特集 福建省 客家土楼巡りのバスは走らず

第一部 バイク・タクシーのぼったくられ方

2008年6月



順昌楼@塔下村

以前、香港の客家(ハッカ)の集合住宅を取り上げたが、最近になって、本家 福建省の客家土楼に行くことができた。ここは、2008年に世界遺産に登録されるという噂があり、混みあう前に行ってしまおうと思った次第である。UAマイルによる特典旅行と値段の安いセブパシフィック航空(5J)のフライトを組み合わせ、さらにアモイからバスで土楼へと向かった。
因みに、客家(ハッカ)は、ミントのハッカでも、ハッカー(hacker)でもなくて、Wikipediaによれば、漢民族のエスニック集団とのことだ。苗(ミャオ)族や、ナシ族のような少数民族とも違う。

まずは失敗から 〜 土楼にたどり着けず 〜

インターネットでそれなりに検索して、参考情報を印刷して持って行ったのだが十分に読んでいなかった。また、ガイドブックも持たずに行った。このため、旅は、まずは目的地の勘違いから始まった。土楼は、福建省の永定というところに集中しているので、アモイから永定行きのバスに乗ればよいのだろうと思って適当に行ったのだが、永定の町から土楼に行くのに、さらにバスに2時間ほど乗らないといけないことが後から判明した。バスを降りたら土楼に歩いて行けるとばかり思って、荷物が多いためバス・ターミナルの前の旅館に直行でチェックインした。しかし、荷物を置いて、町を歩き始めたものの、近くに土楼が見当たらない。どうやら土楼行きのバスに乗る必要があったようだ。もしくは、お昼前に永定の町に着いて、その後さらにバスに乗り継げば、土楼に行くことができたのだ。しかし、旅館にチェックインしてしまったのでどうしようもない。仕方ないので、パソコンをたたいて、町をウロウロして午後を過ごした。

永定の町の様子

今回泊まった駅前 天河旅館

50元の部屋は、かなり広くて
私には十分快適だった。

公安来たる

夜になって旅館に戻ると、訪問者があった。普通ならあまりお世話になりたくない公安である。土楼巡りをしていれば問題ないが、「何も観光するところがない永定の町に泊まって何をしているのか? 午後は何処に行って、何をしていたのか?友達がいるのか?」 といった質問を受けた。 「土楼に行くつもりが、間違ってしまった。明日の朝、バスで土楼に行く。」 と答えると 何とか納得してくれたが、後でもう一度やって来て、パスポートを調べ直すという念の入り様であった。
例によって、私の方でHP更新のための記事を書くのが遅れ、時間が経ってしまっているのだが、この時は ちょうどチベット暴動が起こった頃であった。チベット支援のためにやってきた外国人がいないか調べるよう中国全土の公安に通達が出ていたのではないかと そんなことを想像してしまう。 他にも、この時期に公安が宿にやって来た人があれば知りたいものだ。これまで中国には合計で2ヶ月程度は泊まっているが、宿に公安がやって来て、取調べや質問を受けたことは一度もなかった。田舎で本来外国人が泊まれないはずのところに居ても 公安が来ることはなかった。

バイク・タクシーに挑戦

永定の町のバスターミナルの前の旅館に泊まったので、バスの運行スケジュールは容易に確認でき、次の朝は、すんなり土楼のある地域へバスで移動。 宿屋を見つけ、そこに荷物を置いた。
インターネットで得た情報では、宿とバイクタクシーの運転手はグルになっていて、日本人観光客をカモにしてボッタクっているということであった。しかし、日本人の個人の旅行者は、バイク・タクシーをチャーターして土楼巡りするしか選択肢がないようでもあった。そこで 私も、宿屋のオーナーが連れて来た運転手のバイクタクシーに乗って、土楼巡りに出掛けた。

バイク・タクシー
後部席の横に荷台を広げられ、結構
大きなカバンを乗せられるようにした
バイクもあった。

しかしながら、現地を回ってみると、今どきバイク・タクシーで土楼巡りをしている人など、私以外には見かけなかった。見かけたのは、高級自家用車で乗り付ける中国人。世界一の外貨準備高を誇る中国。毎月8兆円近く外貨準備高を増やし、日本の現在の外貨準備高である約100兆円を、たったの1年程度で貯め込んでしまいそうな勢いのお金持ちの国 中国なら当然だろう。(しかし、大多数の中国人はお金持ちでないのも事実だ。) それから、ツアーの日本人がマイクロバスに乗って土楼巡りをしていて、日本人添乗員が解説している姿も見かけた。
普通の中国人のグループが、ワゴン車のタクシーをチャーターして回っている場合も多いが、とにかく、個人で短時間に効率よく土楼巡りをしたいなら、バイク・タクシーということになりそうだ。

原油価格の高騰もあり、バイク・タクシーによる土楼巡りは、いったい幾らが適正料金なのかよく分からない。インターネットで他の人が挙げていた値段に比べれば、今回はその2/3程度の値段で回ってくれたし、いろいろガイドしてくれたので、良心的な運転手だったと言えなくも無い。それでもボッタクリという言葉を使った理由は、1日で回るという約束だったのが、昼過ぎには宿に戻ってきて、食事をし それでお仕舞い。午後は別の地域に行こうと言い出し、それはまた別料金だと言うからである。それでは話が違う。当然 断った。 これが今回のボッタクリの手口である。 

しかしながら、運転手は親切にいろいろ連れて行ってくれて 役に立ったし、客は多くなくて儲かっているようではなかったので、一度くらいはこの半日コースを利用してあげても良さそうにも思った。

ちなみに、その日の午後は、宿の横にある民族文化村というテーマパークのようなところを見て回った。ここが土楼の中心で、時間の無い人はここだけ見て帰るということになるはずだ。土楼が沢山集まって、手入れも行き届いていて、感じの良いスポットである。

民族文化村のゲート

これを目印に、アモイからバスに
乗るべきだった。

民族文化村の前の宿屋が
林立しているところ

土楼に泊まる

民族文化村周辺

折角の機会なので、土楼に泊まろうと思い、民族文化村の前でバスを降り、すぐ近くにある環興楼という円楼に泊まった。しかしながら、そこで経験したのは土楼暮らしの厳しさだった。便所、シャワーがなく、近くにあり同じオーナーが経営する飯店(ホテル)まで行かないといけなかった。

環興楼

明代の1550年から建築を始めた
そうだ。

中はかなり、曲がっていて、震度6で
倒壊確実。震度5強??という
印象だった。

部屋は綺麗ではなくて、まさに
寝るだけという感じだ。

便所がない。替わりに壷が置いてある。

塔下村

一泊目の土楼の部屋がかなり劣悪で、さらに、そこをベースに土楼巡りをするにもバイクタクシーにぼったくられるという二重の課題をかかえていたので、これは他に移るしかないと思い、一日目の土楼巡りで 雰囲気が良さそうだった 塔下村というところに向かった。そして、前日感じが良さそうだった二箇所の宿うちから泊まるところを決めようとしたのだが、乗ったバイクタクシーが 強引に違う宿屋に連れて行き、荷物を部屋に運んでしまった。面白くないので、荷物はそのままにして、他の宿を見に行ったのだが、そこで聞いてきた値段と同じまで、元の宿は値引きするので、結局 最初の宿に泊まることになった。土楼全部を宿屋に改装してあり、十分綺麗で快適だったので、そんなに悪くはなかった。近所の土楼を巡った後、次の日の早朝、宿の前を通る[ シ + 章] 州行きのバスに乗って帰った。

近くの丘の上から塔下村を見る。

山間の温泉街のようなたたずまい
中国おしんでも出てきそうな感じだ。

土楼二泊目の永興楼

泊まった宿の近くにあって雰囲気が
良さそうだった別の土楼宿


この村の土楼を全部見てやろうと ウロウロしていたら、親切な中国人が話し掛けてきた。土楼を順に案内してもらった後、その人の宿屋に行き お茶を沢山ご馳走になった。私がここに来た二人目の日本人だということであった。もう一人の日本人の写真が置いてあったが、バリバリのバックパッカーだった。ご主人の張さんは、最初に来た日本人のお陰で、日本人が大好きになったようで、私も いろいろ親切にしてもらった。部屋を全部見せてもらったが、先の日本人が泊まった部屋が一番良かった。料金は一泊30元とのことで、破格の値段は、通常の日本人価格ではなくて、日本人大好き価格ということのようだ。 先日訪れた時には、この村の宿泊客は私以外には見当たらず、当然ここも誰も泊まっていなかった。それも 安さに影響していたのだろうが、世界遺産になって、人がどっと押し寄せたら、桁が上がってしまうかもしれない。

この宿のまわし者のようなことを書いているが、オーナーの張さんはとてもいい人なので、思わず取り上げてしまった次第である。これを参考にしてわざわざ、山奥のこの宿まで泊まりに行く人が出てくるとは考えにくい。ここでは、日本人好きの中国人がいるという事実を紹介したかったまでだ。それでも、UAのマイルを使って、NHで日本からアモイを往復して(NWのマイルを利用してCZで乗り継いで行くことも可能)、アモイではコロンス島のYHに泊まり、バスでこの宿まで行き、土楼巡りをすれば、とても安上がりな特典旅行を楽しめそうだ。現地滞在費は1万円で行けそうにも思う。しかし、実際には、いっぱい食べて、各地で入場料も取られ、それなりにぼったくられ、そうはいかないのかもしれない。

万興楼
これは、土楼ではなくて、
セメント楼かレンガ楼であろう。

万興楼 最上階の一番良い部屋

部屋からみた村の眺め

万興楼のオーナーの張さん

土楼巡りのスタイル

一般的な土楼巡りのスタイルは、アモイからツアーに参加して、団体でバスに乗り 日帰りで回るというものだ。有名土楼には沢山観光バスが来ている。 また、インターネットで検索して出てくるのは、民族文化村の前に並ぶ特定の宿屋に泊まり、バイク・タクシーで土楼巡りを繰り返すというものだ。

しかしながら、ここでは 折角なので違うスタイルを提案したい。すべてセッティングされたツアーというのは個人的にはあまり好みでない。また、バイク・タクシーで土楼巡りを繰り返していては、かなりぼったくられてしまうからである。そうは言っても、運転手がそんなに儲かっているわけでもないので、一度ぐらいは乗ってあげていいとも思う。

民族文化村の中も土楼群だが、他にも雰囲気がよい土楼群がいくつもあり、それらを泊まり歩くというスタイルをここでは提案したい。土楼群の間の移動は、基本的にバスを利用し、バスがない区間だけバイクタクシーに乗れば、バイクタクシーで土楼巡りをする場合より、交通費は何分の一かで済むはずだ。上に挙げた環興楼は、泊まるのはかなりきつかったが、トイレ、シャワーがあって、そこそこ綺麗な部屋が、それぞれの土楼群の中に大抵見つかるはずだ。それらを一泊づつ渡り歩き、じっくり一日かけて、それぞれの土楼群を見て回れば、ツアーやバイクタクシーでさっと土楼を駆け回るよりも、かなり充実した見学ができるはずである。

土楼巡りのバスは走らずと書いたのは、ツアーで団体用の観光バスのことではなくて、世界中の観光地でよく見かける、主要観光スポットを巡回し、1日券などで乗れるバスのことだが、今回はその手のバスは見当たらなかった。または、路線バスが頻繁に走っていて、それに乗り継ぎ 土楼巡りをして、簡単に帰って来れるのならそれでも良いが、そんな良いサービスはなかった。距離の関係などから今後も難しそうである。そこで考えたのがここで上げたスタイルである。




特集のページへ戻る