ベトメットの悲劇

2012年8月作成
2012年9月更新


(→2012年9月更新分へ)

シキホールで買ったヘルメット(左)と
ハノイで買ってきたヘルメット(右)


日本と同様 フィリピンでも、バイクを運転するときにはヘルメットを着用しないといけない。しかし、これは、警察やLTO(Land Transportation Office 陸運局)の運用により、厳しく言わないところも多い。実際にも、シキホール島でも少し前までは、警察官やLTOの職員でもヘルメットをかぶっていなかった。今でも、ドゥマゲッティではヘルメットをほどんど見かけない。ドゥマゲッティの街中では、皆ゆっくり走っているので それで良さそうにも思う。タグビラランでは、以前にたて続けに何度か取り締まりがあって、その後は取り締まりがなくなったということだ。セブの街中では、基本的にヘルメット着用であろう。

このように場所によっていろいろだが、普通は田舎ではあまりヘルメットは見かけない。タイでバイクを借りた時でも、そこそこ大きな町のチェンライではヘルメットありで、田舎のパンガン島ではヘルメットなしだった。

以下は シキホール島の話に限るが、以前はヘルメットをしない島だった。ところが、ここ数年、Larenaの警察は、取り締まりを行うようになり、Larenaに行く時は要注意となった。取り締まりが始まったのは、Larenaで死亡事故が起こり、警察の上位組織であるセブのRegion 7のOfficeから指導があったからだ。そこへ、今度は、私の家から数キロしか離れていないところで、たて続けに2度死亡事故が起こった。このため、近所にあるSiquijorの警察もやたらと取り締まりをするようになった。

安全のため、ヘルメットを着用しましょうと ここで一言書いて 終わりにしたら良さそうな内容ではあるが、フィリピンのことなので、いろいろと、書きたくなる話が出てくる。既に上に書いた地域による違いや、同じ場所でも状況が変わるというのもその一つである。

ここでは、少し笑い話のようでもあるが、表題にも取り上げているベトメットについて取り上げたい。ベトナムで買ったヘルメットなので、日本式の略し方だと多分ベトメットと言うはずだ。ハノイで200円程度で買った。たいした強度がなくて、おもちゃのようでもあるが、着用しないよりはずっとマシだろう。ベトナムでは、これが普通で、バイクに乗る人は、大抵この安物のヘルメットを着用している。ベトナムでは、取り締まりにあってもこれで問題ない。

ベトメットは軽くてコンパクトなので、バイクの座席の下の物入れにも入るので、重宝して使っていたのだが、警察の検問で呼び止められた。こちらは、ベトメットを被って運転しようとしているのに、警察官曰く、「俺にくれ」。
あげてしまっては、こちらは 被るヘルメットがなくなり、違法になってしまう。そう説明しても、警察官はお構いなしに、「俺にくれ」と繰り返す。だめだというと、現地では見ないヘルメットなので、どこで買ったか聞かれ、ベトナムで買ったというと、今度は、「俺にも買ってきてくれ」である。さらには、同僚の警察官も「100ペソくらいなら払うので、俺にも買ってきてくれ」と言い出し、合計2つ買ってくるよう警察から指示(?)された。

さらに、今度は7月になって、別の警察官のグループの検問に通りがかったが、「規則が変わって、ベトメットは、強度が弱いので駄目だ」と言われてしまった。しかしながら、同じ検問の場所で、別の警察官から、「珍しいのでベトメットが欲しい」と言われ、私も私もということで、結局全部で5個欲しいと言われた。ベトメットでは検問で不合格で、駄目のはずだが、気にしないで、そんなことを言っている。

警察も冗談のように言っているだけで、買って来なかったとしてもどうなるものでもない。駄目もとで言ってみて、買ってもらえたらうれしいという程度のことであろう。みんなよく知っている人たちなので、検問で少々ひっかかっても、アミーゴ、アミーゴと言っておけば、通してくれる世界だとも言えるし、今あるベトメットをとりあえず警察官にあげてしまえば、その後ヘルメットなしで検問にひっかかっても、「ヘルメットは、警察官がくれと言うのであげてしまった。」と言えば、許してくれそうだとも言える。

いい加減さを糾弾しようとしているのではなくて、おおらかで、この程度でも良いのではないかと思って書いてみた。

しかし、題名のとおり、折角わざわざハノイで買ってきたベトメットでは、受け入れられなくなり、結局、新たなヘルメットを買う羽目になった。ICCと書いた品質保証のシールが貼っていないと駄目ということだったが、その他いろいろと要求仕様があり、DTI (Department of Trade and Industry)で確認するよう警察に言われた。しかし、そちらに行くと、いろいろ疑問をぶつけて、当局の気分を損ねてもよくないので、直接お店に行って、これは認可されているというヘルメットを買った。しかし、それを被ると、正面を向いているとスピードメーターが見にくいという欠点があって運転しにくい。首を上下に頻繁に動かすしかないのであろう。音も聞こえにくくなるし、スピード感がなくなり、いつの間にか飛ばし過ぎているとか、欠点ばかりが目に付く。

安全第一だが、許可される範囲で、それほど仰々しくない使い勝手の良いヘルメットを探すべきというのが、私の場合であろう。

ドゥマゲッティでお店のヘルメット売り場に、DTIからの張り紙があり、そこに要求事項の説明があった。ICCは輸入品の品質保証のシールで、ヘルメットの安全を示す十分条件となっている。もう一つPSと書かれたシールでも良くて、そちらがそのまんま製品の安全性を保証している(Product Safety) 。 PSの方は巷の話題にならず、ICCばかりが住民の間で言われるのは、輸入品一辺倒ということで、フィリピンに住む外国人の一人からしても、ちょっと悲しい。しかし、バイクは圧倒的に日本メーカーの製品が好まれるのは、日本人としては嬉しいものだ。ただし、私のバイクも日本メーカーの製品だがタイ製だ。


(2012年9月更新分)

ドゥマゲッティやタグビラランの話も取り上げたが、その後、現地の人にそれぞれ聞いた話では、ドゥマゲッティでも来年の1月からヘルメットの着用が必須になるそうで、タグビラランでは既に実施されているそうである。

これまでのように、「かつ消え かつ結びて」となるのかどうかは よく分からないが、ローカルな話ではなくて 広域でヘルメットの着用を厳守するよう求められるようになったということである。

安全のためには当然の処置であろう。 しかし、熱帯なので暑いとか、窮屈だとか本音を書きたくもなるが、それは ひんしゅくなことなのだろう。

一方現地の人々にしてみれば、高いというのが一番の課題のようだ。わずか200円ほどのベトメットなら、安くてお手軽なので、これも認めて欲しいと、再び思ったりもする。


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