Rodel少年、木から落ちて死す

2000年7月



耳の不自由なRodel少年の成長の過程をずっと紹介していく予定であった。しかし、2000年7月10日、Rodel少年は自宅前の木から落ちて死亡した。本当に木から落ちて死んだのか。目撃者は誰もいない。事故か他殺かも含め、私には、腑に落ちない点が多い。とにかく警察が現場検証し、木から落ちて死亡したことに決まった。

Rodel少年が死亡した日、私はまさに、Rodel少年の住むシキホール島に着いた。そして、私が船でこの島に着いた、ほぼその時刻に、木から落ちたそうだ。耳は不自由だがその他の感覚は優れ、私が来るのを察知して、木の上から船を出迎えてくれていたというのか?いつこの島に私が戻ってくると伝えていたわけではないので、不思議な限りだ。この島に棲むと言われている黒魔術師(Black Magician)の仕業としか思えない。それとも、私が黒魔術師なのか?全く、わけが分からない。

その日、島に着いて、3時間くらいして、私は、町に買い物に出掛けた。そこで、偶然、Rodel少年の母親に会った。彼女は、警察に行き、事件を報告し、自宅に戻る途中だったのだ。事の次第を聞き、私は一緒に警察の車でRodel少年の自宅へと向かった。Rodel少年の自宅にはたくさんの人が集まっていて、ガヤガヤ話していた。Rodel少年は、彼の家の入り口付近の草むらの上で横たわっていた。

警察は現場検証を始めた。私は、Rodel少年が落ちたという木の下に付いていた血や、その木の折れた枝を見せてもらった。しかし、血は、あるかないか分かる程度のほんの少し、枝も指でつまんで曲げた程度に折れているだけで、本当にここで落ちたのかどうか、納得がいかなかった。
さらに、彼の家の中で、血を拭いた後が残っていているのを見せてもらった。また、死体の腰のあたりに打撲の痕があるのを見せてもらった。これらの証拠を総合して、木から落ちたことに決まったようだが、やはり、日本人の私には、しっくり来ない。ココナツの木に素手で登って、そこから落ちて死ぬ人が少なくないので、このようなことは日常茶飯事で、簡単に処理されてしまうということか。

次の日、彼の家に着いてみると、今日は葬式をすると言い出した。別の知り合いの家では、葬式まで1週間くらいかかっていたので、突然のことに私はびっくりした。Rodel少年の母親は自分の兄に相談し、すぐに葬式を済ませ墓地に埋めてしまった方が良いという結論になったそうだ。とにかく、私は教会まで付いて行き、神父さんのお祈りを聞いた。そして、Rodel少年の亡き骸は、墓地に埋められた。墓地は立体式で、Rodel少年は彼の祖母の墓の上に永眠した。

その後は、日本の初七日のように、最初の一週間は毎日人々が集まりお祈りをした。そして、日本の四十九日のように、8月18日、皆で集まりお別れのお祈りをした。

新学期が始まり、Rodel少年は学校に通い始めることになっていた。誠に残念な限りである。

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