日本の常識とフィリピンの常識

2011年1月作成




勤勉な日本人は多いので、その働きぶりをフィリピンで示して、現地の人に真似してもらえれば素晴らしいし、日本の進んだ技術を持ち込んで、フィリピンで活用できれば、やはり素晴らしい。しかしながら、何でも日本流を持ち込んだら良いかというとそうではなくて、日本の常識をそのまま持ち込んでもうまくいかない例も沢山ある。

最近は、シキホール島でも日本人が増え、日本人がらみでも、日々いろいろなことが起こり、それはそれで見ていて楽しい。しかし、「日本人が来ると物価が上がり、治安が悪くなる。」という通説は、それなりに当たっているので、最初からトラブルを避けたいのなら、日本人が行かないところへ行った方が良いということも言える。それには、日本人が普通に使うガイドブック。これに掲載されていないところへ行けば良いというのも、かなり当たっていよう。

話が少し逸れ気味になったが、ここでは、シキホール島で増えつつある日本人が 日本の常識を持ち込んで、トラブルや不都合が生じている例を紹介する。当事者から嫌われるかもしれないが、名前は出さないし、他の人の参考のために紹介するのが目的なので理解して欲しいとは思うが、クレームが出れば削除する。

最初は、これまでにも何度か取り上げているが、近所の日本人宿のオーナーで 元小学校の先生が 日本では、教え子たちに、「人を疑うことはとんでもなく悪いことですよ。」と ずっと教えてきて、フィリピンに来ても当初は人を疑うことをせず、大金を騙し取られた。相手は相当の悪党で、注意喚起のため、この話は他の人に広めてくれと、オーナーから言われているので、ここで取り上げるのに問題はないはずだ。この話はかなり前のことであるが、最近は日本人が増えたので、他にもいろいろ事例がある。

私のところを訪問した日本人男性が近所のフィリピン人女性と結婚することになったが、いきなり話が進んで、始めてフィリピンに来て、半年もしないのに話が決まったのだが、この男性はフィリピンのことをお勉強するのがまだまだ足りていないと私は思った。
この女性の家族は、フィリピンでは、標準偏差内に収まる普通の家族だが、特に金銭に関して いろいろとトラブルが生じるだろうと、当然のように私は予想した。私は以前からこの家族を良く知っていて、いくつか支援していたこともあり、私と仲が悪いわけではないが、それなりに問題もあったからである。支援のために渡したお金が違う用途に使われたというようなことである。しかし、これは、「一旦自分の財布に入ったお金はどう使おうと私の勝手」というフィリピンでよくあるパターンを無視した結果とも言え、相手を十分見定めないといけないのに信用した私のミスとも言える。
私は、この日本人男性に、「金銭関係でトラブルが生じるだろうから、結婚相手の家族でも、それなりに疑ってかかった方が良い。」と忠告したが、この男性からは、「結婚相手を疑ることはできず、信用するしかない。」という返事で、これも日本の常識だろう。私は、当初 この男性から疑り深い人物だと思われたに違いない。しかし、話が決まって数ヶ月もすれば、実際にいろいろと金銭トラブルは発生して、追加で後から後へと送金する羽目になり、1年も経過すると、私が当初話していた意味を十分理解してもらえた。

次は、最近近所に家を建て始めた日本人の例である。
・財布はきっちり自分で握り、建材の買出しは、人に一緒に来てもらっても良いが、自分で行って 自分でお金を払う。
・最初に、納屋その他小さな建物をf大工に建てさせてみて、大工の雇い方、資材の買い方その他一通りを
 お勉強して、マスターしてから、本番である自宅を建て始めた方が良い。
・建築現場へ頻繁に足を運び、と言うより べったり現場に居て、自分の目で十分監視すべきである。

日本の常識とフィリピンの常識を、性善説と性悪説のように対比させることもできるが、とのかく、家の建築に当たって、私はこの三つを提案した。
この人には、最初の二つはすんなり採用してもらったが、三つ目の項目には反論されて否定的であった。「フィリピンの大工さんの長い経験があるので、経験のない私などが口出しすべきでなくて、すべて任せておくべきだ。」ということであった。それで、最初に建てた小さな建物の時には、ほとんど現場へ来られなかった。しかしながら、結果は指示とは違うものができているし、かなり非効率な仕事のやり方であることが分かったので、次の建物の建築では、体調が悪い時以外は現場にほとんど付きっ切りに近い状態であった。
大工はサボっているわけではなくて、せっせと働いており、私にすれば十分合格点である。いくつかのポイントで、大工のフォローをしてやれば十分だと思う。
この方は大工を総入れ替えしたいと言われたので、私はそれだけは、思いとどまるよう説得したこともあった。総入れ替えの理由は、作業効率に不満を持ったのと、大工がバケツやスコップを持っていないので、それをこの日本人に買えと言い出したからである。大きな建築業者なら当然その手のものは持っているが、田舎の大工だと、スコップを持っている人に借りに行く場合が多い。大工と相談して、建材はその日本人が揃え、工具は大工が持ってくると確認したそうだ。しかし、スコップを始め、さらに電動工具までいくと、持っていない大工がほとんどである。安給料で何でも工具を揃えろというのは無理であろう。そう言って説得したら、なんとか納得してもらえた。

イマイチな大工を入れ替えるにも、タイミングを考えた方が良い。例えば、私の近所で、セメントを使った小さな家を建てる場合には、壁のブロックを積んで、屋根のトタン板を取り付け終わったところで一旦止める場合が多い。25〜30平米程度。大工が約6人で 通常は5日仕事である。普通のフィリピン人はそこで資金が尽きて、それでも、家に住み始め、後からお金ができたら続きの工事をする。そこで、この時点で一旦作業を止めて、しばらくしてから、再開し、その時には別の大工に声をかければよい。 

最後にもう一人、日本人男性の例である。こちらも家を建て始め、というよりも、まずは整地から始めた。雑木を切ったり、草を刈ったりする作業である。その人は、別の日本人女性のところに来て、その近所に住む一人のフィリピン人男性がよく働くので気に入って、その男性を雇うことに いきなり決めた。しかし、その男性はバイクなど乗り物を持っていないので、作業現場まで行くのが大変である。訪ねて行った先の日本人女性に、この男性は、どのようにして現場まで行けばよいのか尋ねるが、その女性もそんなことを聞かれても困るという話だった。日本のように、電車やバスで大抵のところに行けるというのとは状況が異なる。もちろん、貸切料金を払って乗れば、どこでも簡単に行けるが、下手をすれば日当より交通費の方が高いということになりかねない。日本の常識を持ち込んだ結果の失敗の一つであろう。


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