牛特集  世界初(!?)、牛の毒虫試食実験

牛にサピリン(SAPIRING)を食べさせてみる

2006年 9月


サピリン

サピリンを食べさせた子牛


牛の急死が何度かあり、その原因を解明すべく、牛が食べると死ぬと噂されているサピリン(SAPIRING)の調査を始めた。アルバイトを雇って、シキホール島を回ってアンケートを取ってもらったところ、サピリンを食べて牛が死んだと主張している人が 結構沢山見つかった。しかしながら、サピリンを食べたところを見ているわけでもないので、ほんとのところは良くわからなかった。そこで、サピリンを発注して、自分で調べることにした。
しばらくして、サピリンを2匹入手できたので、そのうちの1匹を1頭の子牛に食べさせてみた。すると10分もしないうちに、牛のお腹が膨らんで鼓腸症(Balloon)のようになったので、その治療のため、食用油約100ccに砂糖を混ぜたものを飲ませた。前回、別の子牛が鼓腸症になったのになかなか気づかず、手遅れで死なせてしまった教訓から、それらしい症状が出たので、早めに油を飲ませた次第である。
3時間ほどすると、お腹の張りは そこそこ収まり、油の効果が出たように思われた。牛の状態は、この後も含め、現在まで終始安定していて、至って正常で元気そうである。
サピリンを届けてくれた人物は、「自分の牛も以前サピリンを食べて、鼓腸症になったが、油に砂糖を混ぜたものを飲ませたところ、症状は治まり、牛は死なずに済んだ。」と主張した。「自分の牛はサピリンを食べて、鼓腸症になって死んだことがある。」と言っている別の人物もいた。
そこで、牛がサピリンを食べると、お腹の中で何かガスが発生するのではないかと予想した。

しかしながら、次の日に牛に水を飲ませると、牛のお腹はかなり膨らんだように思われた。よくよく考えると、前日、牛にサピリンを食べさせた直後にも、牛に水を飲ませた。その量は、バケツに半分くらいで、子牛にしてはかなり多い量と言える。ガスの発生の可能性も否定はできないが、翌日の状況から、
水を大量に飲んだので、鼓腸症のように見えただけだと思え、現在では、それが確信に近い。

牛がサピリンを食べると鼓腸症になると主張している人は、他にもたくさんいるし、その可能性をすぐに否定してしまうことはできない。しかし、そもそも牛が、ほんとうにサピリンを食べたことを確認している人は 皆無であろう。ずっと一日中牛を見張っているはずもないし、万一牛が食べそうな草にサピリンが付いているのを見つけたら、牛をそのような危険な場所から移動させるか、サピリンを取り除くか、そのどちらかに違いない。

私のように、故意に牛にサピリンを食べさせ、牛が死ぬかどうか、試してみた人は、おそらくこれまで無くて、世界初であろう。
サピリンを食べたから牛はどうなると、事実を踏まえて言えるのは、今回が初めてのはずだ。今回の結果から、鼓腸症の原因の一つが、サピリンであるという可能性もなくはないが、残念ながら確かなことは言えない。かと言って、再現テストを繰り返すというのは、狂牛病の恐れのある牛を大量に処分しないといけないような事態ならいざ知らず、費用も含め、現状では現実的でない。
今回は、可能性を推測するということにとどめておく。

サピリンが鼓腸症の一原因という以外にも、いろいろな可能性がある。

・そもそも、サピリンには毒性はなくて、サピリンを食べると牛は死ぬというのは、単なる噂話のデマである。(これを、一番疑っている。)
・サピリンには、個体ごとに、毒性のあるものと、そうでないものがある。
・サピリンに毒性はあっても、猛毒ではなくて、大量に食べないと牛は死なない。

今後の進め方

入手したサピリンのサンプルを毒性検査を、研究機関に依頼しているところである。サピリンは安全という仮説のもとに進めていて、シアンなど、よくある毒物は含まれていないということを、確認してもらうつもりであるが、安全宣言を出すというのは、気の長い話になり、ステップ・バイ・ステップで進めていくしかない。
牛での再現実験は、サピリンを食べても、牛は死なないという確信を得てからとしたい。
まずは、毒性検査で 基本的な毒がないことが確認できれば、鶏、犬、山羊などに食べさせてみるのが良いだろう。犬のアルバイトは容易に見つかりそうだ。

近所の人の反応

これまでに、牛が何頭か死んで、そのたびに、近所の人が持って帰って食べていた。無料で、たらふく牛肉が食べられるということで、今回も、よだれを垂らして、牛が死ぬのを待っていた。死んだ牛などは食べないで欲しいし、大判振る舞いを続けるは面白くないので、かなり矛盾はあろうが、何とか助かって欲しいと、今回いろいろ手を尽くした次第である。

サピリンについて

サピリンは、写真のように、黄緑色の毛虫のような生き物で、上から見ると楕円形のような形をしていて、体長は10mm程度、厚さが4mm程度の大きさである。通常、大きな葉にくっついて住んでいる。これを食べると、牛は2、3日程度で死ぬとシキホール島では言われている。他の島にもサピリンはいるのか、同じようにこれを牛が食べると死ぬと言われているのか不明である。
サピリンが人の皮膚に触れると、とてもかゆいと、現地の人は言っている。
サピリンを袋に入れて飼育していたところ、5日目に子供を生んだ。写真の形をしたサピリンが、また同じ形の子供を生んだことで、サピリンは成長して蝶などになるのではなくて、ずっとこのままの形であると推定される。
通常は動かない場合がほとんどだが、移動する時は、秒速1mmほどの速さでゆっくりと進む。


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