海外で投票できる、できない?

2007年4月作成
2007年7更新



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NHKの海外安全情報で在外選挙の紹介をしているのを見ていたら、海外でも簡単に日本の選挙の投票ができるように思えた。選挙の投票のため、フィリピンから日本へ帰ると言うと、大抵の日本人は、帰らなくても投票できると言い出す。しかしながら、実態はそう簡単ではない。

私も 最初は 大きな妄想を抱いていた。例えば、海外を旅行中のバックパッカーが、選挙の期間中に、パスポートを持って、投票所のある日本大使館などへ行けば、その場で簡単に投票できるものだ勘違いしていた。そのノリでいたところ、フィリピンにしばらく滞在中に、不意に、解散総選挙を食らい、投票したいと思って、大使館に電話してみたら、箸にも棒にもかからないことが判明し、諦めてしまった経験がある。

在外選挙については、外務省のホームページに詳しく説明されているので、改めてここで紹介する必要はないとも言えるが、箸にも棒にもかからなかった理由だけを説明しておく。
そもそも、「在外選挙」という言葉を使っているように、これは 「海外での投票」とは、かなり意味が違う。
一番の敷居は、日本で、転出届が必要なことだ。その場合、例えば 保険が課題になる。日本の企業に勤めていて、海外の駐在員になったような人なら、転出届を出しても、健康保険は 通常、そのまんまサービスを受けられるので問題ないが、国民健康保険の加入者が、転出届をすると、国民健康保険を続けることはできない。現在では、健康保険でも国民健康保険でも、海外での治療費にも保険がおりることになっている。特に退職者が海外に住み始めた場合、制度が許す限り、国民健康保険を継続したいと思う人は少なくないはずだ。(ただし、1年以上海外に在住する人は、国民健康保険に加入することはできない。) また、住み慣れた町から住民票を移すのに、抵抗がある人は少なくないはずだ。まして、海外に転出して住民票ももらえないようでは、特に定年退職者なら不安な人は多いはずだ。

日本で、転出届を出した後、在外公館に在留届を提出し、海外に3ヶ月以上継続居住し、在外選挙人名簿に登録して、初めて投票ができるようになる。
日本で引越して、新しい市町村へ転入して、3ヶ月経過したら、自分の名前が 新しい住所の選挙人名簿へ移るのと似ている。海外市の日本人市長などいうようなものはなくて、在外選挙で投票できるのは、衆参両院の選挙だけだ。

私のように、よく移動して、海外在住とは言いがたい人には、在外選挙は 関係の無い世界だ。

海外での投票

旅行中だろうが、海外在住だろうが、海外のどこに居ても、容易に投票できるのは、郵送かインターネットによる方法だろう。米国の大統領選挙では郵送による投票のこともよく話題にのぼる。インターネットで検索すれば、日本でも郵送やインターネットを使って投票できないか、いろいろな人が検討しているのが見つかるが、すぐに実施されるような気配はない。
しかし、在外選挙人名簿に登録されれば、海外の投票所で投票するだけでなく、郵送による投票や、日本に来て投票することもできるようになっている。この逆で、日本に在住する日本人が、海外の投票所でも、簡単に投票できたり、郵送での投票も認められるようになってもらいたいものだ。
統一地方選挙と、参議院選挙の両方で、投票のため日本に戻ってくるような人の場合、もしも日本に戻らなくても投票できるのなら、投票のための費用を 少々自己負担するのは やぶさかではないだろう。


以下は放言。

こうして、意気込んで、選挙に帰ってきても、今度は、投票したくなる候補者がいない。そんなわがまま言うのなら、自分で立候補せよと言われそうだが、さすがに、それは難しい。興味がないというのが主観的な理由だが、日本の選挙制度では、全く当選の見込みの無い人は、立候補を歓迎しないような仕組みになっているし、フィリピンのプロジェクトで十分な成果を挙げていない状態で、他の事を始めるわけにもいかない。

投票したくなる候補者がいないと言い切ったが、これは正確ではない。前回は、若手の候補者に期待して彼に投票したが 惨敗だった。その彼が、諦めずに今回も立候補しているので、もう一度彼に投票するしかないと思った。

否定的な評価を書いているのは、こちらはインターネットで情報を集めるしかないので、彼のHPを見たのだが、あまり熱心に書いている様子がなかったからだ。それで、これでは当選しないだろうと予想して、そんな人物に投票する意味があるのかどうか思案した。しかし、こちらは、当選する候補者に投票して、後で何か見返りを期待して、勝ち馬に乗ろうとしているわけではないので、元気のいい若者に一票という結論になった。

幸いにも、今回は、定員10人のところ、10番目で当選を果たしてくれた。わざわざ、フィリピンから帰ってきて投票した意味もあったと言えそうだ。切磋琢磨して、政治手腕を発揮してもらい、その成果を、次回の選挙の前にHPで見せてもらうつもりだ。


余談だが、

インターネットで調べてみたところ、ベルギーでは投票は国民の義務で、投票に行かないのは犯罪である。前科がつく可能性もあり、投票率は非常に高いそうだ。犯罪者にされてしまうと、パスポートの申請に必要な無犯罪証明書が得られなくなり、外国にも行けなくなるそうだ。
日本も 同じようなルールにすれば、それに合わせて 制度が変わり、海外でも投票し易くなるに違いない。
しかし、日本では、投票率が上がると困る政党も少なくないし、投票率がお世辞にも高くない状況で、同様の制度が導入される可能性は ほとんど無さそうだ。


(2007年7月更新分)

浦島太郎症候群 〜 政党名で投票してしまった。〜

これを書いた手前、投票しないわけには行かず、4月の統一地方選挙と、7月の参議院選挙では、日本に帰ってきて投票した。統一地方選挙の方は、上に書いたとおりで、それなりに成果があったと勝手に思っているが、参議院選挙の方では失敗をしてしまった。比例区と書いてあるので、以前のように、政党名を書けばよいものとばかり思っていたが、それでも 無効にはならないにしても、どうも、直接候補者名を書いた方が良いということが投票のあと分かった。

中央選管のHPでは、私のように、政党名を書く人は、ほんの少しだけで、候補者名を書いている人が大多数なので、この仕組みは妥当なように見える。そうではなくて、ほとんどの人が政党名を書いて、一部分の人が候補者名を書いて投票するとしたら、一部の人の意見で当選が左右される、かなりまずい方法と言わざるを得ない。日本に居て、開票速報などを見ていれば、そんなことは、十分頭に入ったはずだが、期日前投票を済ませたら、さっさとフィリピンに帰り、家ではNHKも見れないので、まさに、浦島太郎症候群と言わざるを得ない状況になってしまっていた。

あとの祭りではあるが、次回のためにインターネットで調べた結果、実際にも変なことが起こっている事例が、いくつも見つかった。

2004年公明党。 8人が当選し、上位の6人は、約182万票から約72万票で、組織票なので、組織の指示に従った順当な結果で当選したのであろう。しかし、残りの二人は、約3万3千票と、約1万7千票で当選した。組織の計画では、当選する予定ではなかったのだろうが、当日のお天気の影響か、投票率が計画を下回ったので、このような低い得票でも、当選することになったということであろう。次点は約9千票。ほとんどの人は、候補者名で投票しているので、ここでの話とは、少し違うのかもしれないが、やはり異常と言わざるを得ない。
これに比べ、2001年の場合には、同様に8人が当選しているが、この8人は、約128万票から約66万票。これに対し、次点は1万票。投票率の予想が的中した計画選挙と言うことなのだろう。しかし、これも異常で、この結果を見れば、世界中の9割以上の人が、恐ろしいことだと思うはずだ。そう思われないように、別の数字になるように計画を修正すべきであろう。たぶん、今回は、何か対策があるのだろう。

2001年共産党。4人が当選しているが、得票数は、約5万6千〜2万6千。公明党の20分の1以下で、ほとんどの人が、共産党と書いて投票しているということである。続く、3人は、約2万票が二人、さらに約1万8千票。微妙な票の差で、当落が決まっている。これでは良くないということで、2004年になると、当選した4人の得票は、約19万票〜7万3千票と増えた。しかし、まだまだ、少なく、公明党も異常だが、こちらも異常と言える。

最後に2001年の社民党の田英夫。参議院6回当選の超ベテラン議員だ。1971年の初回は、192万票の得票でトップ当選。2001年の結果は、社民党は3人当選で、3位 又市征治 約14万8票。次点 田英夫 約13万5千票。 時の経過はあるが、192万票が 13.5万票まで減少するとは考え難い。徴兵で、特攻隊にかり出され、生き残った彼が平和主義を唱えるのは理解できる。私は、党名を書くものとばかり勘違いしていたので、その時の選挙でも、社民党とは書かなかったが、候補者名で投票できることを知っていて、苦戦しているのが分かっていれば、投票してあげたらよかったと思ってしまう。トップ当選の田嶋議員が辞め、繰り上がりになったので 良かったということか。

長い間、勘違いしていたのは、恥ずかしい限りだが、浦島太郎症候群でなくて、日本にずっと住んでいる人でも、同じような勘違いをしている人を見つけたので、これをまとめることにした。

勘違いか失敗で、投票しようと思っていた候補者とは違う候補者が当選したり、落選してしまうという最大の事例は、ゴアとブッシュの場合であろう。出口調査の結果はゴア。有権者の気持ちを総和すれば、ゴアが当選するはずだった。ゴアが大統領に選ばれていれば、歴史は変わっていたと思っている人は少なくないはずだ。

参議院選挙の比例区では、今回まで、私は勘違いしていたわけだが、上に挙げた変な例もあるので、現状では、制度上は、候補者でも政党でもどちらで投票しても良いと言ってはいるが、やはり候補者名で投票した方が良いと思う。

(参考)

2004年 参議院選挙結果 比例区 
2001年 参議院選挙結果 比例区 


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