海外日本料理店の似非、ほんと

2013年6月作成



写真と本文の内容とは関係ありません。

フィリピンで近所に住む日本人がJapanese restaurantに食べに行ったら、カツ丼のたまねぎが輪切りになっていて、これは違うという話になったそうだ。定食を食べたら、お箸が横を向いて出てきたとか、定食のご飯は、そこそこ多めに盛るのが日本では普通だが、少しだけしか出て来なかったとか、日本人によるその手のクレームが少なくない。

反対に、コタキナバルで知り合った日本人は、毎晩 行きつけの日本料理店に通っているそうで、そこでは、豊富な経験を持つ日本人オーナーシェフが腕を振るっていて本物の味である。オーナーは日本で料理人として働き、腕を見込まれ大使館おかかえの料理人となり、現地の仕事が終わった後も、そのまま海外に残り、自分の店を開いて営業しているということだ。それでも、食材のかなりの部分は現地調達になり、日本の味にするための苦労があるのだろう。

日本人が日本語で日本料理店というと、まともに修行を積んだ板前さん、料理人が厨房に立っているお店をイメージする。家庭の料理とは雲泥の差があり、ある程度以上の洗練された味のお店と言えよう。海外でもレベルの高い日本料理店は少なくないが、日本人が行って食べてみると、最初に取り上げた幾つかの例のように、これは違うと思う場合が多そうだ。そもそもJapanese restaurantを日本料理店と直訳したら、その店は日本人がイメージするのとはずれ、実際には、大衆食堂、郷土料理、家庭料理のレベルだったりする。日本料理店は間違いで、和食の店が正しい訳かもしれない。英語のRestaurantの方も、辞書では料理店という訳語になっていて、大衆食堂は、eating houseという訳語が見つかる。しかし、現実には そんな看板はあまり見かけない。カツ丼や親子丼もメニューにあるが、すしや高級な料理もできる。大衆食堂的な呼び名では格下げになるのでJapanese restaurantと呼ぶ。そんなところであろう。

米国なら Japanese cuisineという看板が多そうだが、その場合、親子丼だけ食べて帰るような店ではないであろう。
そもそも、私の場合、他の多くの日本人と同じと思うが、海外で日本料理店、Japanese restaurantへ行きたいとはほとんど思わない。現地の料理の方が、安くて美味しいものがあるからである。そう言うと この話題を書くのは相応しくないととも言えそうだ。しかし、米国などで、日本料理店に行った経験もそこそこある。それでも、その米国での経験もかなり以前のことであり、ここでの話はどちらかというと東南アジア限定とした方が良いようにも思う。特に南米では、テレビで見たところでは、移民の方々が伝統の日本を頑なに守り、日本以上に日本的で、ここでの話を当てはめてしまうのは失礼だと思う。アフリカだとJapanese restaurantは少なそうだが、それでも、ケープタウンに富士山や港があり、カイロには当然すし屋があり、鉄板焼きの店もある。しかし、行った経験がないので、これらも除外しておいた方が良さそうだ。


以上は前置きで、今回は、海外にある日本料理店について、表題にもあるように本物と偽物、そして、さらにもう少し細かく分類してみたかった。バカ田大学の入学試験で出題されるかもしれない、「海外日本料理店を分類すると何通りになるか説明せよ。」という問題を解いてみるようなものだ。

H.日本人の関与

一つの観点は、日本人がどう関係しているかということだ。外国人でも普通の日本人以上に日本的な人も居るので、料理の分野でそういう人であれば、この中に加えてもいいはずだ。

1.日本人が料理している

日本人が料理していれば、日本の味の料理が出てくるのは間違いない。その場合の課題は値段であろう。その日本人の方針によろうが、日本人が直接働いているなら、通常はかなり高い店になりそうだ。

2.日本人が監修している

日本人が直接料理してはいなくても、オーナーが日本人であったりして、不在オーナーでは駄目だが、ちゃんと日本人が店を見守っていれば、上の例のようなカツどんのたまねぎが輪切りにはならないだろう。

3.日本人は関係していない

日本人以上に日本的な外人も少なくないので、すべてをそうと決め付けるわけにはいかないが、日本人が全く絡んでいない場合には、普通の日本人が見て、これは違うと言う間違い探しの対象になるような点が出てきそうである。

C.料理人の経験

いくら日本人が料理していても、1.板前さんが料理するのか、2.普通の人が料理するのか、料理のプロと素人では雲泥の差がある。日本人以外でも、日本料理の経験を積んで、日本人の本格料理人と同等かそれ以上の腕前の人がいてもおかしくない。

寿司やお刺身を本格的な修行を積んだ人以外が料理しても、普通の日本人が食べれば、ばれてしまうだろう。最近は、便利になったので、例えば Youtubeで大根の桂むきを簡単に見ることができる。これを見れば、日本料理の料理人は、料理に人生をかけているというのが一目で分かる。(しかし、別の見方をして、このように簡単に情報が手に入るようになったので、それを活用して うまく修行すれば、短期間に腕を上げることができるようになったのではないかとも思えてくるが、それは本題からそれるので 止めておこう。)

日本人が料理している場合には、経験の違いで、日本料理店と呼ぶか、大衆食堂等と呼ぶかの違いになろう。

海外日本料理店では、日本人が料理している場合以外では、現地の人が料理している場合がほとんどであろう。  

日本人以外が料理する場合には、現地の料理を中心にして、料理の一般的な経験がどれだけあるかという話であろう。

P.価格帯

1.安い、2.普通、3.高い。

I.日本の食材

0.日本の食材は使っていない。

日本の味を知らない現地の人向けに、現地の人が始めた廉価な店であれば、これに含まれる場合が多そうだが、日本人が行く前に不吉な予感を感じる典型的な場合であろう。

1.日本の調味料を使用。

現地の日本人が食べても、これは日本の味とは違うという話にならないために、最低限必要な条件であろう。

2.魚介類なども日本から取り寄せている。

これは、マグロが築地からニューヨークに送られるようなもので、超高級日本料理店と言えよう。


例えば、米国でNO MSGという表示が店先に出ているのは、ずっと前からある。

ここでは、覚え易いH1N1という表示が店頭にあれば、期待を裏切らない美味しい和食が食べられるという話にしたかった。最初のHは、スペイン語のJaponのスペルがなまってタガログ語のHaponがあるので、なんとかHを使った。しかし、調理する人の方は、Googleの翻訳を使っても、どの国の言葉もNは見つからず、普通にCookでCとした。
実際には、H1N1では、怖くて客が寄り付きそうにないので、冗談含みの話であり、バカ田大学的発想ではそうなったということだ。

日本で経験を積んだ料理人が海外に渡り、日本料理店を始めた。しかし頑固おやじで、現地に住む日本人や、現地の人で、あまりお金の無い人たちにも手軽に来てもらえる安い店にしたいという、儲けよりも おやじの頑固さを通したような店。多くの人が行きたいのは、そのようなお店であろう。それはH1C1P1I1という分類になる。

接待などで使われる とにかく高級で本物の味というカテゴリーのニーズもあるのだろうが、それは、取り上げず、もう一つ、期待したいのは、途上国の場合で、現地の安い労働力は活用する場合だ。すなわち、日本人は料理はしないが、例えば、日本で経験を積んだ調理人が、海外に渡りオーナー・監修者となる場合である。これだと、指導が行き届いていれば、安くて美味しい店になる可能性がある。これは、分類では、H2C2P1I1となる。 勿論、オーナーの方針次第で高い店にもなろう。

日本人が関係していなくて、日本の食材も使っていないH3I0の分類に入る店は、似非と言え日本人が行く店ではないと言えよう。


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