踊るポンポコリン水道メーター

2009年 1月20日作成   
2009年4月28日最終更新



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踊るメーター

水色のハネは薄くて軽く、いかにも
勝手に回ってしまいそうに見える。

踊らないメーター

黒色のハネは、左のものよりかなり分厚く、動きが鈍そうである。


ポンポコリンは、クレームが来たら削除するかもしれないが、内容をうまく伝えているとも言え、まずは、そのままの題名にしておく。

先日、1.1km離れた水道本管と自宅の間を樹脂のパイプをつないで、私の家まで水道を引いた。従来からある低水圧の水道とは別に、隣町の水道会社がサービスを始め、ポンプで加圧して給水するので、はるか離れた私の家でも 現地レベルでは十分な水量が得られるようになったからである。一方、従来からの水道もあったが、水圧が低くて、2年ほど前からは全く水が来なくなっていた。

水が来て めでたし、めでたしとなるはずであったが、水道メーター(上の左の写真)を見るとどうも動きがおかしい。家にある蛇口を閉じているのに、メーターが回っているのである。これは漏れていると思って調べてみると、パイプのつなぎ目の一つから水漏れしていて、近所の子供たちが、棚ぼたの水を 美味しそうに飲んでいた。 接合部分のホースの切り方に問題があったので、漏れないように修理した。そして家にある蛇口を閉じたまま、水道メーターを確認したのだが、先ほどよりは動きは遅いものの、まだメーターは回転していた。そこで、再度、パイプを点検したが、もはや 漏れは見つからなかった。メーターは、止まった状態からゆっくり回りだし、ほど無く 失速して 止まり、しばらく止まった後、またゆっくり回り出す。これを、永遠繰り返している。見ているとメーターの中で回転する羽が踊っているように見える。試しに測定してみると、メーターが1リットル分回るのに数分かかった。さらに、蛇口を閉めたまま、1日、水を使わず放っておくと、0.7立方メートルほどメーターが進んでいた。これだと、1月に20立方メートルほどになる。とんでもない空回りである。そこで、他の家のメーターも確認したが、同じような動きをしているところを、他にも2箇所発見した。私の隣家は、何ヶ月も前から水道を引いたが、そちらは、違うブランドのメーター(上の右の写真)を使っていて、蛇口を開けた時以外は、ピタッと止まっている。

水道メーターは、本管のすぐ近くに設置し、万一その後で漏れた場合には、ユーザーに費用を負担させるというのが、この水道会社の基本方針であるが、不具合は特定のメーカーのメーターで、メーターの後につながったパイプが長い場合にだけ発生している。

状況は十分把握できたので、水道会社に行って、調査とメーターの交換を依頼した。すると、四人も担当者がやってきて、現象が再現しているのを確認し、その後、パイプの漏れを調べ、漏れていないことも確認してもらった。さらに、詳しく調べるため、本管に一番近いパイプ接合部分を離し、そこを手で押さえて水を止め、メーターの回転の様子を観察した。最初のパイプは1インチ、その後3/4インチ、最後に1/2インチと徐々に細くしているが、最初の1インチのパイプの長さは90mほどだった。メーターが完全に止まったと言えるかどうかは微妙だが、数十分の一以下の回転になり、見た目には完全に止まったように見えた。パイプがその程度の長さなら、ほとんど、または、全く誤動作しないと言える。誤動作に影響を与える要素として、

 ・パイプの長さ
 ・パイプの中に入っている水の容量
 ・パイプの弾力性
 ・メーターの水が流れる部分の口径(1/2インチ)と、パイプの太さ(この場合1インチ)の違いによる
 渦巻き発生等での水の抵抗

以上のようなものが可能性として挙げられる。

試算すると、近くの3軒だけでも年間1万ペソ程度は、余計に請求されることになりそうで、フィリピン全国ネットのこの会社全体では、過剰請求の合計はかなりの金額になりそうだ。同じ島の別の地域に住む米国人も、メーターが空気で空回りすると言っているが、これは、近所の3軒だけで話が留まらない裏づけの一つであろう。

原因の切り分けと、即解決のため、担当者に最初から替わりのメーターを持ってくるように依頼したのだが、まずは水漏れを疑うのが自然な成り行きではあり、メーターは持って来なかった。しかし、4人ともメーターの誤動作と認識したので、一旦帰って昼飯の後、メーターを交換すると約束してくれた。しかし、その日は、まだクリスマス前だが、早々、年末の最終営業日で、午前中のみ営業となっていた。 私は、本を読みながら 現地で2時間ほど待ったが、予想通り誰も来なかった。

数日して、事務所の所長が、近所に来たついでに、私のところに訪ねて来た。彼が一番水漏れを疑っていたのだが、状況を確認して、彼もメーターの誤動作であることを認めた。私は 「あんたの会社には 都合の良いメーターだね。」と皮肉を言って ハッハッハと笑ってやったら、彼も一緒になって笑っていた。

しかしながら、水道会社は休みに入っていて メーターもそのままである。メーターを取り替えて、問題が解決するまでは何が起こるかわからない。

パイプを埋めるため、道路の脇に
小さな穴(溝)を掘っているところ。


パイプを埋めるために道の脇に1.1kmの穴(溝)を掘ったのだが、後から再度 水漏れを疑われる可能性がゼロではないので、パイプを埋め 土を元に戻し 穴をふさぐことができず、そのまま タイムアウトで現地を離れた。道に穴を掘ったまま長らく放ったらかしにしておく近所迷惑。パイプを盗まれる可能性など、いろいろな問題点を抱えたまた、水道工事を中断している。水道会社にメーターの交換を何度も依頼したが、最後は、想定通り 嘘をつかれて終わり、万策尽きてしまった。
悪天候や、いろいろな問題を想定して、ある程度の期間のマージンを含めて進めたつもりだったが、メーターの誤動作は想定外だった。急に決めた国策に従い、水道会社が2週間も営業を休止したというのも、同様に想定外だった。そんなに長く休むなら、通常ならメンテナンス要員を交代で待機させてくれるはずだ。しかし、残念ながら 事務所の鍵は締まったまま。誰もメーターを交換してくれなかった。

最初からある程度の問題点を承知で この水道を使おうとしているので、徹底的に糾弾しようとしているわけではない。(/* 安全上の理由から、わざと読みにくしておく。*/  普通なら、り***要求という話に発展しそうだが、その結果は、ホームページの永久更新停止、ま**新聞での日本人関連の記事************** ) 水道会社に協力して、共通の問題が解決できるならそうするし、できないものは、「フィリピンなので、こんなものだ。」と言って、ワッハッハと笑って、楽しんで終わるだけだ。 読んでいる人の参考になることがあると思い、ここで紹介している次第である。 

インターネットで、水道メーターの故障について検索したら、南太平洋の島で起こった水道メーターの故障の記事が目に留まった。1の次が2ではなくて、12になるような誤動作が起こり、約10倍の請求が来たそうである。しかしあくまで、個別の不具合である。書いた人は 水道会社の対応を問題にしていた。 日本でも故障した場合の対処方法についてのお知らせが沢山見つかるが、これも基本は個別の故障についてである。


後日、結果が確定したら、更新して、続きを紹介したい。


(2009年1月28日更新分)

早速 日本の専門家からご指摘を頂いた。まずは、日本の水道メーターは、双方向に回転するが、フィリピンの水道メーターは、逆回転を防止しているのだろうということだ。日本の水道メーターについては、インターネットで検索したところ、水道メーターを逆付けして、水道代をごまかしたホテルの話も出てきて、逆にも回転することは間違い無さそうだ。フィリピンで使っている水道メーターについては、これから確認する必要はあるが、逆回転を防止していると仮定すると、後は、あまりにもぴったりと、すべてが符合する。

説明の必要はないとも言えるが、念のため続きを補足しておく。

長いパイプの中に ある程度空気が入った状態で 蛇口を閉じると、本管からの水圧で 空気が圧縮され、しばらくすると、今度は膨張して 単振動に近いような状態になる。これを片方向にだけ感知する水道メーターで計測すると、プラス・マイナス・ゼロにはならず、水を使ったようにメーターが回転してしまうということである。バネにおもりをつけて、ベルトコンベアーに乗せると、単振動するように、こちらも、水の流れは正弦波になりそうだが、この水道メーターの動きは、そのマイナス側をぶっちぎった形である。電気屋さんなら、半波整流後の波形ということになる。それを、踊るポンポコリンと表現したということだ。
パイプの中の空気以外にも、パイプが樹脂であるため、その伸縮膨張も考えられる。空気か、それともパイプの素材か、どちらが主役かという点にも 個人的に興味はあるが、水道料金の過払いとは関係なく、どうでも良いとも言える。(1)中に入った空気の量、それと、(2)パイプの中の水の量とパイプの弾性 との力関係だと言えば間違いなかろう。 
いずれにせよ、直感的には、空気の圧縮と パイプの膨張は連動して、その結果、パイプに水を吸い込み、その後、空気の膨張と パイプの圧縮が連動して、パイプから水が出て行き、足の引っ張り合いではなくて、相乗効果ということができるはずだ。ただ、バネ定数のようなものの違いで、一時打ち消しあう期間もあるのかもしれない。得意な方がおられれば、詳しく計算して結果を教えてもらたいものだ。

現地に戻って、問題が解決すれば、続きを再度更新する予定である。


(2009年4月28日更新分)

メーターの手前横に取り付けられた
逆止弁(Swing Valve)

マイナス方向にも回る日本と同様の水道メーターを探してセブまで行ってみたが、残念ながら所望のメーターは見つからなかった。代わりに店で勧められたのがSwing Valve(逆止弁)である。写真の左側に取り付けてあるものだが、中は、まさに小学校で習った弁である。とにかく水は戻らない。これを入れて、自宅側の蛇口を閉じると、メーターもぴたりと止まり、踊らなくなった。これでは状況証拠不足で死刑にはできないというような例え話はここでは不要で、これまでの推測が正しかったことは、これで間違いないだろう。
さらに、情報を付け加えておくと、別途買った水道メーターで試したところ、水が正方向、逆方向どちらに流れても、メーターの回転は正方向で、整流器のような仕組みが備わっていた。因みに、このメーターは、本管横に取り付けられているメーターに対抗して、その後1.1kmあるパイプの途中での盗水を検知するためのもので、自宅側に設置して、二つのメーターの読みを比較することで盗水を発見するのが目的で購入したものである。
このメーターが 現在、我が家の水の使用量を計っている問題のメーターと同じ仕様かどうか断定はできないが、とにかく、逆方向の水の流れに対して、逆方向にメーターは回らないので、逆流した場合に、余計な水道料金を払わされるメーターが存在することは示せている。
既に取り付けたメーターでは確認していないが以上で十分であろう。

逆止弁の別の効用について補足しておく。

シキホール島では、停電が多い。これはシキホール島に限ったことではなくて、フィリピンで一般的なことであろう。高い場所に水道タンクを設置して水を送っている水道の場合は該当しないが、ポンプで水を送っている場合には、停電すると水圧が下がり水が逆流する。この後電気が復旧すると水が送られてきて、その分メーターが進む。私のところのように水道メーターの後に長いパイプがある場合には、一回の停電で、使ってもいないのに、かなりメーターが進むが、逆止弁が取り付けてあれば、逆流しないので損することがない。

最後に、専門の方から、ホースでの水の振動についての計算結果を送ってもらったのでそれを リンクしておく。

配管路の固有振動周期の算出

ホースの中の気泡がバネのように働くことによる振動と、もう一つは、本管につながれた他の蛇口を開いたり閉じたりすることや、その他も含めた理由による本管側の圧力の揺らぎ。主に この二つにより、水の逆流、振動が起こり、踊るポンポコリンとなったのではないかというのが、現状の私の見解である。


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