海外移住とビールの値段

2006年 3月




海外移住のブームは続いていて、インターネットや書籍などでいろいろな情報が蓄積され、基本的な情報は簡単に手に入るようになっている。しかし、人によっては、海外移住に関して、簡単には答えが得にくい 個別の必要条件があることが少なくないはずだ。私が住んでいるフィリピンの場合で、以前 相談を受けた例では、喘息の特定の薬が近くで買えないと困るという人がいた。調べたところ かなり田舎でも問題なく買えることがわかったが、人によっては、このような特定の条件が付くことが少なくないはずだ。

先日、クアラルンプルに行き、私も 自分自身の同じ様な条件に気づいた。マレーシアはイスラム教の国であり、アルコールの値段がやたらと高いのである。

現在 海外移住が日本で注目されているのは、華僑のように外国に出て一旗挙げるというよりも、生活防衛の手段として、物価の安い国に移住することが多いはずだ。それに該当するのは、通常は 東南アジアなどの熱帯諸国である。国が貧しいので、収入が少なく、そのため お金も少ししか払えないから物価も安いという構造が一般的だ。緯度が高い国で 経済的に貧しい人が多いと、冬場に暖房用の燃料も買えず、家は隙間風が吹いているかもしれない。それでは、凍死者が出かねず、困ったことになる。そういう困った状態になっている国もあるようだが、それは例外だろう。これに対し、例えばフィリピンのように、赤道近くの熱帯の国々では、たとえ家が無くても凍死することはない。暖房用の燃料を買う必要もない。収入が少なくてもなんとかやって行け、その結果、経済的な貧しさから脱却しにくいという素地がある。このようにして、物価が安い移住先と言えば、熱帯の国が多くなる。

このような国に行けば、私の場合 暑いのでビールを飲みたくなる。しかしながら、マレーシアでは他の酒類と同様、ビールも割高だ。先日、コンビニで調べたところ、ビールの大瓶がRM14で、物価が高い日本より、さらに値段が高い。冗談だと思いたいが、町の酒屋の値札では、ブラック・ラベルRM1301、シーバス・リーガル12年 RM1381, ヘネシーXO RM3701、養命酒 RM941となっていて、日本の市価の10倍以上の値段が付いていた。これでは、無料で飲める空港のラウンジか 機内でしか飲む気がしない。シンガポールで 自動車に莫大な税金を課し、狭い国土に自動車が氾濫するのを防ごうとしているのと手口が似ている。

ということで、マレーシアに長く滞在することは、私には どうも難しそうである。

逆に、これまで私が旅した国で、ビールが安かった国は、一番が中国である。夏場に中国に行くと、ビールが安く、ついつい飲み過ぎになりがちで、別の意味で課題となる。そうは言っても安いのはありがたい。その次がフィリピンである。その結果フィリピンに住み着いているのかもしれない。

ビールは私にとっては大問題と言えそうだが、移住の条件としては、一般的には、単なる一個別条件に過ぎないだろう。しかしながら、これ以外にも、人によって、個別の必要条件は、いろいろ存在するはずだ。それらは、最終的には 現地にしばらく住んでみないと分からないことも多いはずだ。

マイル修行でマイルを十分貯め、物価が安い幾つかの国に小さな住家を建てて、老後、貯まったマイルで、それらを自由に行き来し、必要に応じ、または気分次第で、それぞれに滞在する。さらにマイル修行も続けて、他のいろいろな国に旅行する。随分 先の話になる人が多いかもしれないが、これが老後にお奨めしたいライフ・スタイルである。

滞在先が複数あれば、飽きてしまうことも少なくなるだろうし、少々課題があっても、滞在期間の割合で調整することもできて 便利なはずだ。

ちなみに、家を何軒も建てるというのは、日本の感覚では とても贅沢に感じるが、例えば、フィリピンの場合なら、私の方で、予算50万円で家を建てるノウハウを公開している。 田舎で観光地ではなくて、豪邸を建てるのでなければ、フィリピン以外でも、格安で家は建てられるはずだ。ただし、インターネットで検索して、日本人向けに販売している物件を いくら探しても 答えは出てこないだろう。現地の裕福でない人のやり方を、真似しないとできない。


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