フィリピン特集

第ニ部 呪医が棲む シキホール島
Siquijor Island

2000年5月


シキホール島は、セブ島の南、ネグロス島のドゥマゲッティから東へ30kmほどのにある周囲100kmほどの島である。大きさは淡路島と小豆島の間くらい。大きくもなく小さくも無い島である。
フィリピン人の間では、シキホール島は黒魔術師(Black Magician)が棲む島として恐れらている。この島に近づきたがらない人も多い。しかし、実際この島に何度も行っているが、残念ながらまだ黒魔術師には、お目にかかっていない。代わって、呪医と呼ばれ、草木から作った薬を用いる土着の医者には会うことができた。
また、山下財宝(Yamasita Treasure)を追う Treasure Hunter にもたくさん出会った。土地の人は、日本人がデジカメをさげてビーチや野山をうろうろしていると、宝探しをしていると勘違いし易い。おまえは Treasure Hunter かとよく聞かれた。金属探知機を貸してくれとか、日本語で書かれた怪文書を、翻訳してくれとか言われることもある。

さて、この島の持つ変わった側面が先行してしまったが、シキホール島は、フィリピンの他の多くの島と同様、美しい自然を持つ環境の良い島である。セブ島などの大きな島と違い、青い海と白砂のビーチが多い。環境が良いので外国人も多く住んでいる。最近になって快適なビーチリゾートも増えた。宿泊費は、日本人が良く行くセブのマクタン島のビーチリゾートでは、相場が5000円から15000円程度であるのに対し、この島では1000円以下から。1500円以上だと、高くて泊まりたくないといった感じだ。2人なら1人当たりはこの半額で済む。また、スーパーキャットと呼ばれる高速の船も就航しており、他の島からの交通の便も悪くない。


呪医の素顔

シキホール島で呪医と言えば、フワン・ポンセ(Juan Ponce)氏が有名だ。実際には、フワン・ポンセ氏は2人いて、体の大きさから、それぞれ大小を付けて呼ばれている。彼らは、ハーバル(herval)と呼ばれる薬を用いて治療を行う。
この薬は、4月の聖週間(Holly Week)の間に作られ、飲んだり、患部に塗ったりして用いられる。小フワン・ポンセ氏宅で、薬を作る現場を見せてもらった。


まず、島の各所から必要な薬草を集めてくる。フワン・ポンセ氏は薬草とそれがある場所を良く把握している。
次に、採って来た薬草を適当な長さに切り刻む。(写真)


小フワン・ポンセ氏は写真の左側、縞のシャツと帽子姿の老人。
次に、中華鍋を大きくしたような専用の鍋に、切った薬草を加え、蒸し焼きにする。炎が出ては消し、ゆっくり時間をかけ真っ黒になるまで焼く。
こげた薬草を、臼と杵でこなごなに砕く。日本の臼と杵とは随分形が違うが、外国では良くありそうな形状である。
こなごなにした成分を、ふるいにかけ、粉だけを使う。
この後、聖週間の最後の日に、液体と混ぜて出来あがり。

この薬は、地元のプレイボーイ連中にも人気がある。自分を好きになって欲しいと思う人に、この薬をかけると、その通りになると、言われている。

別の機会に、大フワン・ポンセ氏にも会った。二人とも温厚な人柄である。

大フワン・ポンセ氏(右から2人目)と
その家族

一年に一度しか造らない大切な薬

ニッパ・ハット(Nipa Hut)と呼ばれる大フワン・ポンセ氏の家


島のようす

この島にディスニーランドのような観光施設は特に無い。あるのは、白砂のビーチと、ココナツ畑、それに人々の暮らしを支える小さな市場や役所、銀行といった施設があるのみである。スペイン統治時代からの歴史のある教会も数カ所にある。

島で一番人気があるサラグドーン・ビーチ(Salagdoong Beach)。水も綺麗だ。 ビーチリゾートがならぶサンドゥガン・ビーチ(Sandugan Beach)。コテージがカラフルだ。
無名のビーチ。水中は以前のダイナマイト漁法で、ほとんどお手付きだが、ビーチは手付かずのところも多い。 ラジ(Lazi)の教会。この島では最も歴史がある。どっしりとした構えの建物だ。

シキホール(Siqujor)の教会。船でシキホールに着くと
まずこの建物が目に飛び込んでくる。


島の生活

この島では、電気はほとんどの所に来ているが、電気代が払えないので、今だにランプ生活をしている家族も多い。また停電も少なくない。水道は大きな町とその周辺で、使われている程度である。食べ物は、魚や野菜などシキホールで採れたり、出来たものは安い。しかし、牛乳やお菓子など、他から持ってくるものは割り高だ。

ポリタンクでの給水生活

水瓶
大きな町やビーチリゾートなどは水道を使っているが、まだまだ、近くの給水所まで、水を汲みに行く生活をしているところが多い。地震直後の被災地のような気分になる。飲料水や炊事用の水は大きな水瓶を使って溜めておく。
野菜やフルーツは、日本の感覚からするとかなり安い。バナナやパパイヤ、ココナツは放っておいてもできるものなので、お金を出して買う気はあまりしない。手土産を持って知り合いの家に行くと、相手は金欠のため、何か買ってもてなすことができない。そこで、木に登ってココナツの実を採って来て、ココナツ・ジュース出してくれる。そんな具合である。

市場の様子
島では、何人かのおばさんが、自家製のパンを売っている。特に、ココナツ・パン1ペソ(約2.6円)が美味しい。
フィリピン人の生活の知恵 蟻返しを紹介しよう。蟻返しは、傘のような形をしていて、上から吊るして使う。円錐の部分に水を入れてあり、このため蟻はその下へは、やって来れない。そこで、甘い食べ物を、下に吊るして、保管しておくのである。蟻が多いフィリピンでは、生活必需品だ。

蟻返し
現地の住居はピンキリだが、最も簡単なものとして、右の写真のような仮設住宅がある。ミンダナオ島から宝探しにやってきた家族が建てたもので、テントでも建てるように1日でできてしまった。宝探しは1ヶ月もやれば十分なので、家も粗末なもので良いらしい。実際、2ヶ月後に、同じところに見に行ったら、見事家は壊れて、残骸だけが残っていた。宝物が見つかったかどうかは、わからない。

Treasure Hunter の仮設住宅


シキホール島の子供たち

この島の人々も、他の島同様フレンドリーで、子供たちも愛想が良く、元気で明るい。

@Sandugan, Larena

@Maite, San Juan

@Tongo, Siquijor

@Siquijor


島の交通

シキホール(Siquijor)港

ラレナ(Larena)港

シキホール島へ行くには、シキホール港かラレナ港に着く、高速艇に乗って行くのが便利だ。セブから船は出ているし、ドゥマゲッティからだと1時間もかからない。
シキホール島へ行く高速艇は、3種類ある。左のDELTA-1は、定員が100人弱で小型だが、ドッマゲッティとシキホールの間を1日3往復していて便利だ。
ジプニーは、フィリピンの陸上交通の代表選手。庶民の足なので、値段も安い。約80kmあるシキホール周回道路を一周しても、100円程度しかかからない。
この島のジプニーには大きく2種類ある。長距離を走る大きめで頑丈そうなジプニー(左上)と、主に短距離用で軽トラックを改造したもの(右上)である。
トライシクル(右)も、フィリピンではたくさん走っている。日本人には信じ難いが、この小さな乗り物に、9人乗せることもある。
ただのバイクタクシーも、現地では、ハバルハバルと呼ばれている。こちらも、何はばかることなく、4人乗りで走っていることが多く、最初はびっくりしてしまう。


旅の情報

さらに詳しい情報はこちら(Let's go Siquijor Island)




特集のページへ戻る