある。すなわち、汚物の下のほうは固体。上の方は紙などが浮いていて、やはり固体なのに対し、真ん中あたりは液体であることを利用する。L型の接続部分とパイプで、槽の真ん中より少し上くらいから汚物が次へ槽へと移動するようにする(右図)。こうしておけば、ほとんど水分だけが次の槽に移動する。Lとパイプの取り付け位置は、汚物が移動する前側の槽であることに注意されたい。これは、目的を考えれば当然だ。

すべての槽の溢れ出す部分にも同様に、Lとパイプと取り付ける。また、順に溢れ出すために、それぞれの槽の溢れ出し部分の高さを順に低くしていく。それぞれ2インチ程度の高低差をつけておけば十分である。

このようにして、最後の槽からは、水分だけが溢れ出す。溢れ出した水分は、パイプを通して、別につくった小さなタンク(バッファー)に移動する。バッファーからは、さらにパイプが張り巡らされていて、それぞれの上部に、多くの小さな穴が開けてある。パイプは地中に埋められ、穴の上には小石。その上には土が盛ってある。また、穴の高さはすべて同じにして、偏りなく一斉に漏れ出すような設計にしてある。


その他の部分は通常のトイレの設備と同様である。注意したいのは、T型のパイプ接続部分である。まずは、便器と浄化槽をつなぐパイプの便器からすぐのところ。便器と浄化槽の間は4インチのパイプを使ったが、ここにTを使って2インチのパイプを上向きに取り付け、ガスを抜く。2インチのパイプを屋根上まで接続し、悪臭を逃がす。一番上にもTを取り付け雨水の浸入を防ぐ。
もう一つは浄化槽の入り口にもTを付けた。これは逆流防止である。

今回は、便所の床の高さと浄化槽の高さの関係から、便器を少し高くしなければならなくなった。そこで、便器のひな壇を試しにハート型にしてみた。写真(下)は、つくっている途中で汚れているが、このあと、トイレはタイル張りに、ひな壇には小石を敷き詰める予定である。このように、大工を使って、自分の好きな形を試せるのもフィリピンなら 容易なことである。


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