日本人を比較したがるフィリピン人

2005年 3月


シキホール島で、青年海外協力隊員を、何代にも渡って下宿させていた家があった。私も、その家を何度か訪問したことがあるのだが、家の中には立派な日本の人形がいくつか飾られていた。そして そこの女主人は、「これは誰々がくれた。こちらは誰々がくれた。」と、いちいち説明する。まるで、日本人は人形を一つずつ持ってくるように と言わんばかりである。実際には、そんなつもりはないのかもしれないが、私にはそのように聞こえてしまった。

フィリピンだけに限らない。NGO関連でよく聞かれる話だが、途上国で支援している地域の人に贈り物を持って行く場合に、NGOは いろいろ条件を付けることが多い。まるで、小学生の遠足のおやつに制限を課すような調子である。誰かが、高額の品物を持ってくると、後から来た人も同様のことを現地の人から期待される可能性が高くなる。これは望ましからざる状況であろう。一部の訪問者が引け目と感じるようなことがないための配慮を含め、このような制限を加えている。

フィリピンに限ったことではないが、とにかく、フィリピンで、同じ場所に日本人がやってくると、何かと比較される可能性が高い。こちらの日本人は 気前が良いけど、もう一人の方はケチだと、いうような評価をされたりしてしまう。気前の良さの比較だと、これは二人の比較にとどまらない。五人いれば その中で、比較され順番を付けられてしまうかもしれない。そうなると、一人だけ人気者になったりして、不愉快な思いをする人が、沢山出るかもしれない。

「まわりに、どう思われようと平気、気にしない。」この方針でいきたいが、別の日本人が来たので、こちらは、相手にされなくなったというようなことも起こり得る。

日本人同士の 貧富の差が表面に出てしまうこともあるだろう。現地の人と同じような頻度で、同じような賃金を払い、近所の大工に仕事を頼んでいた、あまり資金を持たない日本人がいたとしよう。その近くに、お金持ちの日本人がやってきて、大工に頻繁に仕事を出し、通常以上に良い賃金を払っていたら、元からいた貧乏な日本人は、近所の大工から相手にされなくなるかもしれない。

インターネットで検索していると、フィリピンに移住しようとしている人は、近くに日本人がいない場所を探している場合が多いのがわかる。いろいろな しらがみを避けたいというのが大きな理由だと思うが、ここで書いたようなことを避けたいということもあろう。

反対に近くに日本人が住んでいた方が便利なことも多く、他長多短である。
仲良しグループで集合住宅でも建てて住めば、とても楽しく暮せることだろう。

比較されるといっても、せいぜい歩いて行ける範囲内での話なので、ある程度離れて住んでいれば、これによるディメリットは最小限に抑えられるはずだ。

また、比較するというのは、実際には 大げさで、あからさまに、明示的にそのような行動を取ったり、口で言ったりすることは少ないだろう。日本人の思い過ごしということもあるかもしれない。しかし、それだけではないことの方が多い。


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