特集 福建省 客家土楼巡りのバスは走らず

第ニ部 名無しさん土楼を訪ねて

2008年6月


有名土楼については、インターネットで沢山検索できるので、ここでは無名土楼を中心に紹介したい。

インターネットを検索して見つかる旅行記の中の多くの土楼の写真も含めて、土楼の魅力をより感じることができるのは、私の調べた範囲では、今回泊まった土楼客桟のHPの中にある土楼MTVである。そちらも参考にして頂きたい。山奥の土楼客桟のHPにまでMTVが貼り付けられていて、中国の実力を感じずにはおれない。

有名土楼巡り

無名土楼だけ取り上げるわけにもいかないので、有名土楼の写真も最初に少し載せておく。

これやこの
田螺坑土楼(四菜一湯)

外側に円楼が4つで四菜。内側の方楼一つで一湯。スープを四角い皿に入れるのかと突っ込むのは野暮であろう。

近くから見ると こうなる。
 

内部もすべて入れるが、一つ一つは
かなり こじんまりとしている。

たにしとパソコンに打ち込めば、確かに田螺と変換してくれるが、田があるので、たぶん たにし だろうと思う程度で、普通は読めないだろう。と言いながら、実は自分の無知をさらけ出しているだけかもしれない。中国人は、何でも漢字で書くしかないので、難しくても この漢字を使うしか仕方がないのである。折角なので、近い生き物の漢字もパソコンで変換させてみた。蜆(しじみ)くらいは何とか分かっても、蝸牛(かたつむり)の漢字は、どこかで見たなくらいでマニアックな範疇だろう。川蜷/河貝子(かわにな)まで来ると、パソコンも変換してれないし、読めても勝手にしてくれという感じであろう。漢字に気を取られて、話がなかなか進まないが、こんな難しい漢字は使うなという思いから、話が脱線する気持ちも分かってもらえるはずだ。

とにかく、ここは美しいので、これから福建省の土楼が世界遺産に登録されれば、看板土楼として その写真が広く使われることになり、観光客が沢山来ることは間違いないだろう。

承啓楼(圓楼之王)

王様と呼ばれるだけあって、さすがに立派で見ごたえはあるが、欧米人が乗る観光バスなども沢山停まっていて、観光地である。

外側

内側

隣の土楼との境界
ここも、写真を撮るポイントに
なっているそうだ。

振成楼

こちらはプリンス。永定客家土楼民族文化村の中にあり、観光客向けに一番整備された円楼。中にお土産屋が多く便利だとも言えるが、観光客ずれして、やり過ぎだと思う人も少なくないだろう。

外側

内側

上部立ち入り禁止
通常の土楼は、上の階まで登っても問題ないが、ここは観光客が多いので、立ち入り禁止にしてある。

周囲の様子
綺麗に整備されている。

裕昌楼

ここは、古くて大きいのが売り。元代の1308年〜1338年に建てられたそうで、かなり老朽化が進んでいる。世界遺産に指定されれば、予算が付いて、修理されるだろうと思う一方、老朽化した土楼はあまりにも沢山あって、修理は無理だろうとも思ってしまう。

外側

内側

かなり壊れている。

内部には水が来ている。この水を沸かし、お茶をご馳走してもらった。

名無しさん土楼を訪ねて

有名土楼以外はすべて、無名土楼だが、無名選手と言っても、名無しさんではなくて 何か名前があるように、無名土楼でも、通常は 入り口の上に 何々楼と名前が書いてある。名無しさんと言っても、システムが勝手に名無しさんと書き込んだだけで、実は名前があるとも言えるが、ここでは、ほんとうに名前がないという意味での名無しさん土楼である。

壊れ土楼

民族文化村の中だが、かなり壊れているので、ここには名前は無いかと思って聞いてみたら、ツンツー楼という名前があるとのことだった。どんな漢字を書くのか聞かなかったが、漢字よりもカタカナで書いた方が楽しそうな名前だ。中にセメントの家も建ててあるので、セメント土楼というところか。

左の写真の右側、右の写真 奥の方の壁がかなり壊れている。

諦めずに次を探した。

名無しさん 切れ土楼 

民族文化村の内部で、奎聚楼の横にある土楼。かなり小さく名前は書かれていない。住民に聞いたら名前は没有(メイヨー)。周囲が一部切れて、切れ目はレンガの低い壁なっていて、完全な形ではない。

住民によれば名無しさん土楼

内部の様子
奥の方が切れていてレンガを
積んでいる。

隣にある奎聚楼
こちらは大きいので、実は、横は
奎聚支楼とでも呼ばれている?

名無しさん 切れ土楼 パート2

民族文化村の外側にあり、住民によれば、こちらも名前が没有。中は結構人が住んでいて、生活臭が漂っている。衛星放送を見ている家もあった。

入り口が切れていて、バイクでも簡単に中に入れる。 他にも、壁の無い部分がある。

内部の様子。

かなり壊れている部分もあるが、鉄筋が入っていそうな柱で補強してあった。

住人の言うことを信じて、名無しさん土楼を無事見つけたつもりである。ただ、日本の集合住宅でもコーポ何々、某々荘などと名前はあるので、名無しさん土楼では、住所を特定するのに不便なのではないかとも思えてくる。

無名土楼巡り

永定で現存する土楼の数は、方楼が約4000、円楼が約360と言われて、近接する地域にも沢山の土楼があり、一握りの有名土楼以外はすべて無名土楼である。今後無名土楼が頭角を現し、有名土楼の仲間入りを果たすことがあるとすれば、うまく改築して、快適なホテルに変わった場合か? 新たに21世紀生まれの土楼を作り、ショッピング・モールにでもなれば、それも有名土楼になるかもしれないが、無名土楼からの昇進ではない。現実的な話でもあるまい。

衍慶楼 @塔下村

衍(日本の読みでは、えん)は辞書によると、「余計な」という意味だそうで、慶の字が無ければ、取り壊してしまえとでも言われそうな、とんでもない名前の土楼になってしまう。衍には、「余る」「延び広がる」という意味もあって、慶もつけば、まともな名前ということになる。
小さくて、どこにでもありそうな、無名土楼の典型だろう。

裕徳楼 @塔下村

200年余り前に奥の方が火事で焼失してしまった傷だらけの土楼。

左側焼けた部分と、右側残った部分

餘和楼 @塔下村

村をうろうろしていたらここの前にさしかかり、「飯食ってけ」と言われた。流石にそれは遠慮したが、例によって、ここでもお茶の接待を受けた。オーナーの説明によれば、ここも泊まれるそうだ。客室を見せてもらったが綺麗に内装がされていた。

餘和楼

宿泊客用の部屋

如升楼 

ここは、民族文化村の中にあり、ガイドブックにも出てくるので、無名というのは言い過ぎだが、有名土楼とも言い難い。中堅土楼というところか。あまり格付けを気にすることもなかろう。こじんまりとしていい感じなのと、ここでもお茶を接待してもらったので、取り上げたくなった。

外側

内側

ここでもお茶を接待してもらった。


田螺(たにし)でも十分苦労したが、無名土楼では さらに難字が多い。テレビでたまたま漢字の読み方のクイズを見かけたので、ここでは少し悪ノリして、難字無名土楼の例をいくつか追加しておく。

倚南楼

浚源楼 @塔下村

椅子の椅は その昔は倚を使うこともあったそうだ。 みぞを浚(さら)う。パソコンでも簡単に変換する。単に自分の無知をさらけ出しただけのようだ。渫(さら)うの方がよく見かける気はする。ここも旅社だそうだ。


柎徳楼

柎は日本では使わないようだ。実は柎とは違う漢字なのかもしれない。建物も実は土楼ではなくて、ただの家とも言えそうだ。グレーゾーン多し。


土楼巡りにまつわる話を追加しておく。

お茶飲んでけ

土楼旅行記をいくつか読んで予習して行ったつもりだが、この話は出てこなくて、想定外であった。有名土楼を速足で回っていては言われないが、無名土楼をウロウロしていると、たびたび聞かれるのが、「お茶飲んでけ」というお誘いである。私もお茶は嫌いでないので、言われれば、各駅停車でお茶をよばれた。私の住んでいるフィリピンの人々は、Hospitalityを売りにしているが、こちらも同じように、やたらと親切にお茶を出してくれる。残念ながら、何も準備していなかったので、よばれた後に、そのまま謝謝と言って 帰ってきたが、できれば日本のお茶を持って行って、試飲、飲み比べをしてもらい、お茶菓子も持って行けば 良かったと思う。再度行く機会があれば、そうするつもりだ。
「飯食ってけ」と言われることも少なくない。日本人を嫌っているというような印象を受けることはさらさらない。

土楼に泥を塗る

土と泥、そして粘土にヘドロ。それぞれの境界が分かりにくい。土蔵には泥壁で、土楼にも泥を塗ろうとしているところを見かけた。しかし、泥のもとは土のようでもある。ドロっとしているから泥か? とにかく、証拠写真はあるので、土楼に泥を塗っているのは間違いないだろう。

土楼マージャン

土楼巡りをしていて、やたらと見かけるのが、マージャンである。土楼の住人が遊んでいるのだろうが、田舎なのでのんびりしているのだろうと思ってしまう。

ほどんど枯れたバナナ

この地で、気になったのが枯れかけのバナナである。 これまでバナナが生えているのを見るのはフィリピンだけだったので、寒さで枯れかけているようなものは、見たことがなかった。気温が下がって、写真のように 一部が枯れているバナナは、考えてみれば当たり前だが、私にとっては非常に新鮮だった。台湾バナナがフィリピンバナナより高い理由の一つかと思ったりもするが、別の理由の方が大きそうだ。この写真の後どうなるのか? それが非常に興味深い。毎週1枚 1年52週分の同じバナナの変遷を示した写真があったら見てみたいものだ。葉っぱがかなり枯れてしまった茎は、気温が上がれば、再度 青々とした葉を沢山つけて、その後、無事に実をつけるのかどうかということだ。

私は、あまり物を知らない方だが、先日 近所の女の子がバナナを採るのに、直径50cmほどの茎を根元近くから切り倒しているのを見て、随分大胆なことをするなと思った。茎は牛や豚が食べるので、そちらも兼ねているのだろうとも思ったが、後から聞いた話では、同じ茎からは 1度しか実ができないという事実があるそうだ。実を採った後の大きな茎をそのままにしておいては、その後茎が伸びてくるのを邪魔して、収穫に悪影響するそうだ。稲刈りと同じようなものとも言えそうだが、それよりもたちが悪い前任者ということになるのだろう。

葉っぱが半分枯れた茎は、次世代の邪魔しているだけにはならないのか。 そうではなくて、無事復活して実をつけている姿を見たいものだ。敗者復活バナナは、老化防止の妙薬?そんな妄想を抱く人が私以外にも居るかもしれない。




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