月家賃300ペソの借家

2007年4月


家賃300ペソの借家


シキホール島でお手ごろな値段の借家を見つけたので紹介する。と言っても、既に入居者がいるし、これを借りるようお奨めしようとしているわけではない。単なる参考情報である。

電気や水道料金は、従量制で別途支払わなくてはいけないが、家賃は月300ペソ(1ペソ=約2.5円、2007年4月現在)と、格安だ。現地の人にとってみれば、この程度の値段なら借家に入ってもよいが、それ以上ならば、自分で ”あばら家++” を建てて、住んだ方がよいと考えそうだ。

私の撮った上手でないこの写真では、外国人にはあばら家に見えてしまいそうだが、何度もこの家を訪問している私に言わせると、そんなに悪くはない。見かけに比べてかなり良い。中は十分広く感じるように造ってあるし、何と言っても、周囲を自然に包まれ、50m前は海岸である。 自分の家を建てるため、しばらく、仮住まいにする場所が必要なら、この半分の広さもあるかないかで、50倍ほども料金がかかる、外国人向けのビーチリゾートのコテージを月ぎめで借りるよりも、私ならば こちらで満足してしまう。

これをネタに少し考察してみた。

カムフラージュ作戦

外はボロボロ、中はピカピカ。これが、外国人の家のセキュリティー・レベルを上げる一つの方法であると提案したい。もちろん、豪邸を建てて、完璧な塀で囲い、内部に犬を放し飼いにしておけば、普通の泥棒に入られることはないだろうが、周りに貧乏な人たちが住んでいるフィリピンの田舎では、近所とうまくやっていけるか、疑問がある。日本のどこかの地域に、中国人の大金持ちが、集団でやって来て、数十億円の豪邸をいくつも建てて、ロールスロイスを乗り回していたら、近所の日本人とうまくやっていけるか?よほど人の良い中国人ならいいが、言葉も通じにくいだろうし、いろいろ難しそうだ。フィリピンの田舎に、外国人が普通に家を建てると、似たような状況になる可能性が少なくない。現地の貧しい人々が家を建てるのに使える予算は高々10万円程度である。外国人の建てる数百万円、数千万円の家は、物価の安い現地では、正真正銘の豪邸だ。

中をピカピカにするためには、内装が必要だが、借家なので、簡単に取り外しができ、別のところに移せるパネルのような内壁ができれば良さそうだ。壁の代わりに大きな布を加工したものも使えそうで、簡単に他へ持って行ける。カーテンや敷物は当然再利用できるし、竹製の椅子やベッドなど 家具類も簡単に他に持って行ける。

アップグレード作戦

さすがに このレベルの家に何年も住んでいるのは、大変かもしれない。そこで、自宅を建てたいわけだが、次のステップとしては、別途事例を紹介しているように簡単に建てられるニッパ・ハットをお勧めしたい。そんなものには、とても住んでられないというような人は、そもそも、「フィリピンへ行こう」の読者として、想定していないので、「フィリピンへ行って、贅沢三昧しよう(仮称)」というような、HPを探して、そちらの読者になって頂きたい。そうは言っても、お金持ちを読者として敬遠しているわけではない。何度も繰り返しになるが、「フィリピンへ行こう」は、フィリピンでぼられたり、騙されたりせず、できるだけ無駄な出費を抑える方法を紹介し、それを参考にして、節約できた資金の一部を、現地の貧しい人の役に立つ何かに 使って欲しいと思って、いろいろ書いている。それが目的の一部分である。そのような話に全面的に最初から賛同して頂ける人は、多くは無さそうだが、この話に乗れば、土地を安く調達できる可能性が増えるとか、近所から歓迎されるとか、自分のメリットになることもいろいろ紹介している。それによって、少しでも賛同者が増えることを期待している次第である。

話が本題から逸れているが、是非この趣旨をご理解願いたい。

ニッパ・ハットは、最初の借家で揃えた建具、家具などがうまく再利用できるように設計するのは言うまでもない。自分の住みたい家になるよう設計するのであるから、こちらはかなり長く住んでいても、問題ないはずだ。

ここに住んで、最終段階へのアップグレードとして、永住にもふさわしいような場所を、たっぷり時間をかけて探し、そこに家を建てるという段取りである。とにかく、フィリピンの田舎では、土地探しでの即断即決は非常に危険である。不動産エージェントにぼったくられて、今度は、それを何も知らない別の外国人にさらに高く転売しようという状況が広がると、現地で普通レベルの収入しかないフィリピン人には、とても買えない価格になるだけでなく、後から来た外国人にとっても、お金持ちしか土地が入手できなくなってしまう。


ここで取り上げたP300の借家は、私にとってはこれで十分だが、一般的には、現地の貧しい人の生活ぶりを体験したいマニアックな人に相応しい家と言えそうだ。シキホール島の事例なら、月P3000ほどの家賃で、日本の3LDKのマンションに近い広さのアパートがあり、十分綺麗で、普通の外国人なら、その程度のところに入ることから始めた方が良さそうだ。その場合には、ニッパハットではダウングレードになってしまうので、上記の第二段階は必要ないだろう。

余談かもしれないが、もう一つ補足しておく。

以前 私のところに長期で滞在された大金持ちの日本人の老人は、私のところを出て行かれた後、近所で このP300ペソの借家よりもさらに値段が安そうな家に下宿されていた。そして、6ペソのおかずを買って食べておられた。水も十分でない地域なので、「費用は何百倍かかかるが、近くに日本人が建てたコテージがあるので、そちらに移られた方が快適で良いのではないか。」と提案したが、あっさり却下された。ハワイに行く予算が500万円で、ワイキキのような安っぽいところには泊まらないと豪語されていた方なので、毎日、体を洗う水にも苦労するような場所では、大金持ちには相応しくないと思った次第である。この老人の話を別の人にしてみたら、ほんとうは金持ちではないのではないかと疑われてしまったが、私の家に滞在されていた1ヶ月以上の間に、その老人から いろいろな話を聞いたので、間違いなく大金持ちであることは私が保証する。

この方を見ていて、どのような状況でも暮らしていけるから お金が貯まるのだろうと思ったとともに、物質的なこと以外で、お金を払っても得られないが、お金を払わなくても得られるものがあると強く感じた。その老人は、近所の3歳の子供の手を引っ張って、いつも楽しそうに歩いておられた。孫とおじいさんの関係と同じである。周囲のそのままの自然環境、特に夕日の美しさにも 深く感銘されていた。
残念ながら、買っておいた七面鳥が、日本に帰っている間に食われてしまったとか、貸してあげたお金が返ってこないとか、フィリピンで起こる日常茶飯の事柄に滅入ってしまわれたようで、しばらくして こちらには来られなくなってしまった。そういった不愉快なことが起こらないよう 私が前もってお膳立てすれば、全く問題ないのだが、「日本人が建てた高級ビーチリゾートに移られた方がよいのではないか。」と私が提案したことに憤慨されて、そのまま私の家を出て行かれたので、その後私が手助けすることはできなかった。私の家から追い出そうとしていると 勘違いされたのである。

安かろう悪かろうではなくて、安くても、現地の人の生活に溶け込むことで、得られることがあるということである。しかし、それには さらにノウハウが必要となる。


ホームページへ戻る