バスの車掌のお目付け

2014年3月作成


Ceresバスで、車掌の監査をしているところ

フィリピンのビサヤ地方のバスを制覇したと言えそうなCeresバスに乗ると、車掌の監視役が頻繁に乗り込んできて、発行した乗車券と乗客の数を比べ、不正が無いか調べているのを見かける。そうは言っても、現場で不正を暴いているのを目撃した試しがなく、馴れ合いではないかという気もするが、とにかく これで不正はほとんど もしくは完全に防げているのだろう。

車掌からすれば、チケットを発行しなければ、まるまる自分の儲けになるはずで、この手のチェックが入らなければ、不正はかなりやり易いのだろう。バス会社は、バスの車体も揃え、ガソリンも買って、いろいろと出費がかさむが、車掌が不正を働けば、車掌のまるまる儲けになる。バス会社からすれば、車掌の不正は甚だ許せぬ行為と言えよう。

フィリピンで、それほど多くの種類のバスに乗ったわけではないが、ルソン島や、パラワン島、ミンダナオ島などで乗ったバスでは、その手の特別な人が乗り込んで来た覚えはない。性善説、性悪説の違いとも説明できそうだが、Ceresが巨大化しているのを見ると、この仕組みのお陰で、十分な収益を確保してきたのが、フィリピンでの成功の秘訣と言えそうにも思える。ただし、想像しているだけだ。不正は裏の世界の話で、数字で比較するのは難しそうだ。

東南アジアの他の国で同じようなことをやっているのはベトナムで、国民性から さもありなんと思えるが、そういうとベトナム人から嫌われそうだ。タイやマレーシアなど、他の多くの国では見かけない。
ベトナムの例では、終点近くで乗ると、車掌がなかなか料金を取りに来ず、もはやお目付けが乗ってこない端の区間まで滑り込み もう大丈夫というところで、料金を請求され、チケットをくれないことがよくある。くれない時は、チケット、チケットと騒ぐべきなのだろうが、そうすると 今度は荷物が多い時に追加で料金を請求され、車掌がそのままポケットに入れるという仕返しに出られそうだ。

いずれにせよ、インチキ対策で余計なコストがかさみ、それが運賃にも跳ね上がり、損をしているのは乗客ということになろう。しかし、これをしなければ、不正が横行し、その結果、このチェックシステムがない場合よりも、さらにコストがかかっていて、運賃への転嫁がさらに大きくなるという見方もできる。


この手の不正が一番起こりやすそうなのは中国であろう。そう書いても中国人も納得して、中国人から嫌われることもなさそうだ。

宋か明の頃の王朝の金の貯蔵庫で働く人のことを書物で読んだことがある。数年の年季の間、貯蔵庫から出ないが、最後に、出来るだけ多くの金塊を肛門から入れて、外に持ち出せるかに すべてがかかっているということだ。そのため、その仕事に就く人は、仕事を始める前に、ひたすら肛門の筋肉のトレーニングをしたそうだ。

ドゥマゲッティの大きな日用品店では、社員が帰る時に身体検査をやっている。そちらは不正対策だが、同じような内容の話であろう。同じくドゥマゲッティのフードコートで、レシートをもらえないのを通報したら無料にするという案内を見かけたこともある。

とにかく、中国の長距離の路線バスなら、この手の不正が横行しそうだが、バス単位で独立採算になっているとのことで、不正の必要がなく問題ないそうだ。しかし、よくあるのが高速バスでの高速道路内の普通の場所での乗降で、危ないのでやめて欲しいと思うが、特に雲南省でよく見かける。高速路線バスはバスターミナルから発着し、そこのチケット売り場で発券したものは、それなりにバスターミナル側へ手数料を支払う必要があるはずだ。それに対して、途中で乗ってきた乗客の運賃は、丸々手元に残るのでお得と言えるのだろう。高速道路を走行中でも、やたらとバスを止めて乗せようとする。

中国の都市の市バスは 今では料金箱の付いたワンマン・バスしか見かけないようになってきた。以前は、例えば北京の市バスでもマイピャオ、マイピャオと言って車掌が乗車券を売りに来た。雇われ車掌のようだったが、その時には不正は無さそうだった。


BACK