Purokをつくる  

2001年2月作成
2013年10月最終更新


更新履歴
2001年2月 「Purokをつくる」を公開
2012年3月 「Purokの再建」を追加
2013年10月 費用のテーブルに最新見積もりを追加
        プロックづくりのメリットまとめを追加 

(→2013年10月更新 プロックづくりのメリットまとめ)

シキホール島のトンゴ(Tongo)村につくった日よけのシェルター。
通常、プロック(Purok)と呼ばれる。この後ペンキを塗る予定。

Purokと呼ばれる日よけのシェルターはフィリピンの随所に見られる。住民が暑さをしのぎ、おしゃべりをする憩いの場である。(正確に言うと、日本の町の中の組に相当するのが、バランガイの中のPurokだが、それよりも、この手の建物をPurokと呼んでいる方がよく聞かれる。)

いつも良く行くTongo村の知人の家の近くにはたまたま良いシェルターがないので、今回、材料費だけ私の方から寄付することにして、近所の人々が利用でき、自分も使えるPurokをつくった。
昨年の7月と10月に近所の子供が亡くなったので、その二人に因んで、近所の住民により”Rodel and Rosa Linda Park"と名付けられた。できたPurokは、海沿いにあり、涼風が吹き、非常に快適なものになった。

しかしなから、つくる上では課題が続出した。今回は練習の意味もあり、わざと失敗するのも目的の一つだったので、そういう意味ではうまくいった。今回得られた、建築途中での課題は、以下のようなものが挙げられる。

・この手のプロジェクトでは、住民の費用負担がないと、予定していた額に比べ、どんどん出費が膨らむ。他人が払ってくれるなら、できるだけ立派で大きなもの、そして高い材料を求めるようになる。住民に費用の5〜10%でも自腹で負担してもらうことにすれば、実際にかかる費用は、半分程度にできるのではないかと感じた。(これは、経験の少ない当時の印象である。今なら、近所の人に中古の建材を探してきてもらうとか、ニッパは、材料だけ買ってきて、近所の人に作ってもらうとか、いろいろ安く上げるアイデアが浮かぶ。一方、当時は何も知らない中、建材を高めに買うことにはなったが、2倍にふっかけられたという程のことはない。 2013年10月補足)
・大工は、いろいろなレベルの人がいるので、必要ならフォローしないといけない。今回雇った大工は、熱心に働き、手先も器用であったが、寸法の計算を間違う場合があった。

作業経過

日時

主な進捗
12/26/00 主要な材料を購入
12/27 棟上げ。大工1名および近所の人々多数の参加で、主要な枠組みが出来あがった。
12/28 後から追加で発注したベンチ用の角材の到着待ち、および、竹の購入のため、作業は中止。竹の購入に出掛けるが、運転手が不在のため買い出しは翌日に延期。
12/29 竹の調達は、同行の村人の気が変わった結果、半日遅れてになったが、無事大きな竹を8本入手。トラックをチャーターすることになり、沢山の竹を運んだところ、大半は同行人が建設中の家の方へ。そして、輸送費の請求書は、単独こちらへ。いかにもフィリピンで起こりがちなことだ。
大工は、他の家の建築作業の取りかかりだし、作業は進まず。
12/30-1/2 大工を、他の家の建築作業に取られて、こちらの作業は進まず。
1/3/01 打ち合わせも何もできていないのだが、突然、大工がやって来て、作業を始め、屋根が取り付けられた。
1/4/01 またまた、大工が他の家で働き出したのか、こちらの作業は中止。
1/5,6 地面をセメントで固める。
1/7,8 ベンチをつくる。
1/9,10,11 大工に他の用事ができ、作業は中断。
1/12 隣人の親戚で、フェスタにやって来た人たちにより、ベンチが完成。
1/13 同様にして、机が完成。

材料及び人件費

2001年実績

2013年再見積もり

品名

数量

単価

金額

販売店

備考
品名 数量 単価 金額

sak sak

150枚

P12.50

P1875
P. de la Pena Sari-sari store, Siquijor

藁葺きの材料
通常はP12
nipa 100枚 P15 P1500

材木

50本

P8/vol

P2734
Wheding Paghacian Coco Lumber, Olo Siquijor

ココナツの木
通常はP6〜7
材木 40本 P15/vol 約P4000

セメント

3袋

P131

P393
Rudy Store, Public Market, Siquijor

通常はP120
セメント 3袋 約P230 約P690

くぎ
4インチ
3インチ
2.5インチ
1.5インチ


1kg
2kg
3kg
1.5kg


P20/kg
P25/kg
P27/kg
P34/kg

P202
Siquijor

-
くぎ
4インチ
3インチ
2.5インチ
1.5インチ

1kg
2kg
3kg
1.5kg
約P45/lg 約P340

合板 plywood

1枚

P295

P295
Siquijor 日本のベニヤ板より大きめ - - - -

ペンキ 水色

1L

P82.5/kg

P82.5
Siquijor

-
ペンキ 水色 1L 約P140 約P140

ペンキ 水色

1L

P68.5/kg

P68.5
MORIAH ENTEPRISES,
25 V. Locsin St., Dgte
Dumagueteでは高めの店 ペンキ 水色 1L 約P120 約P120

1インチはけ

1本

P10

P10
Siquijor

-
1インチはけ 1本 約P20 約P20

1.5インチはけ

1本

P18.95

P18.95
MORIAH ENTEPRISES

-
1.5インチはけ 1本 約P25 約P25

輸送費

1往復

P200

P200
トラック業者 竹調達 輸送費 1往復 約P500 約P500

交通費

-

P100

P100
トライシクル 材料調達 交通費 - 約P200 約P200

人件費

6人日

P150

P900
大工

-
人件費 6人日 P250 P1500
合計 - - P6878.95 - - - - - 約P9035

[ 補足説明 ]

萱葺きの屋根
屋根の材料の種類にはバナナの葉, nipa, sak sakの3種類ある。値段はnipaでP8、sak sakがP12と言われているが、今回は少し高かった。バナナの葉を使う場合は自作が基本。値段が高い方が当然耐用年数も増す。
屋根の材料は長さ約2m、幅約40cmの長方形に編み上げられており、それを並べて使う。密に並べると雨漏りのしなくなり、耐用年数も増す。しかし、当然より多くの数が必要になる。

材木 Coco Lumber
材木の購入単位はボルビックと呼ばれ、1フィートx1フィートx1インチの体積である。
今回購入した店は、配達が無料であるが、値段が単位当たりP8と、他に比べかなり高い。インターネットに店の名前と値段を載せるが大丈夫かと聞いたのだが、OKと店の主は答えていた。このままだと、高いのでここの店では買うなということにしかならない。



[ 参考 ] 不愉快な出来事


(以下、2012年3月更新)

Purokの再建

建て直しが済んだPurok

  

このプロックは約10年、村の人たちに重宝がられ 十分役に立ってきたと言えるが、2010年の暮れに強風が吹いて倒壊してしまった。その後、すぐに修理したかったが、他の用事もあって なかなか思うように進められず、そのまま1年が経過してしまった。なんとかしようと、簡単にできる材木の発注だけは先に済ませ、材木は保管しておいたが、作業に取りかかれず時間が経過してしまった。放ったらかしなので、元の木や屋根の材料は、ゴミだと思われたのだろうが、綺麗さっぱり無くなっていた。薪に使われたということで、フィリピンなのでそんなものだろう。材料が残っていないので、今回は 一から建て直して、何とか再建を果たした。

今後は、以前のように現地の人の憩いの場として、有効に活用されるはずだ。

詳細なデータは省略させてもらうが、10年余り経過して、インフレで 人件費や材料費等は、1.5倍程度に上がっている。

ここで この話題を取り上げているのは、これと同様にして、この手の建物を 公共の利用を目的に建てようとする人が現れることを期待しているからで、その方の参考にしてもらおうと思ってのことである。今回も、いろいろと紆余曲折があり、綺麗ごとでは済まないことも出てきた。課題と対策を以下にまとめておく。


壊れた原因と対策

幾ら対策しても、それ以上の強風が吹いたら壊れてしまうとも言えるが、今回の倒壊では三つの原因が考えられ、それぞれ対策を考えた。

斜めにかかる力

荷造りしたダンボール箱の形が壊れるかどうかというのと同じようなもので、ぐしゃっと押しつぶす力への補強が重要であろう。前回はそれが不足していたので、今回はできる限り補強した。

柱の基礎

前回は、柱の基礎の部分がいい加減であったので、地面から水分を吸い上げ、木の柱の底が腐って 歯槽膿漏のようにポキッと倒れたと言って良さそうだ。今回は木の柱の底をセメントで十分持ち上げたので長持ちするはずだ。

さらに言えば、柱は全部鉄筋を入れたセメントにするのが一番お勧めだ。

茅葺の数とカバー

他でも紹介しているように、茅葺を十分な数使い、十分な厚みを持たせれば 長持ちさせ易い。
前回は、サクサクという茅葺の材料を150枚買って、十分な数あるはずだったが、大工が102枚しか使わなかった。現地の人の標準的なピッチで、茅葺を取り付けたらそうなったとも言える。こちらは、短いピッチで取り付けて長持ちさせようという魂胆だったが、そんな希望を大工は聞いてくれなかった。割り算が分かっていれば、もう少し融通が利くのだが、小学校も行っていない大工が多い中、木を切ったり、釘を打ったり、ブロックを積んだりするのは早くても、計算が絡むようなことは、簡単にはできない。その結果サクサクが大量に余ってしまった。余りは、その後の保守用に この場所の地主の一人で、すぐ横に住んでいる人に預けておいたが、いかにもフィリピン的に、まんまと使い込まれてしまった。これ幸いと 自分の家の拡張に使ってしまったのである。

そんな経緯があったので、茅葺のメンテが必要になっても、新たに買って修理する気分にならない。そのまま放ったらかしにしておいた。すると、あちこち穴が開きだし、雨漏れでその下の木が影響を受けだした。

これが一番大きな原因だと思っているが、放ったらかしにして、十分見ていないので定かでない。

とにかく、今回は十分な茅葺を使うとともに、さらに茅葺の上にカバーをして、風で茅葺が壊れるのをできるかぎり防ごうという作戦である。さらには、実験的に 屋根の片側はネットを使い、もう一方は、竹でつくった縦横の格子を置いた。後者は目が粗いので、風で少し茅葺がダメージを受けそうだが、とにかく、比較してみて、どちらが長持ちするか調べるのが目的である。

ネットが何年で破れるか、竹も釘で打ちつけているだけなので、釘が錆びて何年でバラバラになるか、保守の項目は多いが、とにかく、問題が起こったらすぐ対応しないと 長持ちさせにくいのは間違いない。

茅葺補強のためのネット

竹のメッシュ

作業の遅れ

大工を二人雇って、私も手伝ったが、1週間ほどかかってしまった。

時間がかかった理由のうち二つを紹介しておく。

一つ目は、これを作るには、地上で鳥居を二つ作ってから、立てて横に木をつなげば簡単に出来上がる。しかし、初日のその作業の時に、他に用事があり、私はドゥマゲッティに出かけて大工の二人に任せておいたら、普通に家を建てるように、時間のかかる工法にされてしまった。まずは、柱を4本立てて、順番に木を切り、材木を打ち付けていく。普通に家を建てるのと同じ工法だが、空中戦なので結構時間がかかる。結局一日出かけていた分で、希望と違う作り方をされて、約1日余計に時間がかかった。

二鳥居作戦の場合にも、いろいろとアレンジができるが、水平の取れた柱の基礎が4つ、あらかじめ準備されていると便利だ。今回は前回の分が残っていたのでそれを使った。それがない場合、いきなり土の地面に柱を立てたのではすぐに腐ってくるので、日本の昔の民家のように、大きな石(岩)を礎石にして、その上に柱を建てるのがお勧めだ。後から、柱と礎石そして地面をセメントで固めてしまえば良い。ただし、よく分からない場合には、基礎工事に一日費やした方が安心だ。

二つ目は背もたれの竹のデザインだ。竹の上側を、三角と楕円に切ったデザインにしているが、それを切るのに 二辺で半日かかってくれた。簡単にパターンが書ければ良いが、大工の見習いはそれができずに、悩んだ挙句の諸行である。切る方はすぐに終わる。
大工は、仕事が延々と続けば、毎日日当がもらえて、生活が保障されるので、効率的な仕事のやり方を好まないと言える。日当で払う場合の弊害である。
かと言って、Job発注するにも、工数の見積もりが簡単ではない。この程度なら簡単だとも言えるが、例えば、今回は屋根の茅葺が長持ちするように、上にネットを張ったりした。容易に想像できるように、ネットを下から上に引っ張ると、魚が網に引っかかるように、もしくは逆まつ毛のようになって、茅葺がネットに引っかかる。この手のトラブルはすぐ起こる。最初から「こうして、こうして、こうするの」と言って、大工に説明しても、その通りにしてくれるとは限らず、途中で発生するトラブルに合わせて、解決策をすぐに指示しないと、ずるずると何度もやり直しをして、時間がかかる可能性がある。人数によって、やり方を変える必要もある。

普通に建てるだけなら、標準的に進められるが、屋根にネットを張るだけで 特殊な話になってしまう。

盗難対策

残念ながら、近くでコソ泥が少なくない。私の家の前にあるプロックでもテーブルを盗まれたところだ。間抜けな泥棒が少なくないので、簡単にバレて、捕まる場合が多く、それらをGoogle earthにマークを付けていったら、近所だけで8軒あった。それでも、私の見積もりでは精々 1〜2パーセントだと思う。一部の悪者があちこち出掛けて行っては盗むので、少なからぬ被害が出るが、大多数の人は善良で、私と同様 泥棒に憤慨している。泥棒のためではなく、善良な人々のために、このようなプロックを作って支援活動の一つにしている。

今回は泥棒対策で、机はかなり大きくして、持ち運びを不便にし、ジョークも含め、さらに、流木の丸太を机の下に釘で打ちつけて、お持ち帰りしにくくしてやった。

ぶざまに丸太が打ち付けられた机
まだ、ペンキを塗っている途中


壊れてしまったり、盗まれたり、あまり明るい話ではないが、放ったらかしにしておいても、10年使えたし、そんなに悪い実績ではなかったとも言える。今回は、さらにいろいろ対策したので、20年選手を目指したいものだ。

公共で使うものを作っているので、泥棒対策に頑丈な塀で囲んで、中に番犬を放し飼いするようなこともできない。悪いのは一部の住民だけで、ほとんどは善良な人たちだが、ある程度の問題が起こるのは仕方ない。

とにかく、多くの人に利用される建物が再建できて良かった。


(以下、2013年10月更新)

Purokづくりのメリット


建てたPurokが10年余りにわたり 役に立ってきた実績を踏まえ、他でも試してもらったらどうかと再度提案する意味合いも含め、Purokをつくるメリットをまとめてみた。

大工を雇って仕事をさせる練習に最適

フィリピンの現地の人が家を建てる場合、日本のように、業者に発注して、全部任せてしまうようなやり方をする人は少ない。それでは、何倍も高く費用がかかることが多いからだ。図面と材料のリストを誰かに作ってもらい、自分で財布を握り、材料を買いに行き、大工を手配し、大工の作業を見張る。(工数管理)これがよくあるパターンで、任せっきりではうまく行きにくい。
コテージや家を建てたいと思っている場合、いきなり、本番の自宅の建築から始めると、どこに材料を買いに行けばよいのか、相場は幾らぐらいなのか、大工はどこで見つけてきたら良いのか等、よくわからないことが多い。騙される可能性が十分にあるお国柄なので、高いお勉強代を払うのを避けるため、まずは、最初に試しに作ってみるのにお勧めなのがこのPurokである。図面などはなくても大工は勝手に作り出すかもしれないが、自分でどんな形状のものが作りたいのか、簡単にスケッチを描いたりできるはずだ。

以前からあるPurokをしばらく眺めれば、材木がどれだけ必要かとか、どのような材料がいるのか、容易に分かるはずだ。

現地の人と仲良くなれる

ここでは、現地の人々が利用できる公共のPurokを作っていて、その手の話にはあまり興味がない人もいるかもしれない。閉鎖された自分の敷地内に、自分用で同じように建てることもできるが、ここでは、皆で使える建物にこだわりたい。
このPurokは十年余りにわたり、多くの人に使われてきたので、十分元は取れたと言える。現地の人々も自分も使えて、有効活用できて良かったということだ。

そんなことをして、自分には何の利益になるのかという反論も出そうなので、少し打算的な一つの考え方を説明すると以下の通りだ。

現地の人の憩いの場を作ってあげれば、人々から喜ばれることは間違いない。そうやって公共の役に立つことをすれば、悪い人とは思われず、現地の人々とも容易に仲良くなれ、外国人でもボッタクリの対象になることは少なくなるはずだ。その近くで土地を探して家を建てて住みたいという場合にも、いろいろと手助けが期待でき、話が前に進み易いと思われる。それ以外にも、現地に住んだら いろいろと手助けしてもらえそうだ。少し打算的にも思えるが、通常のgive and takeの範囲内の考え方であろう。

ビーチで涼む場所として最適

熱帯のフィリピンでは、特に4月、5月は、町中に滞在していると暑くて熱中症に近いような状態になることもあろう。エアコンが効いている部屋に居れば問題ないが、ずっと部屋の中に居るものイマイチで、それよりも、海が近くならビーチで涼むのがお勧めだ。海沿いでは涼しい風が吹く7ことが多いので、風があれば、海沿いのPurokに居れば、暑いフィリピンでも快適に過ごせる。 私の場合もフィリピンに来た当初は、暑くて調子が悪い時もあった。そういう時には、海沿いのPurokに出掛けたものだ。熱っぽい時には、そこで、しばらく寝転んでいたこともある。

風は、フィリピンでは、海陸風よりも季節風なので、季節により行く場所を変えればさらに効果的ということになる。開けた場所で、どちらからでも風が吹き抜けるようなところなら、季節も関係ない。


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