出来ちゃった退学

2008年 8月作成



できちゃった退学は、フィリピンの社会問題の一つである。このために学業を去って行った女子学生が毎年何人いることか。正確な数字が見つかったらまた紹介するが、毎年数千人のレベルをはるかに越えているのは間違いないはずだ。

以前に近所の学生を何人も取り上げたことがあったが、その続編として更新すると本人も恥ずかしいはずで、ここでは実名は挙げないが、その中の複数の学生も出来ちゃった退学してしまった。

近所の女の子の一人は成績優秀で、ドゥマゲッティの大学に通い始めた。親にそれだけの予算がないのは どう見ても明らかであるが、同級生がやたらとドゥマゲッティの大学に行くので、それにつられて入学手続きをしてしまった。出来が良いので、私は いろいろアルバイトで仕事を頼んだり、親しくしていたので、奨学金代わりに 入学祝いを渡した。日本で出すよりもよっぽど高額を支払った。
学費も親の気がかりだが、親が一番心配したのは男である。この女の子には、ハイスクール時代からボーイフレンドが居て、同じようにドゥマゲッティの大学に行った。親の監視が届かないので、このままでは遠からず子供が出来てしまうだろうと、親は心配して、何とか引き離そうと、半年で シキホールの大学に娘を転校させた。公立の大学なので、フィリピンでは、単位をそのまま認めてくれ、容易に転校できた。すると、今度はボーイフレンドも同じように転校してしまった。
この経緯では、容易にその後を想像でき、結局その子は大学3年で子供が出来て、大学を去って子育てを始めた。大学では妊婦の通学を認めていないし、子供が生まれた後、お金持ちならベビーシッターを雇って、母親は大学に通うこともできるだろうが、この場合は母親が自分で子供を育てた。
この後も容易に想像でき、男は当然のように養育費も払わないし、子供、内縁の妻(?)とも放ったらかしである。女の子の方は両親とともに実家で暮らし、子供を育てるというフィリピンでよく見かけるパターンになっている。噂では、男には別の女が出来たということだが、噂好きのフィリピンのことなので、定かではない。
とにかく、この女の子は自分のしてしまったことを悔い改め、学業に戻りたがっていた。私も、子供の手が離れるようになったら大学に戻るように勧めた。親に牛を育ててもらって学費の足しにしてもらっている。当然大学3年から復帰できるものとばかり思っていたのだが、近所の学校への転校と転部が重なり、振り出しに戻って1年からまたやり直しということである。
なぜ3年から復帰しないのかという疑問は残るが、近くの夜学の学校に通ったとか諸事情があるのは間違いないので、深くは追求していない。
とにかく、壮大な時間とお金の無駄をしてしまったことは間違いないので、私に言わせると、なぜ卒業するまで、子作りを待てなかったのかということになる。

この子は、私の隣家の女の子とも同級生なので、別の同級生のことも結構私は知っていて、クラスメートで他にも二人は出来ちゃった退学である。それを踏まえ、フィリピン全体で、毎年数千人をはるかに越えるだろうと予想しているのだが、実際、他にも沢山例がある。

次は シキホール島出身のフィリピン人女性と結婚した日本人の場合で、奥さんの妹の例である。この男性は、妹の大学行きの学費を下宿代なども含め全部支払い、支援の条件として、在学中は絶対に子供は作るなと約束させた。ところが、見事に約束を破ってくれた。先の例と同様、大学3年で妊娠し、出来ちゃった退学してしまったのである。こちらは先の例と比べると、その成り行きから復学は難しい。当然、この男性は立腹しているので、妹の復学に積極的であるはずがない。妹はそれほど学業に情熱があるようには思えず、既にかなり時間が経しているので、このまま行くのであろう。
一方、子供の父親の方は、無事結婚して一緒に暮らしている。しかし、妻子を養えるような収入があるわけではないので、日本人の奥さんの実家に住み着いた。何かと日本からお金が入ってくるので、それを期待してのことであろう。在学中に子供が出来たことと合わせて、日本に住む姉夫婦からよく思われているはずがない。
せめて、大学を卒業するまでは、子作りを延期してくれというのが私の意見である。それなら、いっそ、コンドームを配布して、子作りを延期してもらったらどうかと思ったりもするが、それには反対する日本人も出てくる。フィリピン政府もファミリー・プランと称して、コンドームを配布か低価格で販売していたのは聞いているが、それが多長多短であることは間違いない。宗教上の理由で避妊しないという話もある。
この日本人の意見は、この家族が幸せに暮らしているからそれでよいということである。確かにそれは、多長多短の大きなプラスの要素だが、それだけで、この主張をするなら、この日本人男性に 無駄になった学費を払ってあげたらどうかと言いたくもなる。しかし、学費は大した話ではなくて、問題は、延々と支援してきた後の落胆と失望であろう。しかし、そんな期待をフィリピンにする方が間違いだという反論が出そうで、なかなか話が収まりそうにない。

こんなことを書いていると NGOの人々からも嫌われそうだ。お涙頂戴の悲惨な状況を紹介してこそ、寄付が集まるのに、こんなレベルの低い話を広めようとされては逆効果ということになろう。しかし、現実を十分把握しなくては、良い結果が得られないというのが私の主張である。以前の訪問者の一人である日本人女性は、フィリピンで援助の仕事をした経験があり、奨学金を誰に与えるかで悩んだそうだが、全く同じ話があったそうだ。そのため、出来ちゃった退学しそうにない学生を選びたいということだが、その手法を聞いても、十分と思えるような内容は聞き出せなかった。学生本人に念を押すということはあるのだろうが、その結果が上の例である。簡単ではないだろう。私の印象では、上の例の二人はどちらも、男が放っておかないような顔をしていて、そういう人を避けるというのが有効な手立てになりそうにも思うが、それは失礼な話で、逆差別とも言われそうだ。

詳しく取り上げるのは上の二人だけにしておくが、それ以外にも、例えば、こちらのペンパル募集で紹介していた中でも、13歳の子供だと思っていたら、次に行った時には、その女の子が自分の子供を抱いていて びっくりしたことがある。他にも、ハイスクールの途中で子供が出来た例をいくらも知っている。

しかし、当然ながら多いのは、それより年齢が上の大学生の場合である。特に女子学生が3、4年になると やたらとお腹が大きくなる。

解決案を提示できない話を紹介するのは心苦しいが、事実を知るのも大事だと思って、ここで取り上げた。
意見だけ繰り返すと、とにかく子供を作るのは卒業してからにしてもらったどうかということで、実際そうしている学生の方が圧倒的に多いのは言うまでも無い。

コメントを直接書き込まれてもなかなか対応できないので、ブログにしていないが、何か意見があれば メールで送って頂ければ、この後に追加し、こちらのコメントも加えたい。


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