進学シリーズ
ハイスクールを成績トップで卒業したJay Annの場合 

2005年 6月


Jay Ann
販売したエプロンの製作者

Jay Annは 成績優秀で、傍で見ていても勤勉なことが良くわかる女の子である。パソコンでブラインドタッチを完全にマスターしたのは、残念ながらこのJay Annひとりだけである。そこで、こちらのプロジェクトにいろいろ参加してもらっていたのだが、ハイスクールの最後の学年になると、宿題やら学校の用事が多くて、なかなか時間を割いてもらえなかった。先生の下請けをしていて、日頃の小テストは、すべてJay Annが採点していた。しかし アルバイト代も出ない。日本でこんなことをやらせていたら、父兄が「給料返せ」と言い出し、先生が叩かれるのは必至だ。しかし、こちらでは、給料が安いと言いわけするのか、採点を生徒まかせにしている。1年前に卒業した近所の別の女の子も、せっせとテストの採点をしていた。

こちらのプロジェクトに時間を割いてもらうべく、私の方で、かなりの時間をかけて、無償で家庭教師のようなこともやった。インターネットとパソコンがあればできる図面の入力の仕事を提供して頂ける日本の方が現れ、一番 出来が良いJay Annが試行して、それなりに収入を挙げてもらい、その後インストラクターになってもらおうと目論んだ。ところが、Jay Annは試験の採点までやらされ、大方の時間を学校や先生に持っていかれたので、こちらのプロジェクトは、うまく回転するところまで至っていない。

とにかく、まじめに勉強するので、近所のハイスクールをトップの成績で卒業することができた。フィリピンでは、やたらと表彰があり、Jay Annの場合も、卒業式で 大統領からも含め、沢山メダルをもらって嬉しそうにしていた。

私も卒業式の様子を見に行ったが、成績の上位は、ほとんど女の子である。そのためだろうが、先日、米国の図書館で、世界大学年鑑を見ていたところ、フィリピンでは圧倒的に、大学生は女性の方が多い。日本で私の卒業した大学のデータもあったので、そちらを見たら、男性が8割で女性は2割しかいない。日本の私立の進学校は男子校の場合が多い。日本で 男性の方が優位になっているのは、江戸時代頃からの風潮なども大きく影響していて、それはそれで問題だと思う。しかし、フィリピンの学校教育で、女性の方が圧倒的に上位に立っているのは、それはそれで、課題があると思う。見ていても女の子の方が勤勉な場合が多い。これについては 男の子の方に問題があろう。

ただ、例えば数学のテストの内容を見ても、計算ドリルのようなことしかやっていない。
「マイナスとマイナスを掛けると、どうして プラスになるのか?」と質問してみても、「それはルールだ。」「先生がそう言った。」これ近い答えしか返ってこない。例えば、お米を家族で毎日2kgずつ食べるとして、3日後と、2日前のお米の量からでも、具体的に十分説明ができるはずだ。
コンピュータ関連の授業があると、キーボードにどんなキーがあるか やたらと覚えさせたり、地理では、首都の名前をやたらと覚えているとか、とにかく、やたらと暗記させる。これでは、私のような、丸暗記が苦手な人は、早々に落ちこぼれてしまうことだろう。
学校での評価の仕方か変われば、ハイスクールの成績上位者の男女比率や、大学生の男女比率も変わってくるのではないかと思う。
もう一つ、フィリピンでは、看護婦や介護士など女性が多いコースが、大学の学部学科に含まれている点も、大学生の女性比率を上げる要因となっている。

Jay Annが1番の成績でハイスクールを卒業できたことに クレームをつけているようにとれなくもないが、とにかく彼女が、一番まじめで勤勉であることは間違いない。別のところで紹介したように、日本からミシンを持って行ったが、Jay Annは すぐに使い方をマスターして、上手に使えるようになった。他の子は、飽きっぽくで長続きしない場合が多かった。


進学を話題にしているのだが、その前の部分が長くなってしまった。

Jay Annは成績が優秀なので、必ず進学するだろうから、1年前から、どういった進路があるかとか、奨学金はどういったものがあるか 調べるように薦めたのだが、受け入れられなかった。私の方で調査の費用を負担するし、レポートにまとめれば、それを有料で買い取ると言ったのだが、駄目であった。とにかく、現状 学校でやっていることが最優先で、先生が要求しないから、そのような先々の調査は、二の次にされてしまった。
日本なら、かなり前から、自分の適性に応じて進路を決めるし、それが合理的なのだが、フィリピンでは、早めに先々の準備をするという風潮は少ない。
その結果、ハイスクールを卒業してから、バタバタしだすことになった。奨学金に応募しようと思った時には、既に ほとんど締め切りは終わっていた。

どんな大学があるかぐらいは、ハイスクールにも情報があるが、学部や学科は何かあるのかとかいったことでも、ハイスクールを卒業した後、大学に行ってみて、やっとわかる程度である。

Jay Annは 最初「銀行に勤めたいので、金融関係の学科に進みたい」と言っていた。ところが、私の方で、フィリピンで大学に行って、後々十分な収入を得られるのは、医者、弁護士、それから外国で仕事が得やすい看護婦に介護士くらいだという話を、繰り返し していたのが影響したのか、急に看護婦になると言い出た。
ドゥマゲッティの公立の大学で、今年から看護婦のコースを開設し、クラスメートの中では、彼女一人だけが、足切りの点数よりハイスクールの成績が良かったので、そちらに入学することに決めたのである。公立の大学なので、他に比べて学費は安いが、私が学費を出す羽目になったTinaも同じ大学だが、そちらも結構費用がかかることが判明したし、Jay Annが米国などで働けるようになるまでに、かなりの出費が予想される。いろいろ手伝ってもらっているので、私の方からも、奨学金というか、入学祝というか、1年分の授業料くらいは提供したが、学費の不安は残る。

看護婦になって米国等で働けるようになるまでの詳細を、彼女にも 手伝ってもらって、今後調査する予定である。

Jay Annは写真写りはよくないが、Mirryliiと同様 とても美人で、ボーイフレンドもいるし、米国にたどり着くまでに、結婚して 子供ができて、それが 障害にならないかと思ったりもしてしまう。しかし、そういう場合は、近所でも例があるが、子供を親に預けて、やはり出稼ぎに行くことになるのだろう。もしも、逆に、出稼ぎに行ったばかりに、婚期が遅れるか、独身のままであったりして、「看護婦になって、米国で働いたらよいと薦められたお陰で、女の幸せを失った。」と言われても困る。そう言い出したり、そういうことになる可能性のある人には、最初から絶対に薦めてはいけないのは当然だろう。

貧しい家庭の子供に出資して、看護婦にならせて、米国で働けるようにして儲けさせるというプロジェクトを進めるのであれば、教育や勤め先の調査に加え、こういったことのシミュレーションも十分しておく必要があろう。

女性が一人で外国に出稼ぎに行くと言うのは、とても大変なことだと思う。本人たちが希望しているので奨めているが、こちらもついつい いろいろ考えてしまう。


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