季節風の変わり目

2007年7月6日作成   
2009年4月19日最終更新


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今年は季節風の変わり目が5月5日の日中で、例年よりかなり早かった。

季節の動きが早まると、今年の暖冬や地球温暖化と結びつけたくなるのは、私だけではないだろう。

そもそも、季節風が吹くのは気象庁のHPに書かれた説明によると、冬場はユーラシア大陸に高気圧があり、高気圧なので それを中心に、時計回りに風が吹くからである。日本では、北西の季節風、フィリピンでは北東寄りの季節風になる。冬場の天気図を見ているとヒマラヤあたりは、日本では考えられない高い気圧になっている。実際には、山が高いので、地表の気圧はかなり低く、換算値が高い数字になるのだろうが、いずれにせよ、冬場の大陸では、天気が良くて、放射冷却もあり、高気圧の圏内なのだろうという直感と一致する。
夏場は大陸には低気圧があり、太平洋には、言わずと知れた太平洋高気圧がある。低気圧を中心に反時計回りの風が吹くので、冬場と風向きが逆転する。
これが、気象庁HPによる主な説明である。

他にも、いろいろな条件があろう。例えば、日本では、偏西風の影響で、高気圧も低気圧も西から東へ移動していく。冬場の西高東低の気圧配置も、ずっと固定しているわけではなくて、季節風も日々変化する。ところが、フィリピンでは、偏西風による短期の気象の変化はなく、例えば、11月から4月は、ほぼ安定して毎日、同じ方向から、かなりの強さの季節風が吹く。

季節風の向きが変わった翌日の5月6日に天気図を確認してみたところ、太平洋高気圧のような輩が、太平洋にあるのがわかった。しかし、ヒマラヤあたりの気圧も、まだまだそこそこ高い。風向きが変わったと言っても、かなり強い風から、微風に変わってしまい、とんでもなく暑く感じるようになった。

風向きが変わると、雨が降り出す。
弱いエルニーニョの影響もあり、昨年の10月の半ば以降、シキホール島の私の家の周辺で 雨が降ったのは、12月27日から10日間ほどの間で、それ以外は、ほとんど雨は降らなかった。沢山牛を飼っているので、草が枯れて、苦しい状況が続いた。そこへ、例年よりは少し早い雨季の始まり。風向きが変わってから2、3日して、深夜に少し雨が降る日が 3、4日続いた。大した雨量ではないのだが、とにかく、雨が降り出したという事実が、まさに天の恵みであった。

風向きが変わってから1週間ほど 風向きの変わりやすい状況が続き、その後、数日は、もとの北東の風に戻った。そして、風向きの変化が始まった5月5日から、2週間足らずして、かなりまとまった雨が降り、本格的な雨季の到来を思わせた。

5月17日には、台風2号が発生し、その影響で 風は南よりから吹くようになった。フィリピンの北東で太平洋上にある台風に向かって風が吹き込むからである。しかし、6月には、風向きはほとんど北か北東に戻った。そう言っても、風速はそれほどではなくて、12月頃の強風とは比べものにならない。風が止むことも多かった。
どうやら、6月でも台風が無ければ、南よりの風には なりにくそうだ。ちなみに、台風がフィリピンの近海にある場合には、その動きが遅く、フィリピンでは、台風の影響が1週間以上続くことが少なくない。影響と言っても、暴風雨は直撃を受けた地域だけで、通常は、台風から1000km、2000kmというようにかなり離れた地域でも、台風に向かって風が吹いているというだけのことである。
台風の影響で風向きが変わるのは、4月以前でも起こる。11月や12月にも台風は少なくないので、そういう状況によく遭遇する。

7月に入り、これを書いている現在は、南西の風が吹いている。しかしかなり弱い風である。

書いていると言っても、最初にまとめたのは5月で、その後しばらく寝かせておいたら、風向きがいろいろ変化したので、それに合わせて何度か加筆した。
梅雨明け宣言のように、いつ季節風の向きが変わったと言い切るのはなかなか難しそうだ。


(2009年4月更新)

2007年の季節風の変わり目が5月5日の日中で、2008年はどうだったかというと、残念ながら 他の事に気を取られて記憶にない。それでは今年2009年はどうかというと、4月13日の夜だった。4月12日まで滞在していた日本人訪問者が帰られて、翌日 別の日本人がフィリピン人二人を連れて来られた。12日までは毎日晴れで、気温は高いが北東の安定した季節風が吹いていて、日陰に居れば過ごし易かった。夜は窓を閉めないと肌寒くて、風をまともに受けて寝ていると風邪を引きそうだった。そこで、次の訪問者にも、夜は寒いくらいだという話をしたものの、風がぴたりと止まってしまった。

風が止まると、扇風機が故障したようなもので、快適でないことがいろいろ起こる。風がないので涼しくないというのが第一だが、問題の4月12日の夜には、雷の音が聞こえ出し、雨が降った。それまでは長らく雨は降っていなかったので、本格的な雨季の前触れのようなものである。雨が降れば、牛の食べる草は増えるし、人々は作物を植える。恵みの雨なのだが、生活や旅行には何かとうっとうしい。
雨季になれば蚊が増える。蚊は 風が強いと 風に飛ばされないよう どこかに潜んでいる。しかし、風が吹かないと 我がもの顔で飛び回り人を刺す。私などは蚊に慣れてしまったが、普通の日本人には厄介な問題だろう。
また、片田舎では道に舗装がないので 雨が続くと ぬかるみ、水溜りができる。その上をダンプカーでも通ろうものなら、容易に想像できるように、水溜りが巨大化していく。雨が降ると、道を通るのも、出掛けるのも厄介になる。

4月13日の夜に雨が降っただけで、その後雨はほとんど降らなかったが、4月18日の夜 まとまった雨が降り、どうやら本格的に雨季が来たように思える。ただ、風は不安定で、吹かないことが多いし、吹いても向きが変わりやすい。前回書いた内容と同様である。

わざわざ、ここに書きとめておきたかった理由は、4月は こちらではSummerと呼ばれ、雨は降らないと人に説明しているのに、今年はそうではないからである。そして、地球温暖化の影響で、季節が1ヶ月前倒しで変わってしまったのではないかと疑いたくなるからである。季節が変わったと言っても、こちらは熱帯なので、気温はそれほど変わりなく、風向きと雨の有無の違いだけである。私はフィリピンのお天気にそれほど詳しいわけではないし、たった1回だけの事例で、直感的なことを言っているだけともいえ、地球温暖化の影響を持ち出すのは早計かもしれない。どこかで、専門的な情報が得られれば、再度書き加えたい。

最後にもう一つ補足しておくと、雨季に入り風向きが変わる短所ばかりを強調しているが、これは一般的な話とは言えない。たまたま私の家が北東の季節風を受けやすい北向きの海岸にあるからである。同じ時期でも、反対側の海岸沿いにあるシキホール島で一番高級なビーチリゾートに行けば、風の吹いてくる方向は陸の小高い側からになり、同じ時期、ほとんど風は感じられない。エアコンが必須ということになる。これが風向きが逆転すると立場も逆転する。私の家の場合、南寄りの風も通り抜けるが、北寄りの風の方が、さえぎる物がなく海から直接吹いてくるので、より心地良い。私の場合、体がフィリピンに慣れてしまっているので、風向きに関係なくエアコンは不要である。北向きと南向きの両方の海岸沿いにそれぞれ家を建てておき、季節風の向きに応じて、家を移動するのが究極の省エネルギーという考え方もできる。


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