Brown Out(停電)事例 2000年10月

2000年10月


発電所 @Candanay, Siquijor

何本の煙突から煙が出ているかによって、何台の発電機が動いているのかを予想できる。

ここ1年で最悪の事態

今回は、ここ1年で最悪の事態を経験した。5台ある発電機のうち3台が故障。2台だけで送電。電力不足のため、供給する地域を順次ローテーションして、何とかしのいでいた。以下、順に経緯を説明する。

10月9日 島に戻ってきたところ、住民から前日の停電の話を聞かされる。夕方から、夜遅くまで停電していたそうだ。

10月10日 さっそく、電力会社のオフィスへ行ってみたところ、案の定停電のお知らせが掲示されていた。今回はかなり重症であり、停電のスケジュールを紙に印刷したものがあり、それを1枚もらうことができた。

SCHEDULE OF POWER INTERRUPTIONS
October 5, 2000 until NPC Gensets will be back to normal
PRESENT POWER SITUATION
Power Plant(NPC) Capability = 850 kilowatts
Coop (Peak) Power Requirment = 1,665 kilowatts
Power Shortage = 815 kilowatts

DATE
Year 2000

TIME

FEEDER

LINE
SPECIFIC AREA AFFECTED

TURN-OFF

TURN-ON
October 5, 7, 9, 11,13, 15, . . . .          

8:30AM

1:00PM

Feeder 2 Lines 1, 2, 3 Paliton, San Juan to Nagerong/Simacolong

1:00PM

5:30PM

Feeder 1 Lines 1, 2, 3 Bagacay to Talingting until Simacolong/Nagerong

5:45PM

9:30PM(Approx)

Feeder 2 Lines 1, 2, 3 Candanay Sur to San Juan unitl Nagerong/Simacolong
October 6, 8, 10,12, 14, 16, . . . .          

8:30AM

1:00PM

Feeder 1 Lines 1, 2, 3 Bagacay to Talingting until Simacolong/Nagerong

1:00PM

5:30PM

Feeder 2 Lines 1, 2, 3 Paliton, San Juan to Nagerong/Simacolong

5:45PM

9:30PM(Approx)

Feeder 1 Lines 1, 2, 3 Candanay Sur to Larena until Simacolong.Nagerong

Note: Turn Off === brown-out or no power , Turn-on === Power shall be back

注) Feeder1は島の東半分。発電所があるCandanay Surから東へLarena, Mariaを経由してLaziまでの地域。一方、Feeder2は島の西半分。Candanay Surから西へSiquijor,San Juanを経由してLaziまでの地域。
NPCは国営の電力会社。発電を担当している。NPCから電気を買って島民に、電力を供給しているのが、公営(Provinceが経営)のPROSIELCOという会社である。



紙を持ってすぐに、コピーセンターへ行き、10枚ほどコピーして、知り合い家に行ってはコピーを配った。今回は、かなり状況が悪いため、紙は配られてはいないものの、停電の噂以上で、正式なお知らせ以下のものが伝わっていた。しかし、印刷物の方が正確であり、家の前や店先等に貼ってもらった。

私自身でも何回かコピーしてかなりの枚数のお知らせを配ったし、口コミでも停電の情報はかなり伝わった。突然の故障を除き、停電にはスケジュールやお知らせ(Notice)があることを、今回多くの人が知った。これまで停電は予告なしに突然起こるものとしか考えていなかった人がほとんどだったので、大きな進歩だ。故障の程度が重かったお陰と言える。

お知らせによると、この日の晩、私の泊まっているところで、再び停電が起こることになっていた。そこで、ランプの油とロウソクを買い、夜の停電に備えた。案の定、予定の時間になると停電したので、ランプとロウソクでサバイバル生活を始めた。ロウソクは結構明るく、数本点火するとかなり良く見えた。それでも、こういう時は早く寝るに限ると、午後7時を過ぎると早々と就寝した。

10月11日 さらに詳しい情報を持っているはずの発電所に行ってみたところ、守衛から話を聞くことができた。発電機5台のうち、3台が故障していて、現在1台を治している。今晩にも修理が済むはずとの見込みを聞く。

10月12日 停電のスケジュールによると、今晩再度停電するはずであった。しかし、発電所の見込みに期待して待っていたところ、最初の10分程度だけ停電して、すぐに電気は戻ってきた。 少し停電したが、どうやら修理がうまくいったようだと予測。

10月13日 再度、発電所へと向かう。発電所には3本の煙突があり、前回まではそのうち、1本だけから煙が出ていたのに対して、今回は2本の煙突から煙が出ていることを確認。修理がうまくいったに違いないと確信して先の守衛に尋ねてみたところ、案の定1台の発電機が治ったとのことであった。

さらに、今回は発電所の隣人で、この発電所に勤めている人から、詳しく話を聞くことができた。彼の話によると、5台の発電機のうち3台はドイツ製。これらは、発電所開設当初から10年以上も使っているが、かなり調子が良いとのこと。それに対して残りの2台はチェコ・スロバキア製。(現在では国は2つに分かれているが、発電機は古く、分離する前にできたものである。) これらは、1年前に設置したところだが、頻繁故障するそうだ。そして、とっくにフェーズ・アウト(Phase Out, 製造中止)していて、メンテ部品が入手しにくいらしい。今できることは、他の島の発電所で、同じ型の発電機を持っていて、しかも、もう使わなくなっているものから、必要な部品を剥ぎ取ることしかないとのこと。これから部品を探さないといけないので、治るまでには3ヶ月近くかかりそうだとのこと。

「シキホール島の電力事情はあまり良くないので、ネグロス島から、海底ケーブルで送電した方が、安くて安定した電力が手に入るのではないか?」 常々いろいろな人に、そう尋ねていた。 この人にも同様に、聞いてみたところ、なんと大賛成とのこと。
ケーブルでつながると、電力会社の人々は失業する可能性が高いので、反対されるものとばかり思っていた。すなわち、約10万人の島民は大賛成。約100人の電力会社の人々は大反対。こういう構図ができているものとばかり思っていたが、そうでもなかった。発電所では、基本的に発電機の修理をしているだけ。 あまり精神衛生に良い仕事ではない。さっさと止めて、海底ケーブルを使って、他から安定した電力を手に入れた方が良いということであった。

残念ながら、海底ケーブルについて、初期コストと、技術的な問題の有無について、具体的に調べたわけではないので、ほんとうのところの実現性は不明だ。しかし、他の地域では、良く見かけることなので、直感的には、技術的にも経済的にも実現可能で十分意味のあることと思われる。

最後にもう一つ意見を述べたい。

発電機の修理に2月以上もかかるのは、良い状態とは、とても言えない。日本では、玩具の修理をするボランティアがたくさんいる。これと同様にして発電機を修理するボランティアがいてくれれば素晴らしい。旋盤やNCで、大抵の形のサービスパーツは、作ることができそうに思う。また、良く壊れるところがどこなのかは、予め分かっているはずで、前もって必要なパーツを準備しておけば、故障しても即座に対応できるはずだ。

発電機の修理だけでなく、停電のお知らせの伝達、メンテナンスの方法その他、以前にもまとめたように、フィリピンの島々で改善課題はたくさんありそうである。フィリピン離島電力事情改善プロジェクトなるものができて、改善が進むことを期待したいものだ。実際日本政府が公表している情報から、フィリピン電力事情の改善に対して、ODAで、多額の資金が投入されている。それらが、具体的にどのように使われているのか、簡単に調べられるようになっていないので、詳細については分からない。しかし、シキホール島で、電力関係で日本のODAの資金が投入されたという話は、これまで伝わって来ていない。海底送電ケーブルについては、ODA資金を期待できる可能性があるが、発電機の修理まで、諸外国のODAに期待するのは難しそうだ。草の根的なボランティアに期待したい事項も多そうだ。

[続編]


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