特典旅行必要マイル切り上げ・改悪の原因は陸マイルか?

2013年12月作成



日本の新聞で、UAの特典旅行の必要マイルが引き上げになったことから (DLも追随したが)、インフレのトレンドが世の中に広がりつつあるのではないかという論調の記事を見かけた。元記事をリンクすることも可能だが、ここでは、ちょっと反論が入り、元記事の側から 嫌われそうな内容になりそうなので、敢えてリンクは止めておく。

確かにインフレであるのは間違いないだろう。しかし、その新聞記事では、その原因を、航空会社が企業努力して、空席を減らしてきたので、特典旅行に回せる席が減ってしまったということで説明をしていた。これは、例えば 松茸その他なんでもよいが、採れなくなった、供給が減ったので値段が上がったというのと同じことだ。この供給不足説を 全面的に否定するわけではないが、いろいろな見方や可能性があると思われる。

そこで疑ってみたいのが陸マイルの乱発である。

そもそも、空マイルだけであれば、空マイラーが、フライトを利用して、マイルを稼げば稼ぐほど、飛行機の利用も増える。マイルの発行が増えても、飛行機の便数、席が増えて、放っておいても、空席も増え、マイル発行が増えても、特典旅行に回せる席が足りなくなるという話にはならないだろう。もちろん、この新聞記事の説明のように、航空会社が企業努力で空席を減らしたのであれば、特典枠は足りなくなるとも言えるが、空席が多いフライトもよく見かけるし、他にもいろいろ反論できる。企業努力で空席が減ったという前提を受け入れても、スタンバイで乗るなら、必要マイルは増やさないというルール変更ならユーザーも納得いくはずだ。それもやらないで、必要マイルだけ増やされたのでは、ユーザーはたまったものではない。


陸マイル疑惑の検討の前に、航空会社がマイルを販売して起こったトラブルをおさらいしたい。どこの航空会社か書かなくても自明だと思うが、キャンペーンでマイルを安く販売して、沢山売りさばいた直後に、特典旅行の必要マイルを切り上げた。一律の切り上げではないので、利用する路線によっても状況は変わろうが、キャンペーンに飛びついたが、引き上げで、実質損したというユーザーが騙されたと言い出したのは当然だろう。

この例はかなりひどい話だが、マイルを販売した場合に、それに見合っただけ、特典旅行の枠を増やしているかという疑問がある。航空会社は当然枠は増やしているというだろうが、部外者は検証のしようがない。私を含め多くのユーザーは疑っているはずだ。
繰り返しになるが、空マイルであれば、この問題は勝手に解決して、空マイルの発行が増えても、それに見合って空席も増えるはずだ。

陸マイルは通常はクレジットカードの利用によるもので、これは、間にカード会社が入るだけで、航空会社はマイルを売って代金を受け取り、払ってくれるのがカード会社というとだろう。カード会社は、マイルの代金を支払うが、カード利用の手数料として入ってくる歩合の方が十分大きな割合であり赤字にはならない。これまで、クレジットカードを使わなかった人たちに、陸マイラーになってもらい、生活費までクレジットカードで支払ってもらい、新規の顧客開拓に成功して儲かったということだろう。

航空会社が直接マイルを売った場合と同じで、発行した陸マイルに相当する分、特典枠を増やしてもらわないといけない。かなりの陸マイルを発行しているはずで、それ相当にフライトが増えてもよいという話であろう。航空会社は当然そうしていると主張して、ユーザーは私も含め、検証できないので疑っているという平行線となろう。

この疑惑を、宝くじで例えてみる。

もともと、xx組○○○○○○ という並びで、宝くじを発行していたとする。そこへ誰のミクスを主張する、誰か黒幕が暗躍し、
単純に空xx組○○○○○○、陸xx組○○○○○○というこれまでの倍の枚数の宝くじを発行したとする。空マイル、陸マイルの割合がよく分からないが、この例えでは、1:1と仮定していることになる。

宝くじを倍発行したので、当たりくじも倍にすれば、還元率、期待値は同じでなんら問題ないが、買い手が馬鹿なのを良い事に、当たりくじは前と同じで増やさない。もしくは、少しだけ当たりを増やして 誤魔化してしまう。そんな話はないかということだが、実際には、宝くじでは、期待値は中学生で習う計算で、小学生でも分かる話で、公表している当たりくじの情報から いんちきはばれてしまう。

しかしながら、マイルの発行と、特典旅行の枠やその実績となると、航空会社の航空会社から十分なデータが出ているか疑わしい。有効マイルの総残高や、年間に特典旅行で利用された席の総数などは見かけたことがあるが、航空会社が合併することもあり、そうなると数字はややこしくなる。分析の一番の課題は、マイルを貯める時期と使う時期がかなりずれていることで、ある年に新規に発行されたマイルの総数と、ある年に使われたマイルの総数を比較しても、ある程度意味はあろうが、本来見るべき数字とはかなり違うはずだ。

これは、またまた例え話をすれば、ある年に離婚したカップルの数を、同じ年に結婚したカップルの数で割り算して、離婚率だと言っているようなものだ。同じような傾向が昔も今も続いているのならそれでもよいが、例えば、昔ベビーブーマーが大量に結婚して、それが、大量に熟年離婚しているとする。一方、とんでもない少子化が進んで、結婚するカップルは、ベビーブーマー時代に比べ、桁違いに少ないという場合は容易に想定できる。ベビーブーマーが熟年で再婚することもあろうが、やはり結婚するのは適齢期の若手であろう。そうすると、離婚世代の母数が莫大で、結婚世代の母数ははるかに少なくなり、同じ年の離婚件数と結婚件数の割り算は、何百パーセントというような数字が容易に出てくるかもしれない。たまたま100%になって、結婚したら必ず離婚するなどと、この数字から馬鹿なことを言ってもお笑いぐさだ。

分母と分子で別のものを比較しているからこうなる。特典旅行の場合も、マイルの発行と利用に時間のずれがあり、正当に特典旅行が提供されているかどうか、評価するのは簡単ではない。そこへ、ユーザーが知りたいデータが航空会社から十分提供されるかというと疑わしくて、例えばマイルの空陸比率ですら、業界人間なら知っているのだろうが、一ユーザーとして、データを見たことがない。

ダラダラと書いてしまったが、疑惑は、陸マイルを大量に発行しておきながら、宝くじの例えで、当たりくじを増やさない場合のように、発行陸マイルに相当する特典旅行の席を提供したのかどうか疑問ありという話だ。繰り返しになるが、これをやるには本来ならフライトもそれ相当に増やしてもらう必要があろう。

宝くじの例を繰り返すと、疑惑は、誰のミクスの考案者が、空xx組○○○○○○、陸xx組○○○○○○のように、陸マイルも含め大量に、マイルを発行したものの、特典旅行はそのままか、陸マイルをばら撒いた分に見合うようには増やさなかったのではないかということだ。

これは宝くじなら大問題になるが、マイレージ場合は、ルール変更の権限その他すべてを航空会社が握っているので、最後はユーザーは泣き寝入りであろう。

泣き寝入りで話を結んでも面白くないので、賛同者を増やすべく、別の例え話を持ち出したい。

江戸時代に貨幣の改鋳が行われた。金貨に混ぜ物をして、中国のビールが ひたすら薄いのと同じように、少しの材料で沢山作るようなことをやった。やった人の名前を忘れてしまったので、彼のミクスと呼んでおこう。結果は当然のようにインフレになり、教科書に書かれているように評価は良くない。陸マイルを追加して、マイルの発行を増やしたものの、特典旅行を、それに見合っただけ出さないのでは、江戸時代の通貨の改鋳と同じようなことだろう。

例えに使った誰のミクスも、彼のミクスも受け入れ難いということは賛同してもらえるはずだが、ここでの疑惑である陸マイルの発行に見合うだけ、航空会社は特典旅行を出したかどうかという点については、やはり平行線のままであろう。一ユーザーとしては詳しいことは分からないが、どこかで業界情報が得られれば、また更新したい。


陸マイル善玉説

陸マイルを悪玉扱いしたような書き方をしたが、航空会社からすれば、陸マイルこそが、提供したマイルに対して直接代金を支払ってくれる由緒正しい善玉であろう。これに対して 空マイルの方は、航空会社はおまけでユーザーにあげるだけで、マイルの代金は払ってもらえない。航空会社からすれば、マイルを出したいのも、特典旅行を与えたいのも陸マイラーということになろう。

しかしながら、そもそもは、空マイルしかなかったし、以前は 客の囲い込みで ユーザーを増やし、マイレージプログラムの先行航空会社は他社への優位性を保つツールとしてマイルが使えた。空席を提供するので非常に低コストでおまけを提供でき、業績を伸ばすのに役に立っていたに違いない。ところが、例えば2000年頃から日本の航空会社もマイレージプログラムを積極的に運用し出したように、当初は、米国の航空会社が中心であったものが、LCC以外では世界中で当たり前となった。そうなると、あって当たり前の単なるコスト要因と化してしまったという考え方ができよう。

しかし、物は色々な言い方ができ、マイレージプログラムがあるからこそ、旅に出掛ける空マイラーもいるし、そこまでではないものの、マイルも貯まるから、特にマイレージのキャンペーンを利用して、この際旅行に出掛けようと思う人もいるだろう。マイルが貯まるので列車、その他よりも飛行機に乗る場合もあるかもしれない。空マイルにおけるマイレージプログラムも、まだまだ業界全体の底上げに役に立っているという言い方もできる。



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