晴天、雨天が長く続くフィリピンの天気

2006年10月作成   
2018年11月最終更新


曇り空@シキホール島

日本では梅雨や特別な時期を除くと、天気は3、4日程度で周期的に変わることが多い。流れの速い偏西風が低気圧や移動性高気圧を 西から東へ運んで行き、その速さ・周期で天気が変わるからである。

これに対してフィリピンの天気は かなり長い間隔で変わることが多い。雨が降り、途中で少し降り止むことはあっても、雨のうっとうしい天気が2週間続くことも珍しくない。私のところにも日本から訪問者が少なくないが、しばらく滞在してもらっても、あいにくの雨天続きであると 気の毒で仕方がない。
私の場合に限れば、洗濯や洗い物など、生活用水は主に雨水を利用しているし、最近は牛を沢山買っているので、牛の餌になる草が生えるため 雨が欠かせない。2018年になって、新な水道が来て、割と安定して水が出るので状況は改善したが、それでも、雨に依存した暮らしをしているので、雨が降るのを待ち望んでいる。しかしながら、一般には私のような場合は特殊で、雨はうっとうしいものであろう。

雨天と同様、晴天も長く続くことが多い。雨が1ヶ月降らないということは、珍しいことではない。シキホール島の場合では、3月から5月の前半はほとんど雨が降らず、summerと呼ばれ気温も高い。この時期は毎年再現性があって分かりやすいのだが、それ以外の時期で 晴天が続くのは何時かと聞かれても 答えるのは難しい。たまたま雨が降らなかった時期だとしか言いようがない。

5月の後半にsummerが終わり、rainy seasonと呼ばれる時期になると、例年 まとまって雨が降る。この時期は、季節風の変わり目で、それまでの北寄りの風が南寄りの風に変わる。日本で季節風と言えば、南東と北西の風であるが、フィリピンでは、おおよそ南西と北東から風が吹き、日本とは90度近い向きの違いがある。季節風は大陸を回るように吹いていて、日本とフィリピンの地理的な位置の違いから、季節風の向きの違いがあるのは当然だろう。冬場は大陸は放射冷却が起こり晴れ。つまり高気圧があり、その回りを、時計回りに風が吹く。夏場は大陸に低気圧があり、その回りを反時計回りに風が吹くと理解しておけば、分かりやすい。(気象庁のサイトに、季節風についてここで書いている説明の分かりやすい解説があったが、残念ながら、なくなったようだ。2018年)

rainy seasonの始めに、まとまった雨が降るのは 風向きが変わることが影響しているのは、間違いないはずだ。しかし、その後、10月までは南よりの風が続くが、づっと雨が降り続くかと言うとそうではない。例えば、6月後半の天気はどうかと言えば、確かに雨は降りやすいが、台風が影響していれば、雨が降るが、そうでなければ、晴天だと、ほぼそのように言える。台風がいつ発生するかというのは、12月から2月頃の海水の温度が低めで台風が発生しにくい時期を除くと ほとんどランダムで、ポアソン分布でやって来ると、素人考えでは、そう思える。 もっともそれは言い過ぎで、海水温や周辺の気圧配置など、広域の気象の状況から台風が発生し易い状況があり、そういう時期には、立て続けに台風が発生するのは、経験的に間違いない。6月、7月に台風が発生しないという状況は考えにくい。

台風の影響と言っても、日本とフィリピンでは、影響の仕方が随分異なる。日本では、台風が梅雨前線を刺激するような場合を除けば、台風が接近しなければ影響も少ない。台風が影響している期間も、暴風圏に入っている間を特に注意しておけばよく、それだけなら、通常は半日程度であろう。

フィリピンの特にビサヤ地方では、台風の直撃はほとんどなくて、日本の感覚だと台風の影響はないと言いたくなるが、実際にはそうではなくて、大いに影響がある。しかし、日本のように暴風によるものではなくて、台風を取り巻く雲が、長く尾を引いて、下手をすると 台風が発生している間、ずっと影響いていることも珍しくない。2005年の7月に日本に上陸した台風の例では、日本上陸の時点でも、日本からシンガポールあたりまで、雲はつながっていて、はるか彼方の台風に向かって 風が吹き込む。台風は、3000km以上離れているのに、シキホール島の自宅付近の風通しの良いところで、秒速20m以上の風が吹いた。台風が消滅して、風が吹き込む目的地がなくなって、やっと影響もなくなるという感じである。このようにして、台風の影響が1週間以上続くことも珍しくない。

2004年6月下旬に 日本からフィリピンに戻ってきた時のことである。知り合いの家に立ち寄るためボホール島経由にして、飛行機でボホールまでは辿り着いた。しかし、その後、台風の影響で 船が毎日欠航し、結局ボホール島に1週間近く滞在したことがあった。その時には台風は1000km以上離れていた。

12月の後半も長雨が多い。衛星からの写真を見ると、フィリピン全体とその東の太平洋のかなり広い地域を 大きな雲のかたまりが覆っている。なぜそうなるのかは、現状では、私には、よくわかないが、理由がわかれば、また紹介したい。

4月、5月の雨が降らない時期、6、7月の台風の影響が多い時期、5月後半〜6月の始め および12月後半の雨の多い時期、以上は毎年ほぼ決まっていて、天気が読みやすい。

これら以外の時期は、長雨が何度かあり、晴天が続く時期が何度かある。

雨が1日だけで、晴天が戻るような場合もなくはない。昼間は晴天で、夜になると、短い時間だが激しい雨が降るという天気を繰り返す場合もある。これらは、狭い範囲のローカルな天気と言えよう。

短い周期の天気の変化もなくはないが、全体で見れば、日本と比べて、かなり長い周期で変わるのがフィリピンの天気の特徴である。


フィリピンを旅行する場合に、できれば天気の良い日を選びたい。しかし、4月、5月を除くと、何月の第何週なら天気は良いというようなことは言えない。一番困るのは、旅行期間が1週間程度の場合、長雨とぶつかり、「ああ、フィリピンは今日も雨だった。」と毎日ため息をつくことになる場合だ。

できれば、知人の家にホームステイする等、長期で滞在して頂きたいと言いたいが、忙しい人はそうもできない。ここでは、雨の方が強調されているが、実際には、天気の良い期間の方が圧倒的に長い。たまたま滞在中、長雨になっても、大目に見てもらい、是非 また来て頂きたいものだ。

ここでは、お天気の話題を取り挙げているが、それ以外の要素も含め、フィリピンのお奨め旅行シーズンを紹介したい。

まずは、日本の冬。欧米からの旅行客と同じだが、避寒で長期にフィリピンにやってくれば、寒さ知らずで快適だ。困るのは、1月の一番寒い時期に日本に帰ることである。「フィリピン滞在中は、快適だったが日本に帰った風邪をひいた。」というメールを頂くことが多い。3月まではフィリピンにとどまっていた方が良い。

もう一つは、日本の夏。日本のような夜の寝苦しさはない。夜、風が吹いていれば肌寒く感じるくらいだ。

これに対して、5月、10月やその前後は、日本の方が快適で、相対的に、わざわざフィリピンに行くことはないとも言えるが、少しの気温の違いがあるだけのことだし、5月は連休で旅行する人が多いことだろう。


日本に比べて、天気の変動の周期が長いというのは、フィリピン全般に当てはまることだが、雨の降りやすい時期などは、地域によって、かなり異なる。日本で表日本と裏日本で天候が違うのと同じで、季節風が海から吹き付ける地域で、雨が降り易くなる。マレー半島の東側と西側で季節風の向きにより、雨季・乾季の時期が反対になるのと同様である。 

ここでは、私の住んでいるシキホール島の状況を元にして、セブなどビサヤ地方の中央部を例を取り上げているが、それ以外に地域では、雨、晴れの時期は異なってくるので、必要なら別途確認頂きたい。


(2007年1月追加分)

2006年10月〜2007年1月の状況を補足しておきたい。

2006年9月末から10月前半にかけ、雨が続いたが、その後、12月まで、シキホール島では、ほとんど雨が降らなかった。例年だと、12月から1月は雨が多いので、そのように期待していたのだが、12月末まで、雨が降らない状況が続いた。プロジェクトで牛を飼っていて、草が枯れて、食べる物が少なくなり、牛がお腹を空かすようになった。エルニーニョが発生したという報道があり、雨が期待できそうに無いので、12月になって、何度も山に木の葉を採りに行った。私は、1月始めに日本に戻って来たのだが、12月末から雨が降り出し、その後も雨が降り続いているという知らせを聞いて、何とか牛の食べる草も生えそろったことだろうと期待していたのだが、草が生えそろう前に一頭の子牛が、死んでしまったという悲しい知らせが入った。 牛には、少し過酷な環境である。

フィリピンでも、ビサヤ地方の北半分以北では、10月から12月に何度か台風が通過したので、大量に雨が降った。大きな違いである。

台風とエルニーニョも天候に大きく影響する。


(2018年11月追加)

1〜2か月の周期で気候が変動する要因として、最近マッデン・ジュリアン振動が注目されるようになっている。
これについては、別途取り上げる。 
→ マッデン・ジュリアン振動


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