A Day in the Clay Hotel

99年12月

ユースホステルも兼ねている ここクレイ・ホテルは、外国からの旅行者でいつも賑わっている。さて、今年6回目のマイアミ滞在。クレイ・ホテルで同室した個性的な3人を紹介しよう。彼らはロシア人、ギリシャ人およびブラジル人である。簡単のためそれぞれロシ、ギリ、ブラと呼ぶことにする。

ロシはマイアミ生まれニューヨーク育ち。米国籍のロシア人。世話好きな男である。彼は、孫もいる年齢だが、2年前若い奥さんをもらったそうだ。御多分に漏れず、すぐにメキメキ体重を付け、あっと言う間に45ポンド増えてしまったとのこと。そこで現在減量中。すでに25ポンド減らした。ズボンがごそごそになっているのを、誇らしげに見せてくれた。誕生日まで残り3ケ月。さらに20ポンド減量し、元の体重にもどしたいそうである。

残念ながら彼は現在若奥さんとうまくいっていない。奥さんは西海岸にいるが、今どの町にいるのかわからない。彼が今マイアミにいるのも、このトラブルが原因であり、休暇を楽しんでいるどころではないそうだ。生まれた地マイアミで頭を冷やしたいとのこと。

ところで、彼の宗教はギリシャ正教。彼曰く、ギリシャ正教であるロシア人はクリスマスを2回祝うそうである。通常の12月25日と1月7日の2回。キリストの生まれたことがロシアまで伝わるのに、早馬でも2週間かかったので、2回目ができた。ギリシャ正教では、1月7日もクリスマスであるとのこと。しかしここでギリが割って入って来た。同じギリシャ正教でもギリシャでは、12月25日だけがクリスマスである。グレゴリ暦(新暦)とユリウス暦(旧暦)には2週間の差があり、あんたのところは、旧暦のクリスマスも祝っているのさと主張。1月7日は、かなりローカルなクリスマスのようだ。

ギリはテニスのインストラクターを生業とするギリシャ人である。クレイホテルというところは、長期滞在組が多く、彼もこの地に2ヶ月以上滞在している。そんなに長くいるなら、この地でテニスを教えているのかとたずねたが、そうではないとのこと。競合が多く仕事を得るのが難しいそうだ。宿泊費を除くと、1日7ドルで暮らしているそうだ。もう一人のブラ同様ラテン系。脳天気というか何というか、その日暮らしに近い生活を送っている。彼はなかなかの勉強熱心。知識欲のかたまり。目下自動車業界の歴史の本を読んでいる。東京1868年〜1923年という本も読もうとしていて、なぜ1923年なのかと、彼からたずねられた。関東大震災で、東京が焼野原になった年だと説明すると、なるほどと納得してくれた。ラテン系の血と知識欲が結び付くとどうなるか。 毎日、観光客で賑わう通りに出て、美人ウオッチを欠かさない。一人一人異なる美人を眺めるのが楽しいのである。Beautiful ladyは日本語で美人と言うのだと教えると、早速覚えて、美人美人と連発していた。彼は英語はほぼ完璧。全部で6ヶ国語も話せるそうだ。彼に語学上達の秘訣を見たような気がした。

最後にブラ。彼は一番のひょうきん者で自称ゲイ。ギリをファックするといきまいていたが、どう見ても立場が逆である。テニスで鍛えられたギリの体格に比べ、ブラはひ弱にしか見えない。ブラが寝ているところを、上から押さえていたが、実は単に肩をもんでいるだけであった。最後までやるから10ドルでどうだと、交渉していた。

さて、この部屋で事件というか、困ったことが続いている。彼ら3人とは違うが、泥棒が一緒に泊まっているらしいのだ。ロシが言うには、3日前泥棒は下の部屋に出張して、宿泊している青年から貴重品一式を盗んだらしい。パスポートや現金すべてを盗まれた青年は、散々の目に会い、家族から送金してもらい、旅を終えるはめになったそうである。ロシは、同じ部屋でこの泥棒氏が、食べ物を盗むところ、さらには 盗んだ食料をビーチで食べているところを目撃したそうだ。食べ物を盗まれた別の宿泊客が、後で騒ぎ出したのでわかったとのこと。ロシ自身も冷蔵庫で冷やしていたペットボトル入りのジュースを盗まれていて、それ以来ジュースをスーツケースにしまっている。全く異常な事態である。

脳天気に見えるブラもこと泥棒に関しては慎重である。部屋の中でジーパンまで盗まれた人が出てから、1日1ドル払い、ロッカーをレンタル。ほとんどの荷物をそこに入れているのである。持っているはさみまで、ロッカーの中にあり使えない。不便この上ない。

私が、荷物をそのまま、平気な顔をして 食事に出て行くと、とんでもないと、3人そろって忠告してくれた。今は泥棒はマイアミ・ウォーカー中。通りを歩いているので安全だが、出かける時には荷物を部屋に置かない方が良いと。そのため、昼間外出している間、すべての荷物をフロントに預けるはめになった。フロントの人に、泥棒が同じ部屋に泊まっているという噂があるので荷物をすべて預かって欲しいと言うと、けげんな顔をされた。

このような異常な事態は、今回が始めてであり、単なる冗談だったのかどうかいまだ不明だが、まずは荷物は無事だったので一安心。少し変だが、何事も用心するに越したことはない。これまで一度も問題なかったし、安さ一番なので、次回からもClay Hotelにお世話になることだろう。