情報公開について

2002年7月


今回は、学生時代の経験をたとえ話にして、「マイレージ獲得大作戦」の情報公開の考え方について説明しています。 長くなったので、興味のある方だけ どうぞ。

このホームページの監修者である私は、その昔、電子工学科の学生をしていた。(昔話を始めると、歳を取ったと言われかねないが、例え話として使っているだけなので容赦願いたい。) 学科は今は情報学と言う名前に変わったそうだが、とにかく そこで、毎日、沢山の宿題攻撃に遭っていた。
それでも、私は、趣味で学生をやっていたようなもので、今は死語になったかもしれないガリ勉そのものだったので、その結果、いつの間にか 同じ学科の宿題担当者に就任していた。
宿題提出の前の日までに宿題を済ませて、ノートを貸し出し、皆がそれをコピーして、同じ答えを提出するという構図であった。
その結果、自分では宿題も解けないできの悪い学生を作り出すのに貢献したか。それとも、単位を落とさず留年を減らすのに貢献したのか。これについては、意見の分かれるところだろう。
私としては、後者の考え方で、皆の役に立ったと勝手に思っている。
なぜなら、専門の詳細事項を理解したからといって、学者にでもなる人以外には、後々ほとんど役に立たない。そんなことより、声が大きいとか、ゴマすりがうまいとか、ノウハウ本で紹介しているようなリーダーシップのスキルを身に付けるとか、そういったことの方が、後々よっぽど役に立つからである。複素解析をマスターするのに何百時間かけるより、スキーツアーの添乗員のバイトでもして、グループを統率する練習をしていたほうがよっぽど役に立つ。 たまたま取り組む羽目になってしまった複雑な理論を理解すべく、テキスト片手に奮闘しているよりも、一切サボって、ゲームのプログラムでも書いていた方が、後々、食いはぐれがないだろう。 最近の大学のカリュキュラムは、社会に出てすぐに役立つ内容になりつつあるようだが、昔は乖離が激しかったのである。
さらには、減点法で評価する多くの企業の一つに就職したとすれば、留年で、年次が遅れたことによるハンデは、一生涯付きまとう可能性が高い。留年が機械的に 昇進のハンデにでもなれば、留年に相当する一年や二年分の給料を失ったくらいのことでは済まされない大損害となりうる。

しかしながら、逆説的と言えるかもしれないが、私自身は このような世渡り上手のノウハウを身に付けるより、専門の難解な問題を解く方が面白いので、その結果、私は宿題を解く人、皆はコピーする人。そういう分担になってしまっていたのである。要するに頑固者であった。


宿題の中では、特に、当時 情報理論を教えて、今は出世して学長になったN教授は、毎週 必ず宿題を出すことで知られていた。 私の方は情報理論や符号理論と言った言葉を聞くだけで嬉しくなり、完全に魅せられていたので、毎週必ず宿題を解いて、皆にノートを回していた。
さて、この教授の最後の授業で、ある問題が言い渡され、宿題ではないが、試験の前に その問題を解いておくようにとの指示があった。
ところが、教科書に出てこない記号が使われていて、定義がわからないので、理解できず、意味不明で私は解けなかった。私のノートをコピーしていた人たちも、私からノートが回って来ない状態で試験に突入。ところが運悪く その問題が試験に出てしまった。
結果は惨敗で、大多数の人がその科目の単位を取れなかった。私も、辛うじてぎりぎりの60点だった。

ところが、その中で一人 高得点で単位を取った学生がいた。彼は、学科の図書室で、その問題が例題になっていた別の教科書をいち早く見つけ、その教科書を借り出していた。
普通なら、コピーが回って来ても良いはずのところ、こっそり独り占めしていたので、その結果彼だけが試験ができて、他の大多数の人は不合格になった。

その後 彼は、社会でも世渡り上手で成功したのか、それとも人から恨みをかって、失敗したのか、情報が不足していて正確なところはわからないが、私の知る限りでは前者のようだ。


以上は、例え話で、この中では、盛んに皮肉を込めて書いているので、私自身の意見は十分出ているものの、このような場合に、どういった態度を取るべきかといったことについては、人それぞれの考え方があることだろう。


さて、例え話と言っているわけは、「マイレージ獲得大作戦」も同じような考え方で、情報を公開しているからだ。

すなわち、マイレージに関して、特に航空券のノウハウを気前良く公開すると、皆が真似をして、その結果、航空会社はルールを厳しくし、公開した情報、ノウハウが無効になる。例えば、お得情報として公開したマイルの貯まるルートでは飛べなくなってしまった。というようなことが起こる。その結果、情報を公開した本人は損をする。正直者が馬鹿を見る。そういったことが起こりうる。

先の大学の例でも、みなの点数を上げるために、宿題を公開していたのだが、相対的に考えれば、このようなことは自分自身には不利になるとも言える。

どちらも自分自身には不利になるかもしれないことをしてきたかもしれない。
さらには、このようなことを書くと、なんとなく偽善者ぶっているようにとられるかもしれない。
しかし、実際には、特に深い考えがあるわけではなく、単に、教科書を独り占めした人物のような行動が私には信じられないだけだ。


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