隣人が泥棒だったら

2002年6月


隣に住む泥棒に対抗して
できた巨大なブロック塀

フィリピンでは、日々 とてもおかしなことが起こり、退屈することがない。

私の住む下宿屋は、ケルンに住むドイツ人が建てた大きな家で、土地も5000平米くらいありとても広い。その家の横に、とてもフレンドリーな隣人が住んでいる。すぐ近くで、しかも 愛想が良いので、下宿屋のオーナーや下宿人たちは、隣人の家に行って、話をしてくつろいでた。

ところが、次第にその実態が明らかになってきた。

断水に備え、私は ポリタンクに水を入れて家の外に置いておいたところ、隣人が夜 忍び足でやって来て、ポリタンクを持ち去ったのである。下宿人の中の二人がそれを見ていて、すぐに隣家に出かけて、取り戻してきた。 面白いので、そのまま 外に置いておいたら、案の定、再びポリタンクは無くなり、それ以来 戻って来ない。
他にも、竹で編んだ籠を、ごみ箱として使っていたものを、家の外に放置しておいたところ、見事に無くなった。

ポリタンク泥棒を目撃した一人は、自分の車に取り付けてあったカーステレオを盗まれ、隣人のことを、とても疑っている。そして、しばらくして、隣人は車を買い、そこからは、大きな音で音楽が聞こえてきた。

最近になって、突如 この下宿屋の周りを、大きなブロック塀が取り囲んだ。0.5ヘクタールほどある大きな土地なので、どれだけ費用がかかったか、定かでないが 長さ約300メートル。作業員が3,4人で3ヶ月ほど働いていた。

塀造りの作業が一段落して、下宿屋のオーナーの妻がケルンからやって来た。彼女が言うには、「私の買った建材を使って、お隣は屋根を直した。 あの家の裏に行くと、私の持ち物が置いてあった。ブロックも持って行かれた。 だから、あの家にはもう行かない。隣人がやって来て物を盗まないように、巨大な塀を造ったのだ。」

そう言えば、ブロック塀を作り出した時期を同じくして、隣人もブロックを沢山使って、家を改築しだした。これまで長い間、改築していないものを、まさに同じ時期にブロックが使われだしたので、私も一目で怪しいと疑った。

隣人のこそ泥の結果が、巨大なブロック塀になるとは、とてもおかしくて仕方が無い。他にもっと安く済ませる対策が、いくらでもありそうだ。

例えば、何か盗みたくなりそうな物に、こっそり自分のものであることがわかるように印を付けておき、わざと盗みやすいところに放置しておく。そして、隣人が盗んだ後、その家に遊びに行き、「私の ***が、こんなところまで散歩していった。」 散歩はソロイ・ソロイという現地の言葉があり、これを皮肉で言ってやれば、二度と盗みはしないのではないか。

さらに楽しむため、この泥棒の話を題材に" Once upon a time, " で始まる どこの誰かは触れずオブラートに包んだ形の話にして、どうすれば泥棒を改心させられるかというクイズを作った。良いアイデアには200ペソ(500円)の懸賞金を出すことにしているが、残念ながら 未だ良いアイデアは出てこない。単純に警察に通報せよと言うだけだ。実際、この下宿屋には、警察官も部屋を借りていて、夜になると泊まりにやってくることもあるのだが、彼が絡むとさらにややこしいことになりそうだ。

以前、マンゴを盗む子供を撃退する方法を研究して、成果を挙げたことがある。
また、下宿屋の共用冷蔵庫の治安維持にも成功した。冷蔵庫に入れておいたコーラを少しずつ飲む輩が現れた。そこで、塩辛いアイスコーヒーをつくって、コーラのビンに入れておいたところ、冷蔵庫のそばから「ゲー」と言う声が聞えた。自分の部屋にいた私は 思わず笑ってしまった。それまで、マンゴーやミルク、チョコレートなどいろいろな食べ物が、すこしずつ冷蔵庫から無くなっていったが、この声を最後に 冷蔵庫の治安はとても良くなったのである。

今回も同様にして、良い方法を実践したいものである。


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