両替考

2012年6月作成




海外旅行の両替の話は 世の中に一杯転がっているので、わざわざ自分でまとめる必要はないだろうと思ってきた。しかし、先日フィリピンに来られた方は、普通なら当たり前のやり方とは違い、両替でかなり損されていたので、それがきっかけになって、気になることを書き綴ってみた。

両替は出発する国の空港より到着した国の空港で

先日、フィリピンへ来られた人は、日本の空港で、少なくない金額のフィリピン・ペソへの両替を済ませて来られた。

これは、「米ドルなど一部の通貨を除き、両替は出発する国の空港ではレートが悪いので、到着してからの方が良い。」という一般論に反している。
もちろん、到着してから両替ができるかどうか保証の限りでない場合には、少々レートが悪くても 予め訪問国の通貨を持っていないと不安であろう。到着してから 確実に両替できるのが分かっていれば、着いてからにして、良くわからない場合や、深夜到着で、空港の両替所が閉まっていそうな場合には、前もって、必要最小限を両替しておくということであろう。
また、旅慣れているかどうかにもよろう。ベテランバックパッカーなら、いろいろな状況に うまく対応できて、深夜到着した空港で、現地通貨がないので、空港のベンチで朝まで寝てから、両替所が開くのを待つかもしれない。しかし、これは普通の旅行者にはお薦めできない。また、どの国に行くにも、ドルの小額紙幣を持っていくというのは、いざという時に役立つ可能性もあろう。

私の場合には、出掛けたいろいろな国のお金の残りを、そのまま持っている場合が多い。少し残っていて、その国を再訪する場合の到着時に役に立つ。このやり方なら、きっちりその通貨を使い切るべく、両替の額などで気を使うことも少なくなる。
しかし、「現金を沢山持ち歩くと盗難のリスクが高まるので、旅には小額の現金しか持って行かない。」と自分で思いながら、各国のお金を合計すれば 結構な金額になっている。そして、昨年、盗難アジアで各国のお金を1枚づつ盗まれた。鍵をかけたホテルの部屋の中でのことである。他人を部屋に入れたりしていない。盗られたことを気づかれまいよう努力しているのは、ホテルの従業員の内部犯行であるのは間違いなかった。1枚づつでも50シンガポールドル等、合計すると結構な金額になって、安旅なので その時の現地の滞在費と同じくらいの金額を盗まれてしまった。

いずれにせよ、どうやっても何がしか欠点があり、100点満点は存在しない。私のやり方はリスクの観点からはあまりお薦めできないが、各地をそこそこの頻度で旅する人には利点も多い。

出発空港でのレートが悪いという例を挙げると、以前よく香港に行ったので、成田空港での香港ドルのレートを見ていたら、着いてから両替するより、2割程度レートが悪かった。現地で、ほんのわずかでもレートが良いところで両替しようと探し回っているのとは大きな違いで、日本の空港のレートはとんでもないということになろう。香港の空港のレートは、町中の両替商よりも悪いが、成田空港に比べれば、かなりましで、遅く到着しても両替可能なので、必要なら到着時に空港で少し両替していた。 それは、かなり昔の話で、今ならATMで引き出すということだろう。

東南アジアの国々の通貨なら、香港と同様、日本の空港でのレートは悪いのが普通であろう。

これに対して、米ドルやユーロの場合は、状況が反対と言えそうだ。

私の経験では、米国で 日本円の現金を両替しようとして、納得できるレートにお目にかかったことがない。探せば、よい両替場所があるのだろうが、特に米国の空港でのレートはイマイチで、日本で米ドルのTCをつくって持って行った方がはるかにレートが良い。今なら、PLUS, Cirrusのマークの入ったキャッシュカードでATMから引き出す人が多そうだ。


以下はフィリピン関連の両替の話題だけを取り上げる。

最初に取り上げた人の場合、関空でフィリピンペソを両替し、1万ペソ足らずに、2万3千円余り支払ったそうだ。1万ペソ、2.3万円で計算すると、1万円が4348ペソというレートになり、5月上旬の話で、1万円は5300ペソ程度だったので、この場合も2割は目減りしている。この方は、日本で両替したペソだけで、3週間近くの現地滞在を乗り切ったそうで、節約熱心であっぱれとは思うが、両替は課題で、次回からは、この人は、現地で両替するのであろう。

島の両替レート

追加で両替するかもしれないということだったので、滞在中のシキホール島で両替したらどうなるか、一緒に両替商に行って確認してみた。以前はシキホール島では日本円の両替はできそうになかったし、一般的には、田舎で両替するのは、レートが非常に悪いので、都市部で両替を済ませて来るというのが常識だった。そのため、私の場合、住んでいるシキホール島で両替することはなかった。

両替商で聞いてみた結果、1万円で5180ペソとのことだった。5月の中旬のことだが、この日に発表されているレートは1万円が5411ペソだった。刻々と変動するので、二つのレートがぴったり対応するかわからないが、その少し後の両替実績も踏まえ、同じ時にマニラで両替すれば5300ペソ程度かと思われる。5180ペソは、毎回シキホールで両替するためのレートとしては悪いが、旅行者の手元の現金が少なくなったので、単発で両替するくらいなら、許容範囲と言えそうだ。

シキホール島はかなり観光地化が進み、外国人観光客も増えて、その結果、両替の環境は以前より改善した。

別の訪問者で同じ頃、カミギン島に行った人から、そちらで両替した時の情報を知らせてもらった。カミギンでは余りにレートが悪いので、さっさと退散してカガヤン・デ・オロに移動したそうだ。その時のレートを比較を以下に示す。

場所 日付 発表されている
レート(10000円)
実績レート
(10000円)

カミギン島

5/1

5268ペソ

4700ペソ
カガヤン・デ・オロ 5/3 5266ペソ 5220ペソ

一般的に、田舎の島へ行けば、両替レートが悪いので、行く前に十分な金額をペソに両替しておくべきで、日本円だと、米ドルに比べ極端にレートが悪くなる場合が多いので、さらに要注意ということだろう。

この4700ペソは、カミギンの中でも レートの悪い両替商だった可能性もあるが、両替する時には、できるだけ良いレートを探すのが普通であり、カミギン島のレートが全般に良くないのは間違いなかろう。

ATM引き出しのレート

現金の両替はその場でレートが分かるので常にレートを注意しているが、日本の銀行の国際カードでPLUS, Cirrusのマークが付いたものを利用する場合には、その場ではレートが分からない。それでも便利なので私も結構利用するが、最近は、フィリピンの銀行も手数料を取るようになり、それが順次値上げされ、最新では、一回200ペソも手数料を取られる。日本でATMから現金を引き出すのに一回に400円も手数料を取ったらとんでもない話であろう。おまけに、一度に引き出せるのは最高1万ペソと制限が厳しい。フィリピン内で、最低でも2%の手数料を取られる計算になり、かなり割高と言えよう。おまけに、私の使っている三井住友銀行の場合、さらに日本で100円の手数料がかかる。新生銀行のカードを使えば日本での手数料は無料だが、その前にフィリピン側の手数料が異常に高いのが問題だ。それでは使うのをやめるかということになるが、少なくない現金を持ち歩くのは、盗難のリスクが高まる。

この機会に、フィリピン側と日本側の手数料 それぞれ200ペソと100円も加えた実効レートを計算してみた。当然だが毎回最大の1万ペソを引き出した。銀行はシキホール島でもATMがあるAllied bankを利用した。

日時 ATMで引き出した時のレート(10000円) 当日のレート
(10000円)
4/11 4863ペソ 5287ペソ
4/20 4853ペソ 5222ペソ
4/30 4851ペソ 5285ペソ
5/10 4926ペソ 5315ペソ
5/17 4941ペソ 5345ペソ
5/21 5033ペソ 5446ペソ
5/23 比較用のマニラでの両替事例
5370ペソ
5480ペソ

こちらもとんでもなく悪いレートになってしまっていた。泥棒に盗まれることを考えると難しい限りであるが、他の両替方法を増やした方がよいのは間違いなかろう。以前は、日本で円からドルへ両替して、ドルで送金したものを引き出す場合がほとんどであったが、円高が進んで、ドルへの両替のタイミングが難しくなった。悪いレートで両替したドルが塩漬けになっている日本人はかなり多いはずだ。


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