腕時計の電池交換、解体修理が100円

2002年6月


典型的な町の時計修理屋

フィリピンでおすすめなものの一つとして、電池交換と腕時計の修理とを紹介する。

日本では、デジタル時計と言えば、時計屋では軽蔑の対象と言ってよい。デジタル時計の電池交換を依頼しても、「そんなもの、持ってくるな」と言わんばかりの顔つきで、「申しわけありませんが、うちでは、デジタル時計は取り扱っておりません」と言われることが多い。また、使う側でも、例えば、2980円のデジタル時計の電池交換に1000円払うよりも、新しい時計を買った方が良いと考えるのが普通だろう。

そういうわけで、数年ごとに買ったC社のデジタル時計。また、景品などでもらった時計。さらには、シンガポールのブギス通りで買ったR***Xと書かれた、名前とはかけ離れた値段で、わずか1000円程の時計。香港の屋台で買った数百円の時計。これらの時計が10個以上 電池切れやベルト切れでそのままになっていた。普通なら捨ててしまうところかもしれないが、私の場合は、後生大事に すべて残してあったのである。

一方、最近フィリピンに住むようになって、町でやたらと時計の修理屋を見かけた。そこで、物価の安いフィリピンならば、時計の修理や電池交換も安いに違いないと思い立ち、問題あり時計のうち6個をカバンに詰め、フィリピンの時計修理屋に持って行ったのである。

結果は、期待通りの大当たり。あきらめていた時計がすべて使えるようになった。
電池交換は、直径5mm程度の小さく、寿命が1年程度のもので45ペソ。100円余りであった。C社の韓国で組み立てられた時計だと、直径が1cm以上で、寿命が5年以上の大きな電池が入っていて、これだと、普通なら170ペソから150ペソのところを、出精値引きで125ペソ。300円程であった。 ベルトは約150円。大きめのものを安全カミソリで切り刻んで、強引に取り付けてくれた。

別の時計は、スイッチに かすが詰まっているような感じで、スイッチを押しても、動作したりしなかったり、さらには勝手にスイッチを押してしまったような状態になることもあった。そこで,調べてもらったところ、解体掃除が必要ということになり、約20分かけて掃除してもらった。掃除後は順調に動いている。値段は50ペソで ほぼ1ドル。格安とも言えるが、横で掃除を依頼していた人には、ガマイ、シンコ(少しなら5ペソ)と言っていて、これと比べると とてもボラれている。フィリピンの田舎の方では、大工や見習の日当で1日150から200ペソ程度なので、これと比べても とても高い。しかし、この値段で、あきらめていた時計が、順調に動くようになったのだから、ボラれたといっても、嬉しくないわけがない。時計修理屋から、「あんたは いつも嬉しそうにしている幸せな人だ。」 そう言われた。

解体修理では、ねじ時計を、バラバラに解体して洗っているところを見かけたが、これも人件費の安い国だからそこできることであろう。以前、日本で、月100万円程払って、外注のプログラマーを雇っていたが、フィリピンだと、これだけ払えば大工を100人近く雇える。例えば 砕いた岩を使って、巨大な記念碑でも造るような、人件費まかせの作業だと とてもお得である。

話が横道にそれたので、時計の話題に戻ると、 C社のデジタル時計の初期のもので、値段も現在の2980円より1桁ほど高かった腕時計は、電池が現在のものと比べ異常に大きかったが、電圧が同じ3Vで、少し小さめの電池を入れて、動き出したので 良しとした。

香港屋台の時計だけは、その後、残念ながら、動いたり止まったりしているが、動作が いかにも電池の接触不良であり、今回の6個の時計以外を直してもらう時にいっしょに、再度点検してもらう予定である。


場所は、住んでいるところから近いドゥマゲッティ。町の繁華街にある時計修理屋で試したのだが、同じような店はフィリピンのどこでも簡単に見つかる。

ただし、外国人だとボラれる可能性が高い。電池交換だけなら、電池の値段だけで、手数料はかからないので、複数当たって、値段を比較すると良い。

時計に限らず、外国人がやって来て、少々ボラれても、安い安いと平気で要求どおり支払って、あっという間に、相場を吊り上げてしまう事例は枚挙に暇が無い。その典型が日本人である。知り合いの米国人の近くに日本人が土地を買ったところ、”No More Waikiki”と言われてしまった。バブル当時、日本人がワイキキの狭い土地を買いあさり、地価が暴騰した後、バブルがはじけて、日本国内の大都市のように地価が暴落した。その事例を取り挙げ、同じことが起こりはしないかと心配して、米国人はそう言ったのである。

フィリピンでは都市部は別として、田舎の方では、外国人が多く住んでいるところだけ、他と比べ 地価が1桁、2桁高い。外国人だと通常の2、3倍の値段を要求され、数人の外国人が来ると、桁が変わってしまう可能性が高い。

時計修理や土地に限らず、各人が相場を吊り上げない努力を怠ると、後から来た人が大きな迷惑を蒙る。