帰ってきたぞ、冷蔵庫

〜 何でも修理して使う、エコロジーな国フィリピン 〜

2003年 2月



修理が済んだ冷蔵庫
底の部分が錆びて壊れたので、ブリキ板を貼ってある。


冷蔵庫の修理

シキホール島で滞在先の下宿屋の共用の冷蔵庫が修理されて帰ってきた。日本では、冷蔵庫の故障はあまり聞かないし(?)、修理などは、さらに珍しいことだろう。

故障したのは、扉を支えている金具とその周囲。あたり一体が錆びて朽ち果て、金具が取れて扉が落ちてきた。扉が閉まらなくては使い物にならないので、修理に出すことになった。

なぜ錆びたかというと、高温多湿の環境のため、フィリピンではやたらと霜取りが必要になる。この冷蔵庫の場合には、週に1、2度霜取りが必要になってくる。霜取りと言っても、電源を切って、氷が溶けるのを待つだけ。霜取りで、氷が融けた水はトレーに溜まるが、それが溢れ出し、外へ流れる通路が、錆びてしまったのである。
ただし、この霜取りの頻度はどうみても異常で、扉の締まりが悪く、外気が常に入ってきて、その結果霜が付きやすくなったのかもしれない。

冷蔵庫は、数週間 修理屋に出されていたが、無事に帰ってきた。上の写真のように、底の方をブリキ板で覆い、金具も新たに取り付けられていた。おかげで 扉は締まるようになった。

ただ、扉の締め付けが悪いためか、相変わらず、しょっちゅう霜取りを繰り返している。

それでも、冷蔵庫があると無いとでは大違い。冷たい水が飲める。ミルクが飲める。安いビールが飲める等々。 帰ってきて大助かりである。

何でも修理する国

冷蔵庫に限らず、フィリピンでは、大抵のものは修理して使う。 シキホール島ではラジオ修理専門店の看板を出している所があり、びっくりしてしまった。今でもテレビは高級品なので、そんな店があってもおかしくないのかもしれない。
時計の修理屋はどこでも多いし、セブでは、ガス器具の修理専門店を見かけたこともある。

フィリピンで修理が多い理由は3つ考えられる。

・所得が低いので 簡単に買い替えられない。
・人件費が安いので、修理費用も安い。
・ほとんどの製品の品質が悪い。

所得の低さについては、説明するまでもないだろう。

修理費の安さについては、以前にも腕時計関連で紹介した。日本で壊れたものをフィリピンに持ってきて修理してもらい、再び日本に持ち帰るのがお奨めである。私の場合には、腕時計だけでなく、安物のカバンも修理してもらったことある。

品質については、今後とも、フィリピンに高品質を期待するのは無理だろう。
水道の粗悪な蛇口。日々故障する自転車。3回買う羽目になった珈琲メーカー。アッという間に壊れる蝿たたき。低品質を数え挙げたら きりが無い。

サービスパーツを沢山取り揃え、取り替えて楽しむ。壊れたお陰で、いろいろな種類のものが買えたと喜ぶ。このような粗悪品質を楽しむという発想の転換が必要だろう。

もちろん、壊れるたびに買った店に報告に行くなど、品質が改善するための地道な努力も続けたいものだ。

修理の根本原因は品質の悪さに帰着するので、つい そちらの方に目が行ってしまったが、何でも修理するということ自体は すばらしいことだ。エコロジーで、環境にやさしく、地球にやさしい行いで100点満点だろう。

日本も見習いたいところだが、多くの製品で新品の方が安い場合が多そうである。自分で修理するか、ボランティアに治してもらうか、それとも、前述のように、フィリピンのような人件費が安い国に持って行って治してもらうか。  簡単ではない。

テレビの修理

最後にテレビの修理の事例を紹介する。

その昔は日本でも、テレビをよく修理した。真空管の時代に、寿命が来た真空管を交換する必要があったからである。また、ブラウン管も交換した。しかし、半導体を使うようになってからは、ほとんど故障しなくなったし、その後、最近のように値段が下がってからは、また、よく故障するようになったが、修理代の方が相対的に高くつき、故障しても買い換えるのが普通になった。

このようにテレビを修理する時代は、日本では過去のものになったが、フィリピンでは今でも、テレビを修理する。

先日 下宿の住人の一人のテレビが故障した。電源が入らなくなったのである。修理屋が現れ、電源が入らないと見るや、いきなり、半田ごてを使って、三端子レギュレーターの足を一本外し、テスターで抵抗を調べてみたところ、この三端子レギュレータが故障しているのがみつかった。修理屋は、テレビの持ち主から100ペソもらい、部品を買いに行くや、直ぐに戻ってきて、三端子レギュレータを交換。あっという間に問題は解決した。テレビは元通り。あまりの手際の良さに、歓心するというより、あきれてしまった。

電源が入らないので、電源回路周りが故障しているのは明らかだろうが、スイッチの故障や接触不良など、考えられる故障箇所は、いくらでもありそうで、回路図も無くてどうして修理できるのか。そう思っていた。すると、何のためらいも無く、いきなり半田ごてを暖めだし、三端子レギュレータの足を引っこ抜いたのである。

ほとんど条件反射的に修理してしまったことから、これが日常茶飯事であることは、容易に想像できる。
シキホール島の電源事情が悪く、サージが多くて 三端子が故障したのか。三端子の品質が悪くて、壊れ易いのか。どちらであるかは不明だが、同じような田舎の島では、同じようなジェネレーターを使っているので、同じような故障が起こりやすそうなことは容易に想像できる。


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