Emergency Light(非常灯)

2006年12月作成   
2013年 9月最終更新


フィリピンの田舎の島に暮らしていると、停電(現地ではBrownoutと呼ばれている)に悩まされることが多い。その場合に重宝するのがEmergency Lightである。
最初にEmergency light(非常灯)のことを書いてから かなり時間が経過し、シキホール島での電力事情は、コンテナ・ユニット型のレンタル発電機の導入で、少し安定した感もあるが、時期によっては停電の嵐ということもあり、飛躍的な改善とは程遠い。
一方、Emergency lightの方は、当初紹介していた、蛍光灯タイプのものだけでなく、最近は、LEDが普及し、バッテリーの連続利用時間が圧倒的に改善した。他にも、普通の懐中電灯のような形をして、充電できる製品も広く出回り、台風で被災した家に配ったりもした。Emergency Light(非常灯)については、かなり状況が変わった。

そこそこ予算があれば、自家発電を備えることも多いのかもしれないが、燃料代がかなりかかりそうで、安く生活したい私の場合には最初から検討にも上らない。それよりは、やるならバッテリーバックアップだが、なかなかそこまで手が回っていない。



LED型

充電式多数LED型

電池式
充電式LED懐中電灯
センサー式

上の写真のように、いろいろなタイプのものが売られている。ただの灯りであり、難しい説明はいらないはずで、個別に少しずつ補足しておく。

沢山LEDが付いたものは、現地の常識に従い、お決まりのように、消えてつかなくなるLEDが多い。それでも、沢山LEDが付いていて明るいので重宝している。

電池式のものは、以前の蛍光灯タイプでは考えられなかったが、LEDになり、格段に消費電力が下がり、通常の電池でも十分長い間使え、充電式の電池を使えば、さらに経済的だ。

充電式懐中電灯は、2013年時点で、現地では1個150円程度で手に入り、お手頃価格になったので結構普及している。LEDが1個しか付いていないものを使っているが、1年程度は使えている。箱にMade in chanaと書いてあり、今後どれだけ使い続けられるのかは未知数だが、夜も結構停電している状況で、夜道を歩いたり結構懐中電灯が活用されている現地で、1年使えてこの値段なら、合格点だとも言えそうだ。直感と体感だが、LEDが沢山付いているタイプと比べ、一個しかLEDが付いていない分、LEDが消えないように対策していると思われ、バッテリーの劣化以外は、今後もそのまま使い続けられるのではないかという期待がある。

センサー式のものは、フィリピンでも売っているがこの手の気の利いたものは現地では高価なことが多く、私の場合も日本のホームセンターのバーゲン品を使っている。


これから買うなら、LEDを使用した製品だろうが、私のように蛍光灯を使った製品を以前に買っていたり、手元にあったりするかもしれないので、メンテの観点を中心に、説明しておく。

旧来型蛍光灯タイプ

蛍光灯を使った
Emergency Light

以前はこのタイフが主流だった。充電式で10Wか15Wの蛍光灯が2本付いているタイプのものがLED式が普及する前はよく売られていた。使用できる時間は、バッテリーの劣化状況にもよるが、ほぼ 1〜2時間程度で、夜の停電に備える意味では、一台では不安があった。そこへLEDを使った製品が入ってきて、長時間使えるようになり、おまけにLEDを使った製品の方が単価が安いので、蛍光灯式は競争力を失った。


主な仕様

何時間点灯を続けられるかが重要だが、自宅にある10Wの蛍光灯2本のものと、15Wの蛍光灯2本のものを、分解してみたところ、どちらも6V、4.2AHのバッテリーが入っていた。交換用の市販のバッテリーを探してみると、6V品では 4AHと4.5AHのものが見つかった。以上から点灯を続けられる時間は、単純に計算すると、1時間前後ということになるが、実際には、もう少し長く点灯を続けてくれる。夜の停電時に蛍光灯を点していると、最初は明るいが そのうち 徐々に暗くなってくる。放電して、徐々に電圧も低下してくるので当然のことだが、あまり明るくなくて、消費電力も少なくなったところまで、点灯を続けられる時間に加えれば、計算上も矛盾はない。(最初から、蛍光灯の通常の明るさよりも 少し暗めに点灯するように設定してあるのではないかとも思われる。)
蛍光灯が2本付いていて、1本だけ点灯するようにスイッチを切り替えることもできる。少し暗いが、これなら倍の時間点灯を続けることができる。

充電時間は半日程度である。夜の停電で使用した後、翌晩に備えて、コンセントに接続して充電しておけばよい。

バッテリーの交換

このバッテリーは、以前は、電気が来ていない家庭で ラジオを聞くのに使っているのをよくみかけた。その他、懐中電灯を改造して、このバッテリーを接続して使っている人を見かけたこともある。フィリピンの田舎では、今でも結構ポピュラーで、充電器も含め簡単に手に入る。

冒頭の写真のタイプのものでは、ネジを6本外して、あとは、+、−の電線2本のはんだ付けをやり直すだけで、バッテリーを交換することができた。バッテリーの交換のことは説明書には書かれていないので、保障の限りではなく、個人の責任において行うしかないが、特に問題はないだろう。

一つ失敗談を紹介しておく。このバッテリーは充電された状態で売られている。これをドゥマゲッティのスーパーでまとめて買ったところ、レジのおねいさんは、電極の側をレジのステンレスの台の上に置いた。フィリピンの田舎での通常の手続きに従い、動作確認をしてもらったから買ったので、包装から取り出し、電極がむき出しになっていた。それでショートして火花が散り、おねいさんはびっくりしていた。普通の乾電池とは異なり、+、−の電極が同じ面にあり、ショートしやすい構造になっているのである。特に捨てるときには注意が必要だろう。

Emergency Light
内臓のバッテリー

蛍光灯の交換

上の写真のタイプの場合、ねじ1本外すだけで、簡単に蛍光灯を交換できる。ここでの注意は、蛍光灯のtubeの部分が細いタイプのものを使う必要がある点である。蛍光灯を交換して、固定する部分に、蛍光灯の断面より少しだけ大きい丸い穴があいているが、この穴はかなり小さい。蛍光灯を固定する意味合いでそうなっているようである。交換用には、細い蛍光灯、すなわち 蛍光灯のガラスの部分の横断面が十分小さいタイプのものを探してくる必要がある。


停電事情

以前にも紹介したが、参考のため、シキホール島を例に取り、フィリピンの田舎の島での停電の状況を紹介する。
停電の原因は、

(1)古い発電機を使い続けていて 故障が多い。
(2)新しく導入されているコンテナに入ったユニット型の発電機もそれなりに故障し、
はるばるマニラからメンテにくるようなこともあり、その場合当然復旧に時間がかかる。
(3)強風などにより、送電線上のcircuit breakerが切れる。
(4)メンテナンス
以上の4つのどれかであることが多い。
これは、シキホール島以外でも、同じ程度の田舎なら広くあてはまるはずだ。
(1)は、シキホール島の場合、以前は、1970年代に製造された旧チェコスロバキア製の発電機が頻繁に故障するという問題があったが、コンテナ型の発電機の導入で、それなりに旧タイプはPhase outしたので、状況はましになったと言えそうだ。特に、一番大きな古い発電機は、最近は電力会社の人と話していても出力の計算に含まれていないので、使われなくなったということだろう。それでも、それ以外で古い発電機もまだ、計算に含まれているので、影響がある。古い発電機は、メンテナンス部品の入手が非常に難しく、最悪の場合、ほかの島の発電機から部品取りするような話も聞かれ、そんなものが、そう易々と手に入るはずはない。以前は、延々半年以上も電力供給が悪い状態が続くこともあった。

例えば、夜に一部分の発電機が止まった場合には、島の西半分か東半部のどちらかが、いけにえにされる。その後5分ほどで、復旧することがある。これはパソコンをリセットしたのと同じで、再起動がうまくいった場合である。残念ながら、最近は短時間で復旧する場合は少なくなってしまった。通常は、夕方、多くの家で、照明を使い出し、電力消費が増える頃に起こり、午後10時くらいになると復旧する。この時間になると、消灯して寝てしまう家庭が多く、半分程度の電力供給量でも、島全体をカバーすることができるようになるからである。この状況もフィリピンの他の地域でも当てはまることが少なくないはずだ。

(2)コンテナタイプが入ってきて、容易に追加、入れ替えができるので、電力消費の増加や、故障に容易に対応できるようになったと言えるのだろう。一方、導入の費用やメンテなどがコスト高の要因になり、原油価格の高騰とともに、少し前に実施された電気料金値上げの原因であろう。

ユニットにもよるが、電力会社の担当者の説明によると、連続運転が12時間しかできず、そのあと12時間停止させる必要がある発電機が使われていた時期があった。日本の感覚なら、当然その手のものなら例えば2台で交代で運転する必要があるが、そうではできていない。その結果、やたらと夜中に停電する時期があった。12時間停止する中に、夜中を含めた方が良いのは当然だろう。

(3)に関しては、自分の住んでいる場所を中心に、どのcircuit breakerが どの地域に影響するかを、把握しておくと便利である。私の家への送電線の末端のcircuit breakerは、近所の3つのバランガイをにまたがる地域をカバーしている。 近所で強風が吹くと、送電線がショートしやすい場所があり、このcircuit breakerだけが切れることがある。この場合には、近所は停電だが、わずか数百メートルしか離れていない隣のバランガイでは電気は来ているので、強風が吹いた事実と合わせ、容易に状況が推測できる。

昨年の台風24号がシキホール島を直撃し、送電線関連もかなり被害が出て、その結果、近所で風の影響を受け易いと言われていた送電線の電柱が入れ替わり、電線も含めて対策されたので、その後は、同様の現象は減った。しかし、完全に消えたわけではない。

それ以外でも、いろいろなところで風の影響を受ける。

(4)のメンテナンスの場合には、予めわかっていることなので、通常は電力会社のオフィスに、Noticeとして掲示される。それを見ていない場合でも、朝の8時〜9時頃、仕事が始まる時間から停電が始まれば、何かメンテナンスを行っているのではないかと疑ってみた方がよい。


調子が良いと、何ヶ月も停電のない場合もある。電力供給は、天候や発電機の機嫌次第と言えば、わかり易い。
因みに、小さな島では、夜間しか電気が来ないところもあり、それに比べれば、シキホール島はまだ恵まれているとも言える。 
フィリピンの小さな島に住むなら、太陽電池や風力発電なども検討する必要が出てきそうだが、それはそれで、また楽しそうである。


シキホール島のページへ戻る
ホームページへ戻る