フィリピンのビーチリゾートに見る土地利用の矛盾

1999年9月作成
2000年7月更新


フィリピンのビーチリゾートでは、土地が広くて快適な点と、建物が新しくて快適な点が両立せず、基本的な矛盾を抱えている。

バンタヤン島 セントバーナードとジョイの場合

セブ島の北に浮かぶバンタヤン島は、白砂のビーチが美しい、自然に満ちた島である。この島には、約10個所のビーチリゾートがある。ここでは、その中で対照的な、セントバーナード(St.-Bernard)とジョイ(Joy)の例を取り上げる。

セントバーナードは、最近できたビーチリゾート。コテージは新しく快適で、値段も高くないので(一泊700円〜1000円程度)、欧米の宿泊客で賑わっている。オフシーズンでも満室になることもめずらしくない。ただし、敷地が狭いのが難点。通常、ビーチリゾートのコテージは、十分間隔を置いて建てられている。さらに広い庭がある。ところが、ここはコテージはぎちぎちに建てられ、庭も狭い。海に面してはいるが、ほんの少しだけ。敷地面積は、300坪もなさそうだが、噂では、この狭い土地を300万ペソ(約900万円)で売りつけられたらしい。宿泊客は快適さを求めて、ビーチリゾートに泊まるので、場所の狭さ
には不満が残る。

セントバーナード・ビーチリゾート

コテージは新しく快適だが、狭いところにぎちぎちに建てられている。

ビーチに面しているが少しだけ。

一方、セントバーナードから海岸を少し歩いたところに、ジョイという別のビーチリゾートがある。こちらの敷地は、セントバーナードの7、8倍。非常に広い。オーナーは、親から相続したため、このような広い土地を持てたのである。
しかしながら、コテージがボロボロのため、誰一人泊まる人はいない。オーナーは敷地内にりっぱな屋敷を立てて住んでいるが、コテージを建て替えるだけの蓄えがない。ビーチリゾートの看板をあげているものの、開店休業状態である。
オーナーは この土地が高く売れるのをひたすら待っているのか、さだかではない。しかし、かたや、狭い敷地にたくさんの外国人を詰め込んでいる別のビーチリゾートの現実があり、こちらも、土地を有効活用すべく、何か手を打って欲しいものである。

ジョイのビーチ

広々として快適だ。

ジョイの敷地

セントバーナードと比べものにならないほど広い。

コテージはオンボロ 

人が泊まっているのを見たことがない。

利用者の利益からすれば、どうして、この2つが共同で、新しくビーチリゾートを始めなかったのかと言いたくなる。やはり自分だけでオーナーになりたいということか?

また、セントバーナードのオーナーのような、高い額で土地を買う外国人が現れたためか、この島には、ビーチ沿いにやたらと空き地がある。綺麗にフェンスで囲まれていて、高く売れる日を、ひたすら、待っているようである。

いずれにせよ、この二つの土地が有効に活用されていない現実を、地球もバンタヤン島も怒っているに違いない。

シキホール島  CharigmaとTikarolの場合

バンタヤン島と同様のことが、他の島でも起こっている。シキホール島は、セブ島の南に浮かぶ、バンタヤン島と同じく白砂のビーチのある自然豊かな島である。この島での例を紹介する。

Charigmaは最近できたビーチリゾート。例によって土地はかなり狭く、道路からビーチに向かい細長く敷地が続いている。ビーチに接している部分はかなり少ない。その細長い敷地に、アパートのように部屋が並んでいる。当然部屋はビーチには面していない。新しいが窮屈さを感じるところだ。

これに対して、Tikarolは、この島で最初にビーチリゾートを始め、10年以上前から、土地を所有している。地価があまり高くない当時に土地を買ってあるので、十分広い土地を買えた。しかし、コテージの数が他と比べ、圧倒的に少ない。資金が尽きてしまっていて、2人のオーナーがそれぞれ、1つずつコテージを持っているだけである。従って、静かな環境を提供してくれているが、客数が少ないので、どうしても客の単価を上げる必要がある。そこで、町で飲む倍以上の値段のビールでも飲んでもらわないと困る、高い食事も食べてもらわないと困る、といった方針を客に押しつけようとする。

コテージの数を増やせば、収入が増え、客の単価を引き下げられるのでは、と提案しても、お金が無いので建てられないと言うばかり。

広くて快適なTikarol

Tikarolのコテージ

他の建物と離れているので、静かで落ち着ける。



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