Working student

2006年 8月


フィリピンでは 働きながら学校に通う Working studentと呼ばれる学生が多い。日本では、苦学生、勤労学生、学生アルバイトなどいろいろな言葉があり、それぞれにニュアンスが異なるが、学生が働いているのは、遊ぶ金が目的の場合が多そうだ。これに対してフィリピンでは、純粋に学業を続けるために働いている場合がほとんどである。まず1年働いて学費を貯めてから 大学に入学し、資金が底をついたら、また しばらく働くというような学生もよく見かける。

ハイスクールや大学に通う学生を住み込みで受け入れ、授業のない時間に、家事を手伝ってもらうという場合も多い。ダバオの知り合いの家の例では、親戚の子供を何人も受け入れ、食住を提供して、学生が学校に行っていない時間に、家の修理などの作業を手伝わせている。
私が歓心するのは、親戚でなくても、そうやって学生を家に受け入れて働かせ、学生を支援している人が多いことだ。実際には、安い賃金で人を働かせることができて、受け入れ側もメリットが大きいとも言えるが、とにかく役に立っていることは間違いない。

お手伝いなどに人を雇うなら、Working studentを雇うのがお勧めだ。


以下は、私の事例である。

これまでに、かなりの数の学生を雇った。実際には、雇った数よりはるかに多くの人から仕事を要求されているが、無理やり仕事を作っている状況で、それほど仕事がないため、雇える範囲でしか雇っていない。

例えば、先日隣に住むハイスクールの生徒のVangieが、学校の授業でお菓子を作るのに材料代が払えないと言うので、ペアの女の子と共に家事を手伝ってもらった。同じようにして、学校を卒業するのに費用がかかるとか、試験の時に支払う費用が不足しているなどと言って、仕事を求めてくる場合が多く、可能な範囲で受け入れている。

一番やりたいことは、親が貧しく学校に行けない子供を見つけてきて、こちらで仕事を提供して、それにより学校に行けるようにするということである。

先日 6月の入学手続きに向けて、ちょうど これに ふさわしい相手が見つかり、支援を始めた。しかしながら、一筋縄ではいかないのがフィリピンで、残念ながら、今回は失敗に終わった。参考のためその顛末をまとめておく。

1年前に父親が死んで、その後ハイスクールに行けなくなっていた姉妹が二人、私の家で働くことになった。国立のハイスクールは学費が安い。1ヶ月に1日か2日 週末に私の家で働けば、十分学費を稼げるという計算になった。家事は基本的に私自身でしているので、この二人を雇う必要は、本当はないのだが、月に1、2度くらいなら、なんとか私の方で引き受けられる範囲である。とにかく二人が学校に行けるようになるのは素晴らしいことなので、迷わず受け入れを決めた。

どの程度使い物になるのか、1日試しに働いてもらったところ問題なかったので、約束の賃金を支払った。その次からは、本来の目的である学費を間違いなく貯めるため、学校の授業が始まる直前になったら まとめて支払うことにし、その日払いにはしなかった。二日後、母親がやってきて、子供に仕事を与えるように求めてきた。その時は私は不在で、近所の人と話していただけであった。次の日、二人の中で、熱を出していた姉の代理と、もう一人妹が仕事を求めて、母親とともに やって来たが、特に仕事も無かったので、「今日は要らない。」と私は拒否した。すると母親は、出身地のミンダナオに帰るので、前回の賃金を支払うよう求めてきた。さらには、じいさんが死んだとも言い出した。余りの急展開に、信用できなくなり、その家族の家まで行って確認すると、ミンダナオに戻るという話を含め、デタラメが多いことが判明した。

そこで、私は、「弁護士のところに行き、ウソをつかないことを約束する正直契約を結ぼう。」と提案した。ウソばかりついていては、人から信用されず 誰も雇ってくれないので、この家族が貧困から抜け出すのは非常に難しくなり、子供への悪影響も計り知れないからである。しかしながら、母親は、「ウソをつかないなどという契約はとてもできない。」と 拒否した。今後もウソをつき続けるつもりである。こうなっては、私も受け入れるわけにはいかず、二人を雇い続けるのはやめにした。

この家族は子供が9人もいて、食べていくのに困っている。ウソをついて、賃金を早くもらおうとしたのは、学費より 今日の飯ということであり、それはそれで理解できなくはない。正直に誠意をもって、付き合う気持ちがあるのなら、こちらもできるだけの支援をしようと思った。約束では、学費の分だけ私のところで働いてもらうということにしていたが、もう少し仕事を増やす相談をするつもりであった。しかし、こちらの思いとは裏腹に、ウソがばれると、また別のウソをでっち上げ、誠意のかけらも見られなかった。

貧しいフィリピン人は、生活に困って、ウソをついたり、悪いことをすると主張して、貧しいフィリピン人を相手にしない外国人や金持ちのフィリピン人は少なくない。確かにここで取り上げた家族はそれに当てはまっていると言わざるを得ない。しかしながら、すべての貧しいフィリピン人に この考えを当てはめるのは大反対である。貧しくても善良なフィリピン人を、私は 沢山知っているからである。

今回は、計画どおりに進まなかったが、失敗の理由は、相手からやってきて、何か要求してきたら、まずは疑うべきであるという、フィリピンでの基本を無視していたことであろう。貧しくて善良な人たちは、謙虚さがあり、恥ずかしいと言って、直接要求をぶつけてこない場合が多い。こちらから、積極的に探す努力が必要だ。さらには、悲しいが、徹底的に疑って、相手のことを調べる必要があろう。

ここでは、「Working Student採用の薦め」を書いているわけだが、フィリピンでお手伝いを雇った場合の一般的な注意事項も頭の中に入れておく必要がある。物が無くなるかもしれないので、最初は家の外だけで働いてもらい様子を見た方が良いこともあろう。


この二人の場合は うまくいかなかったが、他を探して、学校に行けない子供たちを 学校に行けるようにする取り組みを 強力に推し進めていきたいものである。


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