リゾート客引きドライバーのバックマージン

2010年8月作成



英語ではバックマージン(Back margin)とは言わないようだが、日本語では通じやすいので この言葉を使う。

フィリピンの旅のメインは何と言ってもアイランドホッピングであろう。実際には、特に日本人男性に取っては、フィリピン=アンヘレスという場合の方がはるかに多そうだ。アンヘレスのことを書かないフィリピン関連のブログやHPは、存在するのも難しいと言っても過言ではなかろう。以前に来られた方からも、「どうしてアンヘレスへ行かないのか?」と、叱られたわけではないが追求され、「別に行かない人がいてもいいでしょう。」と当たり障りなく答えておいた。セックス・インダストリーなくして、この国は立ち行かないだろうとは思っているので、他人のすることに つべこべ口出しするつもりはない。

またまた余談が過ぎたが、真のメインはさて置き、表面上のメインであろうアイランドホッピングで、歩いて回れるような小さな島なら良いが、それ以外で、大抵うっとうしいのが、港で群がってくる客引きドライバーである。港のドライバーはボッタクリが多いで困ったものだが、さらに、バックマージンをもらおうと、特定のリゾートに連れて行こうとすることも少なくない。 以前なら、一泊数百ペソのコテージがどこへ行っても沢山存在したので、宿側がバックマージンが払うにしても、たかがしれていたはずだ。例えば、10年ほど前に何度も行ったバンタヤン島では、サイドカー付きの自転車で、いろいろ回って、良さそうな宿に決めることもあったが、コテージが数百ペソだったから、乗り物に100ペソも払うことは無い。同様にして、宿代が数百ペソでは、宿がドライバーにバックマージンを払ったとしてもせいぜい50ペソ程度であろう。
先日行ったプエルトガレラで、庶民的な価格のコテージに行ったが、いいところなので もっと客を増やすために、いろいろ手を打ってはどうかと提案したが、トライシクルのドライバーが連れてきたら少しお礼にお金を払っておけば十分だということであった。客は多くないが、食べていければ十分という感じで、あくせく働こうという感じではなかった。いずれにせよ、客を連れてきたドライバーには、バックマージンを払っているわけだが、宿代が1000ペソ程度なので、バックマージンが数百ペソになることはない。

これに対して、シキホール島では、宿代が高騰ぎみである。その大きな理由は地価にある。外国人が土地を高く売りつけられ、その連鎖で、地主は やたらと高い値段をつけたがる。近所でも、3万ペソで買った土地を500万ペソで売ろうとしている例がある。土地が数十万円なら、一泊千円以下のコテージを始めることは十分可能だろうが、土地が数百万円になれば、割り算して、何人泊めれば元が取れるか計算すれば、千円以下は苦しいのが容易に分かる。数千万円になれば、安宿ができないのは検討の余地もなかろう。オーナーの立場からは、宿代が高いほうが儲かるということでもあろうが、とにかく、安宿より高宿を始めようとする傾向にある。すると、今までお手ごろ価格だったところも便乗値上げを始める。

比較のため、先日行ったベトナムの高原の町ダラットの例では、私は身なりから貧乏そうに思われたのか、客引きに連れられ5ドルの部屋に泊まれと言われた。それでも十分な部屋だったが、私は、2、3日高原でダラダラするつもりだったので、かなり広い6ドルの部屋にしてもらった。部屋は十分綺麗で、Wi-Fiも無料。温水もたっぷり出て、高原なので冷房も不要である。対するシキホール島では、ドミトリーでもこれ以上の値段のところがあったりして、とても、シキホールへ行こうとは言い辛い状況である。こうなったら、私のところの無料コテージに泊まってもらうしかないとも思えてくる。

話が長いが、このように宿代が値上がりして、今では一泊数千ペソのところもかなり登場しているが、そうなると、本題のドライバーのバックマージンも当然のようにつり上がる。宿代が数千ペソなら、バックマージンは数百ペソになる勢いである。その結果、港には、やたらとドライバーがたむろして、バックマージンの高い宿に誘導しようとする。以前に比べて、港では、ドライバーがかなり増えた。私の知り合いの元大工で、今も一応大工も、増えたドライバーの一人で、2年ほど前からハバルハバル(バイクタクシー)の運転手をしている。彼は腕の良い大工だったが、250ペソ程度である大工の日当が、客を連れて行くだけでもらえるバックマージンと同じ程度では、馬鹿馬鹿しくて大工などしたくなくなる気持ちは容易に理解できる。しかしながら、腕の良い大工かこんな形でやめてしまうのは、社会の損失だと私などは思ってしまう。

もう一人知っている運転手は、トラブルを起こしてしまい、噂のタネになった。最近こちらのHPでも紹介したが、日本人が山の上に家を建てた。その日本人が、シキホール島で最初に知り合ったのがこのドライバーの家族で、仲良くなったが、家はあばら家で、まともにトイレもないので、トイレを建てるお金をその日本人が支援してあげた。ところがよくある話で、この男はそのお金を使い込んでしまいトイレは作らなかった。この家族は子供が沢山いて、その多くが学校に通っているので、この日本人からいろいろ支援してもらえれば、素晴らしいと思い、当初三千ペソと聞いていたので、それぐらいなら私の方から貸すか、あげるかしても良いとも思った。トイレができてその日本人の信頼を得ておいた良いということである。ところが、実際には金額が違って1万3千ペソであった。そんなに沢山私も払いたくないし、現地の相場で、それだけ使い込むようでは どうしようもないと判断した。その日本人からも見放されたのは当然である。以前書いたように家が建ったが、場所は その近所の別の知り合いの家の横である。こちらは、この胡散臭いドライバーとは違って、信用できる人たちで、土地も無料で提供してくれた。日本人が亡くなったら、家は この家族にあげてしまうという話になるのは ごく普通の成り行きであろう。怪しいドライバーは、目先の利益に眼がくらみ、今後長期に渡り得するであろう大きな機会を逃し、イソップ物語のようなことをやってしまった。それが島の噂になった。私の家から20kmは離れたところで起こったことだが、私の近所の人から噂を聞き、フィリピン人は噂好きというのが良くわかった。

港にたむろしているドライバーは、観光客相手が多く、高くふっかけてくるので、私は普通は利用しない。港のドライバーというだけで、胡散臭いと言ってもよいような状況である。このドライバーが港の他のドライバーと同様、あぶく銭同然のバックマージンにありつこうとしているのと、噂になった使い込みには、それなりの関係があると私には思える。


宿の利用者の立場からは、バックマージンを宿がドライバーに裏で払っていては、回り回って利用者に負担が転嫁されると思えるので、やめてもらいたいのは当然である。それなら、直接宿に行ったらどうなるかということだが、宿の方が、「バックマージンを払わなくて済んだのでまけてあげましょう。」と、正直にいうのも変だし、同じように、まけてくれというのも、やはり変であろう。

これに対して、旅先で不慣れでもドライバーが適当な宿に連れて行ってくれるというメリットもある。ただし、バックマージンを沢山払ってくれる高い宿に誘導したがる可能性があり、安宿派には、うれしくないことだろう。

考えてみると、これは、ハノイ空港に到着時のタクシーのトラブルで、ガイドブックやインターネットに いろいろ書かれているのと状況がそっくりである。ドライバーが、特定のホテルに強引に連れて行こうとするので、いかにそこに泊まらないか、そのノウハウを旅行者がいろいろ説明している。ハノイに限らず他でもある話であろう。


宿のオーナーの立場から言っても、当然バックマージンなど払いたくないだろう。とは言っても、他の宿より自分の宿に沢山客を連れてきてくれるなら、沢山払っても得するので払いたいとも思いそうだ。

シキホール島で、バックパッカーに人気のあるKiwiという宿では、旅行者用の注意事項に、港のドライバーはボルので、そこからは乗らずに、少し歩いて、通常 乗り物の起点となっている市場から乗るように勧めている。ただ、宿に着いてからしか読めないので この注意事項は 間に合っていないという話もある。いずれにせよ、ここのオーナーは、バックマージンなど払わないのだろう。ドライバーが客としてやって来て この注意書きを読んだらまずいことになりそうだが、誰でも読めるところに置いてあるので、既にまずいことになっていて、港のドライバー連から干されているのかもしれない。


客を連れてきてくれれば、オーナーは、ドライバーへのお礼として少しぐらい払ってあげたら良いだろうとは思う。しかし、フィリピンの相場で高額のバックマージンが裏で支払われているのは、利用者側、宿側とも面白くないことだろう。対策は、宿のオーナーが支払わなければ、済むだけの話だとも思える。しかし、利益誘導で支払ってしまうオーナーが出てきそうだ。以前 日本人宿に話に行ったら、市役所から落成検査に来たので、賄賂を払ったと自慢げとも言えるような口調でオーナーが言っていた。フィリピンなので、正義感だけでは済ませられないという問題はあるが、その人は、従業員の勧めに従い、なんら躊躇うことなく支払ってしまった。
「あなたがそんな いとも容易く、要求されてもいない賄賂を払うので、今後他の人まで賄賂を払う羽目になり、フィリピンがどんどん悪くなるので止めてくれ。」とそう言いたくなったが、そんな言葉が通用するような人ではないので、呆れて退散した。その前にも、悪党の脅迫に屈して、大金を支払うというので、「そんなことをしたら、テロリストに寄付するのと同じようなもので、そのお金を元手に また悪事を働くので止めてくれ。」とお願いしたが、自分の利益を優先して受け入れてもらえなかった。フィリピンなので、支払わざるを得ない裏金的なものが出てくるかもしれないが、そうではない場合も多いはずだ。


問題提起だけで、解答のない話になってしまったが、宿の利用者、オーナーとも、何かを考えるきっかけになれば幸いである。



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