チクングニア熱

2014年11月 2日作成
2015年10月最終更新


(→2015年10月追加分へ)

フィリピンで伝染病と言えば、まず思いつくのはデング熱で、昨年は近所でも流行し、そのうちに 非常に親しくしている家の子供が高熱を出した。それで、毎日差し入れを持って見舞いに行っていたら、数日して発疹が出て、病院に行ったらデング熱だと診断された。そうなると機械的なもので、私はその家でさんざん蚊に刺されているので、程なくして同様に罹ってしまった。デング熱についてはまた別途取り上げたいが、一つだけ補足しておくと、蚊にも潜伏期間があるので、患者が発病して苦しんでいる頃は、まだ蚊に刺されても大丈夫な場合もある。とりあえず蚊に刺されないよう注意が必要だが、後からの方がさらに要注意と言える。

デング熱の方は程なく収束してしまったが、一年後、今度は別の病気が流行り出した。デング熱と類似で、発熱、発疹がある。デング熱との違いは、この病気では、関節痛が激しく、特に膝が痛くて立ったり、歩いたりできないくらいとのことだ。

周囲では原因は良く分からないと言っていて、診療所に聞きに行ったが、その手の病気が流行っていることすら認識していなかった。1kmほど離れた知り合いの家の周りでも、100m程度の範囲の家々で 軒並み家族全員、全部で80人くらい感染したそうだ。 地域全体だとかなりの数になるはずだ。それでも医療関係者が認識していないのは、流石フィリピンと言いたくなる。

デング熱では重症化して死亡することがあるが、この病気の場合は、二日ほど寝ていれば治ってしまうので、皆あまり心配していなくて、病院に行く人も少ない。近所の人の何人かは診療所にも行ったそうだが、原因が良く分からず、薬ももらえず帰ってきたということだった。

日本の国立感染症研究所の情報によると、東南アジアから日本に帰ってきた人で、現地で蚊に刺され、発熱、発疹があれば、マラリア、デング熱、チクングニア熱を疑うそうだ。当然のように、今回の近所の人たちも大抵蚊に刺されている。フィリピンでは、マラリアは最近はほとんど聞かないし、マラリアの場合は周期的に熱を繰り返したり、特徴があるので違いがわかるはずだ。デング熱だと、重症化してデング出血熱になり死亡することもあり、地域や病院が流行を認識しているので、原因不明という話にはならない。消去法的にチクングニア熱が怪しいと言えるが、今回この病気に罹った人たちは、軒並み膝が痛いと言っていて、関節痛が特徴のチクングニア熱の可能性が非常に高い。

デング熱の流行では、蚊の行動範囲が50mか精々100mと言われていて、ホットスポットから数百m離れているだけで 到って平穏で、デング熱どこ吹く風?のような状態である。そして、2ヶ月くらいしたら、1kmも離れていない場所がホットスポットになったりする。とても奇異な感じだ。
これは、私の住んでいるところがかなり田舎で家が散在しているからで、家が密集していたら、順番に広がっていくことになろう。

この病気の場合も同様で、すぐ近所では軒並み感染しているが、動きは遅く、パターンが一緒なので、蚊が媒介している可能性が高い。もしも空気感染や飛まつ感染だと、子供が学校でもらってきたりするので、狭い範囲で集中し、しかも広がりが遅いという この病気のパターンとは違ったものになるはずだ。

チクングニア熱と特徴が全く同じで、さらに別の病気があるのなら話は別だが、それでなければ、チクングニア熱の可能性が限りなく高そうで、日本の国立感染症研究所の情報からも、他は考えにくい。

疑いだけで終わらないためには、ウイルス検査が一番と思い 診療所で聞いてみたが、料金を払うと言ったものの、採血してどこかに送って、調べてもらうようなサービスはしてくれないそうだ。ドゥマゲッティに行けと言われた。

素人がやってきて、病院で知らない病名を持ち出し、この病気が流行っているのではないかなどと勝手なことを言っても、病院からすると越権行為のように感じ、快く思われないのは容易に理解できる。しかし、この病気が流行っていることが確認できれば、蚊の対策をすべきということも分かるし、現状では蚊が媒介していると思っているのは私が説明して納得した人だけで、私とその人たち以外にはいないし、大きな進展のはずだ。その話を持ち込んでも、全く興味を示さないのは、やはりフィリピンだと思わざるを得ない。

チクングニア熱については、インターネットで検索すればいろいろな情報が得られる。WikipediaのChikungunya feverの説明では、発疹の写真も載っていて、それを既に罹った人に見せたら、まさにこれだと言っていて、さらに確度が上がったと言えそうだ。なぜか発疹の写真は載っていないが、日本人には日本語の説明の方が分かりやすい。


いろいろ考察を書くと、素人が勝手なことを言っていると批判が出るかもしれないが、フィリピンではデング熱は子供の病気で、シキホールの病院でも統計データを持っていて、それによればデング熱の患者の9割は子供である。デング熱では、蚊に刺されてウイルスが侵入してきても発症しない隠れの人が結構居るそうで、患者が多くて、子供の頃に罹る人が多いと考えれば、分かりやすい。今回流行している病気と比較したいので、書いているのだが、デング熱の場合は、家族の中で子供だけが感染しているというのが一般的で、子供が順番に罹っていく。

これに対して、今回チクングニア熱と疑っている病気では、家族全員が罹って寝込む。これは、病気の頻度の問題で、以前に罹っている人が少ないと考えれば分かりやすい。

話を続けると確度の低い推測に向かうので これくらいにしたいが、100%の確度の前から今回取り上げているのは、注意喚起のためと、できたら詳しい方からコメントや、他の地域での情報を頂けたら幸いと思ったからである。インターネットで検索した情報によれば、フィリピン各地から日本に帰国した人で、チクングニア熱を発症し、ウイルスが検出された例が少なくない。以前の話だが、マニラやサマール島で流行していたという話も検索でみつかった。


(2014年11月22日追加)

私がこの病気を認識し出したのは10月のことで、近所の小学1年の女の子がこの病気に罹ったからである。上にも書いているように、昨年は、その子供がデング熱に罹り、その子から 蚊を媒介して私もデング熱に罹った。今度も同じようにうつるかと思っていたが、1ヶ月経過したものの 罹らないので、たぶん大丈夫なのだろう。そもそもの感染経路から言うと、その娘の母親が、近所の子供の家庭教師をしていて、毎日教えに行き、その家でも軒並みこの病気で寝込んでいたそうだ。そして、10月の始めに母親にうつり、それから半月ほどして、娘にうつった。デング熱同様 蚊にも潜伏期間のように、患者を刺してから、病気をうつせるようになるまでしばらく時間がかかるということであれば辻褄があう。そして、この娘の後は、その隣の家で 二人暮らしの両方とも同様に罹った。

その前の話をすると、8月頃には 先にも書いたように、この家から1kmほど離れた別の知り合いの家の周囲でほとんど全員 合計80名ほどかかったとのことで、その後も周囲では順次広がっている。いまだ進行形で、今後どのように広がっていくのか、いろいろな人から情報を集めているところだ。


2015年10月追加分)

昨年近所で流行した病気はチクングニア熱で間違いないと思っていたが、シキホールの診療所に行って聞いたら、そんな病気は知らないようで、名前を出したら、医者でもないのに何を言っているのかというような感じで煙たがられた。それなら、自分で罹った場合に、日本に帰ってウイルス検査をしてもらったらどうかと思ってみたり、 しかし、日本で広めてしまったらとんでもない。そんなことを考えていたら、シキホール在住の知り合いで先生をしている人の子供が、この病気に罹った。予算があるので、ドゥマゲッティの病院で診てもらったらチクングニア熱だと診断されたそうだ。これで、シキホール島でチクングニア熱が流行っていることが確認された。デング熱と同様で、病院でウイルスの検査まではしていない可能性が高いが、医者も言っていることだし、流行の状況からも、チクングニア熱で間違いないだろう。

最近でも、2015年9月には、隣町のLarenaにある大学生向けの下宿で、学生がほとんど全員この病気で寝込んだそうで、家が密集しているので、順番に広がるのは容易に想像できる。昨年の近所の例を先に書いてあるが、周辺で80人ほどがかかったという知り合いの家の当たりでは、10軒余りある家で軒並み家族全員がかかった。流行は昨年7月の1ヶ月で終了し、8月に私がフィリピンに戻ってきた時には、患者で寝込んでいる人はいなかった。しかし、その後も近くのいろいろな場所で流行し、2ヶ月くらいしたら隣のバランガイにも移っていた。そのバランガイで、まさに家族が順番に寝込んでいる家に 家庭教師で教えに行っていた 知り合いとその娘も病気をもらってきた。昨年の10月のことで、かなり遅い展開と言えよう。病気をもらって帰った二人が住む家の隣家の二人も同様に寝込んだ。

その後は、ずっと患者が出たという話を聞いていなかったが、今年9月になって流行の話が再度耳に入ってきた。ご近所で順番に広がったり、ホットスポットでもらってきて、離れた別の場所に飛び火させたりして、延々続いているのは間違いないだろう。

最後にチクングニア熱の特徴をもう一度まとめておくと、デング熱と同じでネッタイシマカが媒介し、発熱、発疹もデング熱と同じだが、デング熱とは違い重症化して亡くなることはない。さらに、関節痛があるのもデング熱との違いである。ネッタイシマカの行動範囲は100m程度の範囲で、患者を刺してチクングニア熱のウイルスを持った蚊のいる場所がホットスポットになり集団発生しやすい。さらに、たまたまホットスポットにやってきて、ウイルスを持った蚊に刺された人物が他の場所に病気を広める可能性もある。




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