西へ進む台風

2011年 10月作成



西へ進む台風の予想進路図の例
2011年9月(バイオウェザーより)

台風の話題は以前にも取り挙げているが、日本の感覚と異なることが少なくない。

日本では、台風と言えば北上するか東寄りに進むイメージが強いが、フィリピンに上陸して、大きな被害をもたらす台風は、西寄りに進進む場合が多い。南シナ海でも台風は発生するが、フィリピンの東側、広大な太平洋上で台風が発生する場合が圧倒的に多く、潜在的なエネルギーを考えても、太平洋で発生した台風の方が大きく成長しやすい。その場合にフィリピンに上陸するには西へ進まなければならない。熱帯の北半球側では北西の貿易風が吹いているので、台風が熱帯で発生した後は、西へと押し流される力が働く。一方、コリオリ力とか、地球の自転の影響とか言われているが そちらは台風を北上させる力になる。(貿易風も自転の影響を受けて吹いているがあまり厳密に言うこともなかろう。) 台風がある程度北上すれば 偏西風で西に流されるのは、日本に住んでいれば簡単にイメージできる話である。

貿易風も偏西風も扇風機の風とは違って、自然の風なので強さが変わるのは当然で、さらに、特に偏西風の方は、蛇行して向きもかなり変わりそうだ。いろいろな力に押し流され、台風が流浪の生涯を送るのはよく分かるが、とにかく、北に進む力があまり働かず、西に進むとフィリピン直撃という結果になりやすい。

台風が太平洋高気圧のへりに沿って移動し、9月、10月に台風が日本に上陸しやすいとも言われ、それを説明する台風の経路図をよく見かける。それに重ね合わせて書いてある場合と無い場合があろうが、11月、12月頃には、太平洋高気圧が東に後退して、台風は北上しても日本の東方を進むので影響が無いというのが一般的に日本では言われるが、さらに、北上せず、そのまんま東でなくて、西に進む場合が、11月、12月には少なくない。

上の図は、西進が9月に起こった場合であるが、日本でも10月なのに、12月上旬並の冷え込みという場合もある。頻度的には多くなくてもいろいろなことが起こり、9月の西進もありうるということだろう。


シキホール島で一番被害が大きかったと言われている台風も やはり西に進み、しかもやってきたのは11月で、1990年のことである。いつもよく参考にさせてもらっているデジタル台風による経路図は以下の通りで、少しは北上しているもののほとんど西へ進んだ。現地の人の話では、頑丈な家以外はほとんど吹っ飛び、近所の人もしばらく避難生活を強いられたそうだ。しかし、すぐに政府から住宅再建の資金が提供され、1ヶ月ほどで元の場所に戻ったそうだ。今でも一軒に10万円くらい支給されれば、建材を買ってきて、一週間ほどで家を建ててまた住み始めるということになりそうだ。

1990年、台風25号の経路


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