フィリピン移住の年齢

2004年 11月


日本のマスコミが海外移住を取り挙げたり、フィリピン移住を検討しているというメールを良く頂くことでもあり、若い人から定年退職された方まで、フィリピンに住みたいという人は、確実に増えていることと思う。

それでは、いったい何歳になったら、フィリピンへの移住なり長期滞在を始めるのが良いのか?

そんなことは、人それぞれであり、共通の決まった年齢というものがあるはずはない。

ただ、十分な資金を貯め、十分な年金も入る熟年の方なら、物価の安いフィリピンでは、まさに左団扇の豊かな生活を送ることができるとは言える。
従って、主に 経済的なメリットを求めてフィリピンに住みたいということであれば、できるだけ資金を貯めてからの方が、金銭的な不安もなく、経済的には豊かな生活が可能であり、有利だと言える。ただし、贅沢三昧の生活を続け、お金持ちだと思われてしまうと、現地の人から嫉妬されたり、反感を買ったり、ボッタクリにあったり、また下手をすると誘拐される可能性が出てくるかもしれない。お金を思ったとおり使うのは容易でないこともあろう。

また、人にもよるが、熟年になってから いきなり環境を変えるのは、若い時に比べると適応が容易ではないはずだ。前もって いろいろ準備をしておいた方が良い。情報を収集したり、現地に友達をつくったり、現地の言葉を習得したりというようなことは、いくらやっても、やり過ぎることはない。
ただ、住むところは、アパートを見つけておいたりするだけにしておくのが無難である。住み始める前から土地を長期リースしたり、自分が不在の状態で、人にまかせて 家を建てたりすると、ボッタクリなど、問題が生じる可能性が高い。


次に、若い人の場合はどうかと言うと、 上記と同じで 経済的な理由で、フィリピンに住みたいということなら、できるだけ日本で資金を貯めてからにした方が有利である。

若い人から、「フィリピンに住みたいので、どんな仕事があるか。」という質問をよくいただくが、「フィリピンで働くよりも、日本で働いた方が儲かる。働くのなら、5年か10年に1年ほど、日本に出稼ぎに来ることにした方がましだ。」という趣旨の回答をしている。技能を持った大工でも、現地では日当は150ペソ〜250ペソ程度。この事実からだけでも、簡単に日本に帰れる日本人なら、日本へ出稼ぎに行った方が 有利だということが分かるだろう。

うまく日本企業の現地法人に就職できたりする場合もあるだろうが、それでも、日本から駐在で来る社員に比べれば、格段に収入は少ないはずだ。
例えば、都市部でアパートを持っているフィリピン人が 結構良い収入を得ている場合があるなど、うまくやれば、十分な収入を得る方法もあるのかも知れない。しかし、一般的に言えば、日本人がビジネスを始めても赤字になる可能性が高い。

一方、少ない資金でも、フィリピンでは十分暮らしていけるというのも事実である。フィリピンの田舎では、生活費が月1万円もない家庭が多い。晩飯のおかずは、潮干狩りで得た海の幸。近くで雑木を切ってきて 薪に使う。私の周辺の人たちはそういう暮らしをしている。
そこまで生活を落とさなくても、日本の感覚からすれば、信じられない安さで暮らすことは可能である。
ただし、そうやって節約することだけ考えて、若い人がフィリピンに暮らし始めるというのも、お薦めはできない。縮小方向だけであり、将来へつながるものが何も見えて来ないからである。

それでは、どういう場合に 若い人がフィリピンに住むのがお薦めかと言うと、フィリピンで何かやりたいことがある場合である。何かというのは、人それぞれだろうが、とにかく、その何かを、新たに始めるには、熟年になってからよりも、若いうちの方が有利であろう。さらには、思い立った時が旬だとも言える。また、何かを始めるのに資金が必要なら、必要な資金が貯まった時が、「その時」だとも言える。日本で会社勤めをして資金を貯め、その後 自分で事業を始める人の場合と同じである。

若い人で良くある例にあたるが、日本人男性とフィリピン人女性の夫婦で、子供が小学校に入る機会にフィリピンに移住しようと計画されている方から先日相談を受けた。手持ちの資金が少ないので、現地でビジネスを始めて収入を得たいということであったが、既に書いているように、日本に出稼ぎに行った方が儲かるという私の意見を伝えた。
その後、どういう選択をされたのか、連絡がないので不明だが、

a)日本で定年退職又は、十分な資金が貯まるまで働く。家族もそれまで日本に住む。
b)夫を除く 家族はフィリピンに移住。夫は、出稼ぎでも常勤でも、とにかく日本で働く。
c)家族全員でフィリピンに移住。運良くフィリピンで十分な収入が得られれば良いが、
 そうでなければ、家族全員日本に戻るか、夫だけ日本で働く。

ほぼ、このどれかになるはずだ。

失礼な言い方かもしれないが、もしも、日本で金銭的に非常に困っている方なら、私ならb)をお薦めする。家族の出費は大幅に削減できるからである。ただ、それが普通だろうが、家族一緒に暮らしていないと駄目だということなら、b)は選択できない。
フィリピンでなら、夫が米国に出稼ぎに行っている人や、船乗りで、たまにしか帰ってこない場合を結構見受ける。日本でも、外洋に出る船員や、長距離トラックの運転手など、夫があまり家に帰って来れない場合もある。
b),c)では、子供の教育レベルの問題もある。特にフィリピンの田舎では、小学校でもハイスクールでも、設備が十分でない場合が多い。私の近所のハイスクールでは、科目によっては学校所有の教科書を二人か三人で共用しているということである。それでも、まじめに勉強している子供も多い。私の家の隣に ハイスクールに通う女の子が二人住んでいるが、遊ぶものがないので、ぼろぼろの英語の辞書を取り出し、二人で単語の書き取りごっこをして遊んでいた。私の全く知らない単語をスラスラ書くので感心した。それまで、フィリピン人は怠け者が多いという偏見を持っていたのだが、その後は、考え方が変わった。
教育にお金がかかり過ぎると、米国のように、それが貧富の差を生む大きな原因になるので、個人的には、教育にお金がかかり過ぎるのには反対だ。時間と労力だけをかけたいものだ。
そういう考え方なので、何がなんでも日本で教育を受けさせた方が良いとは思っていない。ただ、将来、子供を日本で働かせたいのなら、日本の学校に通わせておいた方が有利だとは言えるだろう。


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