プリンター寄付の考察

2012年8月作成



フィリピンの学校などへパソコンを寄付する話は、最近特によく聞かれるようになった。私も10年以上前から、その手の話題を順次紹介していて、直接、間接に参考になっていることが少なくないと思っている。その場合に幾つか課題があるが共通するのはメンテナンスの問題だろう。日本で新品の組み立て式のデスクトップを買っても、1年したら壊れますよと言われてしまうくらいで、実際にはもう少し使える場合がほとんどだろうが、どこか壊れて部品を交換することも少なくない。寄付したらそれでおしまいの あとは野となれ山となれでは、悲しい結末が見えてくる。これが、バイクであれば修理の体制が確立されているので、なんら問題ない。しかし、パソコンでは、そうはなっておらず、壊れたら勝手に自分たちで対応してくれるだろうなどと考えるようでは、フィリピンの事情を分かっていないと言わざるを得ない。

パソコン本体の方が重要なので、そちらの話で前置きが長くなってしまったが、別の機会に詳しく説明したい。今回はプリンターの寄付の話題を取り上げる。

寄付してもらったか、他の経路で入ったかは別にして、パソコンが導入されている学校の先生から プリンターを寄付して欲しいという話が出てもおかしくない。そもそもあれをくれ、これをくれと言われたら、乞食と一緒なので相手にしたくないという話もあろう。フィリピンの学校で日本人がボランティア活動をしていて、最初、何かの機材をその日本人が寄付したら、そのあといろいろなものを寄付して欲しいと言い出し、あまりにあつかましいので、途中で止めて帰国してしまった人の手記を読んだことがある。

私などは、くれと言われてあげていては、乞食の育成にしかならず、そういう場合はわざとあげないようにしているので、あまり言われないようになっている。そもそも寄付するだけのボランティア活動というのは、特にフィリピンでは課題が多い。短く言えば、依存症を増すだけで、乞食の育成の危険性が高いということである。現地の人でも、よく分かっている人からは、ろくなことにならないのでやめておいた方が良いと言われることもある。

そう言いながら、私の場合でも、これまでに、一体何トンのものを飛行機やバリックバヤンボックスで運んで、配ったことかとも言える。喜ばれるので、ついついそうなってしまう。ただし、少なくともあつかましいという言葉を使いたくならないよう相手を選ぶ必要があろう。

パソコンの話から始まって、なかなか本題のプリンターの話題に到達しなかったが、ここで前処理として取り上げているような課題をクリアーして、プリンターを寄付することになったとしよう。

その場合に、何も考えずに、店で売っているものをそのまんま寄付すると、今度はインクが高過ぎて、ポッキリで終わってしまい、よく言われるSustainableにならない。人に依頼してインクのコストを見積もろうと思ったこともあるが、こちらが期待している報告書が出て来ず、店の人の受け売りしかないが、黒とカラーのカートリッジの標準的なもので、300枚程度印刷できると言うことだ。一番安いプリンターが2000ペソ程度、インクのカートリッジも黒とカラーのセットの合計がそれに近い値段になる。メーカーはカートリッジで稼ぐビジネスモデルなので、プリンター自体は無料のような値付けになっている。

販売店の店員が言う数字から計算すると1枚7ペソ程度かかる。これに対して、インターネットカフェなどで印刷すると1枚1〜2ペソ程度のところもある。以前は印刷は非常に高かったが、最近は安くなった。これは、当然だがリフィル(Refill、詰め替え、補充)のインクを使ってコストを抑えているからだ。メーカーからは嫌われそうだが、高い純正品のインクを買える人ならいざ知らず、寄付してもらった人が1枚7ペソもかかる状態でプリンターを使っているのは異常で、そもそも、寄付なんかしてもらわず、インターネットカフェで印刷せよというのがまともな考え方であろう。生活保護とジェネリック医薬品の関係と同じと言える。

プリンターを寄付するなら、インクのリフィルの答えもつけて寄付しないと意味が無いと言えよう。

プリンターのインクのリフィルと言うと、これはプリンターのメーカーの利益の根幹を揺るがす話なので、書くのは憚れるが、一方プリンターの寄付の話であれば、インクのリフィルのことを書かないのが憚れるということになる。従って、プリンターの寄付を検討していない人に読んでもらっては困るということになりそうだが、そうは言っても読む人は勝手に読んでしまいそうではある。また、そんな話は十分承知と言う人が多そうでもある。

回りくどい言い方になっているが、メーカーに嫌われそうな内容でも、寄付の話という前提が、書き手の免罪符になっているとも言えよう。

日本でもリフィルは少なくないのだろうが、フィリピンの方が、非常に安いインクも売っていると言えよう。安いインクでは、カートリッジが壊れてしまうかもしれないとか、印刷の色が長持ちしないとか、いろいろ課題もありそうで、多長多短である。カートリッジもインクの容器だけの場合と、プリンターヘッドを兼ねているものもあったりで、それによって、リフィルのし易さ、壊れやすさなどいろいろと影響がありそうである。結局、プリンターのメーカー、プリンターの型式、インクの種類、カートリッジの形態、カートリッジの型式くらいが大きく影響して、リフィルの成否が分かれて来るのだろう。うまくゴールにたどり着けば、ほとんど無料で印刷し放題ということになろう。
自分の経験で、うまくいったり、駄目だったりいろいろなので、このように書いているが、普通の人はすべからく成功しているのなら、私がへまをして 勘違いしているだけなので、ご容赦願いたい。安物買いの銭失いの可能性はあるが、安物でもうまく回して行きたいという思いがあって、こちらは失敗も少なくないのだろうというのが 私の予想である。

リフィルのやり方は、インターネットで検索すれば、主に動画で、個別の場合ことに いろいろと詳しく説明が得られよう。ただしそれでずっとうまくいくかどうかは、やってみないと分からないと言えそうだ。ほとんど無料のループに入れたとしても、プリンターが壊れたり、カートリッジがphase outしたり。これはいけると思ったら、プリンターやカートリッジを買いだめしておけということになるかもしれない。

極めつけは、外付けインク付き改造モデルであろう。タイあたりでは、改造品がそのまんま店に並んでいる情報がインターネットの検索で見つかったが、今はどうなっているのか、確かめに行っていないので分からない。人のふんどしビジネスであることは間違いなく、メーカーからすると、見つけたら燃やしてしまいたくなるくらいの代物であろう。しかし、準正インクが高過ぎるという話もある。

フィリピンでは、業者が外付けインクを取り付けるのをやってくれるのを見かける。値段を聞いてみたら、材料費と工賃との合計で約2000ペソとのことだった。 これで、3000枚ほど印刷できるそうだ。 リフィル80ペソとのことで、リフィルのループに入れば、ほどんと無料で印刷できると言っても良い。
しかし、プリンターの値段がオリジナルのカートリッジ込みで2000ペソ程度なのに、外付けタンクの追加も2000ペソでは、どう見てもバランスが悪く、追加の方は ボッタクリに思える。

怪しい業者に儲けさすのは癪で、それよりは、インクだけ買ってきて自分でリフィルしたいと思ってしまう。

業者が改造を加えると言っている同じ型式のプリンターで、私の経験では、紙送りがおかしくなってしまったものがある。プリンターが故障してしまったら、改造の初期投資はどうなるのかという不安もあろう。

怪しい(?)業者が外付けインクタンクを
取り付けた後のプリンター




シキホール島のページへ戻る

ホームページへ戻る