パキヤウ

2004年4月


トライシクルに乗ろうとすると、ドライバーからパキヤウ(Pakyaw)するかとよく聞かれる。この場合のパキヤウは貸切のことであり、高くつくので、私はいつも条件反射的にDili(No)と答えて断っている。ビサヤ語のパキヤウは、全部まとめていくらという意味合いで使われ、仕事を依頼する場合のJob発注や一括発注に相当する。タガログ語では、Kontrataと言うそうだ。

乗り物の場合だと、例えば、史上最悪と言いたくなるマニラのタクシー。空港までというと、メーターを使うタクシーを見つけるのは非常に難しく、乗る時に、ドライバーが200ペソだ、300ペソだと言ってきて、通常の2倍、3倍の料金に決めてしまおうとすることが多いが、これも同様のものである。

トライシクルは、通常は米国の空港のバンサービスと同じで、行き先の方面が決まっている。相乗りの客を、途中で順番に降ろしていってくれ、それぞれ目的地ごとに決まった運賃を払う仕組みになっている。一方、パキヤウだと、自分の行って欲しいところに、自由に行ってくれ、何箇所か立ち寄ったり、途中の目的地でドライバーを待たせておいたりできるので便利だ。しかし、当然乗合は難しくなり、ふつうは貸切になる。乗合で走っている通常の場合に対して、こちらはSpecial Tripと呼ばれることもある。
乗合だと、ドライバーが納得するまで客が集まらないと出発しないが、パキヤウだと待たされることなく、すぐに出られるというメリットもある。
便利で快適だが、その分高くなる。
乗る人が、パキヤウにするかそうでないかを自由に選択できればまだ良いのだが、困るのは外国人だと強引にパキヤウにされてしまう場合が多いことである。
シキホール島での例を紹介しよう。乗り物の発着地点になっているシキホールの市場から、島で一番高級なCocoGroveというビーチリゾートに行くとする。この場合、その前を通るジプニーは沢山あるので、うまくそれらに乗れば、10ペソで行けてしまう。
ところが、適当に、その辺のジプニーの運転手に聞いたら、200〜300ペソと言う。ジプニーは、通常は行き先が決まっているので、それを変更して、客の行きたいところに行くので、往復で客が一杯乗った分を請求するので、このような桁違いの値段になってしまう。

乗り物以外では、畑の草刈を幾らでパキヤウするとか、便所のタンクの穴を掘るのに、パキヤウで幾らといったように使う。草刈の場合はそこそこ見積もりが出来て、適正な値段が決められるかもしれないが、穴を掘る方は、地面が土が岩かでは大違いで、パキヤウで掘る前に料金を決めてしまうと、ギャンブルのようになってしまう。それでもパキヤウする人は多い。

大工仕事をパキヤウすることも多い。家1軒おまかせで、建材の調達から建築まで すべてパキヤウする場合。建材は自分で買って、建築の作業だけパキヤウする場合。トイレを作るのを幾ら、床にセメントを敷くのに幾らといったように、作業ごとに分けてパキヤウすることもある。
家をたてる場合のパキヤウのメリットは、
 ・支出を予算どおりに納められる。
 ・自分で管理する必要がなく、時間を取られない。
 ・大工の立場からしても、短期間に工事を済ませた方がトクなので、ズルズル工事が
 遅れる可能性が少ない。(但し、他に仕事が入るとそちらを先にして、後回しに
 される可能性もあり、早く完成させたい場合には、最優先で仕事をしてもらうという
 約束をしておくべきだろう。)
 ・パキヤウだと大工はよく働くので、怠け者対策になる。
一方、ディメリットもあって、
 ・手抜きや完成度の低いことが多く、後で手直しが必要になる可能性が高い。
 ・自分で、かなり見積もりが出来る人でないと、大工にボラレてしまうかもしれない。

最初は、自分で、建材を買ってきて、いろいろな大工に働いてもらい、十分見積もりができるように目を肥やしてから、パキヤウを始めるのが正解だろう。


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