ダイナマイト漁法は日本軍の置きみやげ?

2000年7月


第二次大戦中のシキホール島の様子について、話を伺ったヒバロさん(Mr. Hibbarod Flora)から、ダイナマイト漁法(Dynamite Fishing)についても伺った。

1944年、マッカーサーがレイテ島に上陸して日本軍がこの島から逃げて行った後、たくさんのダイナマイトが、弾薬庫の中に置き去りにされた。ヒバロさんを含めた島民たちは、持てるだけのダイナマイトを家に持って帰ったそうだ。

問題のダイナマイト漁法は、戦後すぐ始まった。少なくとも、シキホール島では、日本軍が置き去りにしたダイナマイトが、この漁法の引き金になったことは、間違いない。

ダイナマイト漁法とは、魚がたくさん棲んでいる珊瑚礁等の近くでダイナマイトを爆発させ、魚を一網打尽にとり尽くす漁法のことである。魚は爆死あるいは失神して水面に浮いてくるので、いとも簡単に大量の魚を捕まえることができる。しかし、珊瑚礁を破壊し、死の海を作る。また、失敗して、手足を吹き飛ばしてしまった漁師がたくさんいる。

ダイナマイト漁法の爪後は非常に大きい。海岸でスノーケリングを楽しもうとすると、いたるところで、バラバラになった珊瑚礁を見つけることができる。バラバラの珊瑚礁は、アポ島など、特殊なところを除き、フィリピンの海岸で広く見つかる。

米国などでは、珊瑚礁に触ったり、珊瑚礁の上に立って、休憩でもしようものなら、カンカンになって注意されることが多い。それに比べ、このバラバラ事件を一体なんと理解すれば、良いものか?

来年蒔くもみまで食べてしまった農民のように、魚の棲家である珊瑚礁を壊してしまっては、漁師の将来は明るくない。実際市場には、獲ってはいけない、まだ小さい魚がたくさん並んでいる。大きくなれば高く売れる魚を早々と獲ってしまうのである。当然の結果として、漁師の生活は貧しい。月謝が無料の学校へ、いかに子供を通わせるかで、苦労している。交通費や文房具代など、学校に行くための諸経費が重くのしかかっている。

ダイナマイト漁法は、もちろん違法。従って、フィリピン全体で現状がどうなっているのか、正確に把握するのは難しい。 シキホール島では完全になくなっているようだが、バンタヤン島の漁師の話によると、隣の漁村では、今でも、ダイナマイト漁法を続けているそうだ。また別の漁師によると、ボホール島あたりの漁師が、遠くパラワン諸島まで出かけて、いまでも続けているそうだ。ただし、パラワンで獲れた魚をいかにして持って帰るのかを考えると、後者の話は簡単には信じ難い。

いずれにせよ、実態の把握が必要であろう。
また、獲るだけでなく、養殖や放流も大切であろう。成長前の魚を獲っている漁師は全員放流を経験した方が良い。

日本は人物金すべての面で、フィリピンを含め途上国を支援している。しかし、日本軍が置き去りにし、ダイナマイトが、この漁法の引き金になったことが事実であれば、もっと、ダイナマイト漁法に目を向ける必要があろう。

2000年4月28日 ヒアリング実施

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