マネー・コンテスト

2010年3月作成



フィリピンの学校では、学生、生徒の中から クイーン、キングを選ぶコンテストが盛んに行われている。日本なら、王女、王子になりそうだが、それはどちらでも良い。日本人の感覚なら、当然 投票で美女、美男を選んでいるのだろうと思うが、実態はマネー・コンテストである。ある程度の美女、美男でないとエントリーでできないのかどうか そこは よく分からないが、とにかく、お金を集めて その金額で順位を競うので、マネー・コンテストと呼ぶ方が分かりやすいし 現地でもよく通じる。しかし、シキホール島の選挙を、選挙と呼ぶか、買票コンテストと呼ぶかの違いのようなもので、私のような批判的な意見の人でないと、直接マネー・コンテストとは言わない。当事者やエントリーしている人に この言葉を使ったら、こころよく思われないはずだ。

シキホール島の事例では、集めたお金の1割を学校に寄付する例と3割の例がある。残りはエントリーした人の手元に入る。学校側は寄付を集めるというのが大きな狙いであろうが、エントリーしている側に沢山のお金が入るというのは、無心コンテストのようでもある。そうは言っても、周りからお金を沢山もらえる分けではないので、儲かるものではない。それでも、もらったお金の1割か3割が学校の取り分で、残りが自分に入るなら 十分黒字である。ところが、それでは集まる金額が少なく コンテストには勝てない。そこで どうするかというと借金である。それには、FXのレバレージ(てこ)と同じ原理が働く。関係ないとも言えるが、理解の助けになる例え話として、これが最適だろう。例えば、1割が学校の取り分のルールの場合は、誰かからもらったり、自分で払える金額を合計した分を学校に納める金額とし、その9倍を親戚などから借金する。そちらは後から戻ってくるので、それを借りた人に返せばよい。従って、実際の集金能力の10倍がコンテストで集めたお金のようなことになる。ここでは、簡単のため利息を無視しているが、高利貸しから借りたりするので、その場合は 後でとんでもないことになりそうなのは容易に想像できよう。

近所のハイスクールの場合、10月の国連の日に これが行われ、そちらは3割ルールとのことである。そして、昨年のクイーンは5万ペソ集めたそうだ。1万5千ペソが学校の取り分で、それだけの支払い能力があるか、周りからもらったのか、大いに疑問で、後からとんでもないことになったのではないかと、私がヒアリングした近所の人は心配していた。国連の人が、実態を把握して 口を挟んでもらいたいものだと思う。

金銭的に困る人ならエントリーしなければ良いと思うが、自分の意思が通るかどうかは、地域や場合によって異なるはずだ。

予め検討しておいた方が良いと思うのは、フィリピン人と結婚した人で、家族や親戚がノミネートされ、エントリーせざるを得ないという場合である。父親が日本人なら、学校の方でも大金が得られると期待でき、ほぼ自動的にそうなりそうにも思う。

今回これをまとめていることにしたきっかけには、知り合いで、これからフィリピン人の女性と結婚しようとしている日本人がいて、その女性の妹がコンテストに出る羽目になったこという事情がある。その例では、高利貸しからの借金が残ったそうである。私も含めてそんなコンテストに出なければ良いという人がほとんどであろうが、本人が進んで出たのか、無理やり出さされて拒否できなかったのかどうかは定かでない。

日本側は、出るか出ないかの相談などはしてもらえず、出るのが決まってから、コンテストのために送金してくれと言われたが、既に他のことで いろいろ支払っているし、これは重要でないので払えないと拒否したとのことである。払ったら、このコンテストの原理的な仕組みから、さらに借金が膨らむ可能性も出てくる。拒否するのは当然のことと思う。しかし、これとは別の場合で、日本人側に支払い能力が十分あり、わが子が優勝するためならいくらでも払うというようなこともあるはずだ。

とにかく、この例では、借金が残った。勝手に借金したのだから、自助努力でなんとかせよと、この日本人は主張し、私も同感だ。運良く自分たちで解決できれば良いが、借金地獄に陥る可能性もある。身内の借金の解決方法へと話がつながっていく。

私の周囲でも、借金している人は少なくなくて、取立てから逃れるため、家を捨ててミンダナオに逃亡してしまった人も何人か知っている。よく分からないが、借金の滞納で刑務所に入れられると言っている人もいる。民事で刑務所に入れられることはないだろうと思いたいが、返済の約束の契約書を作成して、それを守らないので詐欺で訴えられるということなのか? 実際に刑務所に入れられた人は知らないが、そう言って恐れている人を何人か知っている。

破綻する前に救っておいた方が良いという話と、こちらが借金の尻拭いをしては、借金癖がついてしまうという話のトレード・オフになりそうだ。どこかに大岡裁きがあるのかもしれないが、残念ながら、現状の私の場合は100点満点の答えが思いつかない。

この日本人がフィリピン人女性と結婚するということになって、良い話なので 出来るだけ支援すべく、いろいろと参考情報を提供してきたが、お金の問題に関しては、よいアイデアが見つからず、十分なアドバイスができていない。実際にも金銭に関する懸念が次々に現実のものになってしまった。このマネー・コンテストの件もその一つである。

今回の件では、できるだけ自助努力は促すものの、最後はそれなりに払わざるを得ないことになりそうに思う。



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