ボランティア考

2000年4月

以前から、オーバーブッキングで、ボランティアを募っている光景にたくさん出くわした。航空券にもそういう事態が起こることを、明記してあるので、仕方がないと言えば確かにそうである。ボランティアになってもらえないかと、何度も頼まれたが、一昨年までは、何だかんだ言って、一度も応じたことはなかった。しかし、昨年は積極的にボランティアに応じたところ、いつも、驚くほど感謝されたのである。たくさん、補賞金を出さないといけないのに、これほど感謝されるとは、奇異に感じられるが、そう言えば、なるほどと思える事態が以前あった。

97年のお盆に、UAで関空からソウルへ飛んだ時のことである。この日は混んでいて、チェックインの時から300ドルでボランティアを募っていた。私はそんなことは気にせず、さっさと搭乗していたが、出発時刻を過ぎてもいっこうに出発しない。しばらくして、「乗れない人がたくさんあり、もうしばらく御待ち下さい。」とのアナウンスがあると、ガラの悪そうなおじさん連中が、わめき出し、機内は険悪な雰囲気になった。乗務員が謝って回ったが収まらず、500ドルでボランティアになる人を募り出したところで、たくさん降りる人が出て、何とか出発の準備ができた。しかし出発が1時間以上遅れてしまった。

この機材にはファーストクラスはなく、ビジネスクラスの1Aの席に、私は座っていた。既にシャンペンをもらって、くつろいでいたので、ボランティアになるなど、思いもよらなかった。しかし、機内が騒然となった理由の一つに、私がボランティアに応じなかったことがあると思うと、ばつが悪く感じられた。

このように、オーバーブッキングの対応でつまづくと、職員はたいへんな目に遭うのである。そこで、進んでボランティアになる人は、歓迎してもらえる。収益確保のための航空会社の都合、それから、もらえるものなら補償金をもらってやろうという乗客の都合、それぞれの都合があるが、お互い気持ち良く対処したいものである。

さて、そう言う観点で、是非止めていただきたいことは、後から補償金の額を吊り上げて行くことである。そうなると、最初から率先して、ボランティアに応じた正直者がばかを見ることになる。また、補償金の額が上がるのを待ってボランティアになろうなどと考えれば、それは十分たちの悪い乗客と言えるだろう。