進学シリーズ 
1年働いて学費を貯めてから進学するMirrylii

2005年6月12日作成
2005年6月14日更新


Mirrylii

Mirryliiと妹のRogi

フィリピンのハイスクールは四月が卒業。五月に大学の入学試験や入学手続き(Enrollment)があり、6月から大学の授業が始まる。今回は、私のところにパソコンの使い方を練習に来ていた子供たち(子供というには十分大きくなってしまった。)が、大勢大学に進学する時期になり、こちらも どっぷりと、その中に はまってしまった。

後で紹介する私の家の隣の女の子のTinaは、年金暮らしのおばあさんから学費を支援してもらう予定が、急遽 駄目になった。とても悲しい顔をして「セブで1年働いてから、来年大学に行く。」と言い出すので、あまりにも気の毒で、また、私の方も別に悲しい経験をしたところだったので、1年分の学費は私の方で面倒をみると安請け合いしてしまった。

他にも 入学祝いや奨学金を直接出す羽目になり、これでは いくら資金があっても足りない。しかし、あまりにも 気の毒な場合が多く、できれば支援や投資したいものだ。このため、数年後には長期で日本に出稼ぎに行くことがほぼ確定したと言えそうだ。そうなると、これまでと同様に ホームページを更新を続けることは難しくなることだろう。


最初に紹介するのは、1年前にハイスクールを卒業したMirrylii。卒業後しばらくして シキホールの雑貨屋で働いていたので、進学は諦めたのかと思っていた。ところが、最近話を聞くと、近くの大学(Siquijor State Collage : SSC) に入学の手続きをしているとのことである。1年働いて学費を貯めてから大学に行くという話に深く感銘を受けた。日本だったら、入学試験に受からず浪人することはあっても、学費が払えなくて、1年働くというのは、聞いたことがない。そんなことが起こりそうなら、子供は親を非難することであろう。 フィリピン人は、勤勉さに欠け、怠け者が多いと私自身も少し偏見を持っている中で、Mirryliiの話に感動した。実際には、このように一生懸命頑張っているフィリピン人は多いのである。

時給6円、フィリピン版蟹工船

しかしながら、話はそれだけでは終わらない。詳しい話を聞こうと、Mirryliiの家に行ってインタビューしたところ、働いていた雑貨・食料品店の待遇は、以下の通りと聞かされた。

朝4時半に起きて仕事に出かけ、労働時間は朝5時半から晩の7時まで。食事は出るが休憩時間も無く、年中無休である。1日13時間労働で計算すると、月の労働時間は400時間近い。これで月給が1200ペソ(2400円)。時給わずか6円ほどである。日本と比べて物価が安いので、ある程度賃金が安いのはわかるが、この安さでは どうしようもない。1日働いても、牛乳1リットルバック1本も買えないのである。 結局五ヶ月働いたそうだが、給料は全部で6000ペソ(1万2千円)。Mirryliiの1年間の学費を見積もったところ、約1万8千ペソ。全然、学費に足りていない。

これに対して、この店の娘は、同じ年にハイスクールを卒業したが、既にセブの大学(University of Cebu : UC)の看護婦のコースで学んでいる。学校の休暇には、家に帰って来て 働いていることもあるが、半期で3万ペソ(6万円)の学費を親から出してもらって、資金面の苦労は何も無い。こちらの学費は、Mirryliiが受け取る給料と比べると、格段に高い。いかに搾取されているかがわかる。看護婦は世界的の不足しているので、容易に米国で働くことが可能で、そうすれば年間数万ドルの給料が約束される。Mirryliiはどうかと言うと、残念ながら学費が足りなくて、進学するのは教育学部であり、これでは外国で働くことは難しい。二桁も少ない収入で生涯終わってしまう可能性が高い。幾らハングリー精神があっても、貧民層から這い上がることが難しいフィリピンの現実がわかることだろう。

(2005年6月14日追加分)
1年くらい働いてから、大学に行く方が、熱心に勉強するので良いという意見を頂いた。私も同感だ。
しかしながら、1年くらいでは全く足りないのが悲しい現実なのである。希望通り看護婦になろうとすると学費は50万円程度は必要だ。Mirryliiの場合、日本流だと月々残業200時間を続け、20年ほど働き続けないと、学費が捻出できない。

Mirryliiの学費

Mirryliiの年間の学費を1万8千ペソと見積もったが、その内訳は以下の通りである。

授業等大学への納付金 半期で6000ペソ 6000x2=12000ペソ
下宿の部屋代 月250ペソ 250x10=2500ペソ
週末帰宅の交通費   1500ペソ
食費   2000ペソ
合計   18000ペソ

大学への納付金は、半期で6000ペソ。これは教育学部の場合である。Mirryliiは看護婦になって外国で働きたいと思っていて、しかも今年からSiquijor State Collageでも看護婦のコースが新設されたので、本来ならそちらに入学したいところだが、学費が高いので断念してしまった。

「それなら私が出してあげよう。」と言いたいところだが、他にも沢山出費が重なっていて、安請け合いするわけにはいかなかった。

食費を年間2000ペソと見積もったのは、かなり厳しそうだが、家から米や食材をかなり持って行き、自炊することを前提にしている。別途支援することになったTinaの場合は、食費を1日40ペソで見積もったが、これだと月1200ペソ。長期休暇の間は二ヶ月家に帰ってくるとして10ヶ月分で12000ペソ。大きな違いがあるが、こちらは近くのお店で おかずを5〜10ペソ程度で購入することを前提にして計算した。

Cow girlプロジェクト

学費不足の解決策として、以前から近所の人たちに、Cow girlプロジェクトというアイデアを提案している。子牛を買ってきて、自分の手で育てるので、Cow boyで良いのだが、成績が良くて 進学資金が無くて困っているのは、女の子の場合が多くて、しかも、看護婦やCare giver等 外国で働ける可能性が高いのも女性の場合である。そこでCow boyが牛を追うように、女の子に牛の世話をしてもらって、将来の学費を自ら捻出する方法を考えたわけである。子牛は6000ペソ程度で買える。実際には、売っている子牛を見つけるのは容易ではないが、それをなんとか見つけ出す。そして、1年手元に置けば、成長して1万5千ペソ前後で売れる。できれば、メス すなわちCowが良い。子供を生んで、数を増やせるからである。オスなら売って、その代金で子牛を複数買う。これにより、最初2頭から始めても、3年すれば10頭程度に増える。大学進学の3年前から始めれば、大学に進学するには十分な資金ができる。

豚の飼育の方が フィリピンでは より広く行われている。しかし、豚の餌を店で買っていては、赤字になる可能性が高い。牛なら そのあたりの葉っぱを食べていれば良いので、飼料代が要らない。ただし、草が一杯生えている田舎でないといけない。

Mirryliiの場合も、これを数年前から行っていれば良かったと言いたいが、彼女の家には豚しかいない。子牛二頭を購入する代金を寄付して、今からでも試してもらうよう言い残して、私は日本に帰って来た。

看護婦学費投資

別のところで、ボランティア投資ゲームというアイデアを提案しているが、その例の一つとして、看護婦等になる学生の学費への投資が、かなり有望ではないかと思う。

私の知り合いの日本人で、中国人女性と結婚してシリコンバレーに住んでいる人がいる。奥さんはスタンフォード大学の病院で看護婦をしていて、ご主人よりも奥さんの方が、よっぽど高給取りだということであった。米国に行って看護婦をして20〜30年働けば、合計1億円以上の収入を得られることであろう。これに対して、フィリピンの田舎で働いていたのでは、2桁少ない収入しか得られない。

初期投資としての学費は、50万円程度である。それが 1億円にも化けるので、ビジネスとしても大きな可能性を秘めている。大学に通い始めてから高給取りになるまでに、かなりの時間がかかるので、リスクも大きいだろうが、例えば、こんな運用の仕方もある。
成績優秀だが、家が貧乏なので進学が難しく、しかも性格が良い学生を探してきて、大学に行く学費の面倒をみる。卒業してうまく米国などで働けるようになれば、毎年の収入の何パーセントかを利回りとして、その合計が、最初に出資した例えば4、5倍程度になるまで送金してもらう。これを年金のように受け取る。ボランティア投資年金と呼ぶのが良さそうだ。

ここでは、学費を出すところから書いたが、上の子牛を育てるところから始めれば、資金が数千倍に大化けする可能性を秘めている。

さらには、高給取りになった本人からも、知り合いの貧しい人などに、投資なり支援をしてもらい、同じような輪を広げていく。壮大な計画と言えるが、指数関数的に状況が改善される可能性を秘めている。

現状だと、親がそこそこ資金を持っていないと、学費が出せず、結局 貧乏人は、なかなか貧困から抜け出せない固定化した社会になっている。これを打破する方法として、資金を提供する側にも、受け取る側にもメリットがあるWin-Winの案と言いたい。


ここで、長々と、投資について書いているのは、Mirryliiにも誰か投資してくれる人が現れないかと、淡い期待を抱いているからである。
しかしながら、現実は そう甘くはないだろう。私の方で、実際に投資なり支援をして、実績を示してからでないと、なかなか難しいかもしれない。

Mirryliiはとても美人なので、米国の病院で看護婦などをしていたら、独身の患者等からプロポーズされて、結婚して 子供ができて、米国にそのまま居着いてしまうことになりかねない。そうなると、高固定費の生活が始まり、わざわざ 出稼ぎに来た効果が薄れてしまうかもしれない。
ただ、そんなことを想像するのは野暮なことであり、万一そうなっても、投資の回収は十分可能だろう。

彼女によれば、ペンパル募集を見た日本人の男性から お手紙が届くそうである。現在は外国で学んでいて、学業が終わったら会いに来てくれるそうだ。 これも野暮なことを書いていることだろうが、相手が誰であれ、彼女が日本人男性と結婚して、日本で Care Giver等として働けるようになればいいなとも思う。

Mirryliiは よく頑張っているので、上のどちらの方法でも、他の何でも良いから、とにかく貧困から抜け出してもらいたいものだ。そして、得た収入を、周りの貧しい人たちに還元して、Better offの輪を広げてもらえば、すばらしい。

   (連絡先)Mirrylii Catada
    Cang-Alwang Siquijor, Siquijor 6225


シキホール島のページへ戻る

ホームページへ戻る