米国入国審査の絞られ方 (2)

2004年5月作成
2004年6月更新



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以前、同じ題名で書いたことがあるが、その時は9.11の前であり、米国の入国審査はそれほど厳しくなかった。ところが、9.11以降、状況は一変した。空港にはWelcomeと書いてあっても、そう容易く入国させてはくれなくなってしまった。

私の場合も、デトロイトで入国しようとすると、大抵 別室送りを食らうことになってしまい、頭が痛い。頻繁に米国入国を繰り返すと、その理由をしつこく聞かれるので、現在では、ほとぼりが冷めるのを待って、半年近く米国には行っていない。と言っても、またすぐに米国に行くので、作戦を練ってみた。

まずは、これまでの傾向をまとめておく。

別室送りの無限ループ

別室送りになった人の中で、口々に飛び出すのは、別室送りが常態化してしまうということである。
例えば、その前の滞在時に、出国がらみで行き違いがあり、その次に米国に来た時に、別室送りになった。そして、その場で誤解は解けが、その後も 毎回、同じように別室送りになっては、また誤解が解けるということを繰り返している。 そう言っている人がいた。

私の場合は、デトロイトで入国審査時に、理由は忘れたが、審査官がパソコンに コメントを打ち込み、別室送りになったのがケチの付け始めで、それ以降は、毎回のように別室送りを食らっている。

一度、書き込まれてしまったものは消せないという噂もあるが、実際に起こっていることからも、なかなか消えないのだろうと推測される。刺青のように残ってしまった書き込みが、別室送りの状態化に大きく影響しているのだろう。




何で米国に来たのか?

「観光で米国に来るにしては、頻度が多すぎて、とても怪しい。アルバカーキとかなんだとか、普通は観光に行くような町とは思えないところに行くのも怪しい。」

私が書き込みされたのは、以上のようなことではないかと想像するが、とにかく、ケチが付くのは、大抵 入国の理由についてである。

経験的には、仕事で展示会を見に行くというのが一番通りやすい。展示会に行く必然性を確認するため、続けて 「どういう仕事か」と聞かれる可能性はあるが、それくらいはスラスラ答えられるように準備しておくべきだ。もちろん仕事と展示会が関係なかったら一悶着ある可能性が高い。展示会に関係ないような仕事の内容を答えても、それでは、説明責任を果たしたとは言えない。

すんなり行かない場合の例を挙げてみよう。何度か紹介しているように最初のストップオーバーがアルバカーキーで、そこのホテルの名前を、入国の書類に書こうものなら、「どうして、わざわざアルバカーキーなどに、行くのか?」という質問から始まって、なかなか収束しない。
単に「観光だ。」などと答えたら、「一体アルバカーキーに、どんな観光スポットがあるというのか?」という疑問を持たれ、審査官を、なかなか説得できない。「あそこの博物館は結構面白い。」とか、「オールドタウンに行くつもりだ。」とか、そんなことを言っても、納得してくれない。

入国OKの十分条件は?

展示会に行くというような楽勝パタンも結構あるはずだ。ただし、行きもしない展示会に行くと言ってみたり、嘘をついては駄目である。

カンクンに行く

以前にも紹介しているようにアメリカ人にとってカンクンは、日本人がハワイに行くのと同じようなものである。どうしてカンクンなどに観光に行くのだというアメリカ人は皆無だ。カンクンに観光というのは、米国入国の十分条件と言える。
しかし、カンクンはメキシコであり、トランジットで米国に入国する羽目になっただけのことで、トランジットなら ほぼ間違いないとも言える。その中でも、安心できるトランジット先として、カンクンが挙げられる。

マラソン参加はOK,しかし テニスの練習はNG

日本から米国内の各地のマラソンに参加している人と話をしたことがあるが、フライトの目的地で行われるマラソンに参加すると説明すると、いつも入国審査はすんなり通れるそうだ。

一方、そのマラソンランナーからの伝聞だが、テニスの練習にフロリダまで行くと言う日本人の女の子は、怪しまれて、別室送りになったそうだ。 わざわざ米国まで来て、そこそこの大会に参加するのであれば、問題ないが、わざわざフロリダまでテニスの練習に来るというのは、説明になっていないということだ。
「どこで練習しようと 私の勝手。 フロリダで練習したいのよ。」 そんなことを言って、入国審査官に、反感を持たれて、入国拒否され、挙句に 入国拒否の無限ループに入ってしまったら、目も当てられない。 けんかを売るような発言は慎むべきだ。
勿論、テニスの練習でも、うまく説明すれば、全然問題ないはずだ。

その他の理由

その他を見ておこう。

友達に会いに行く

入国の書類に、米国での滞在先として マイナーな場所を書いた場合、大抵質問されるのが、「そこに、友達がいるのか?」ということである。友達に会いに行く場合もあるだろうが、全米の各地を周遊したい人にとっては、行く先々に、すべて友達が居るわけではないだろうから、「友達に会いに行く」という答えは、限られた場合にしか使えない。

更には、先日、ニューヨークに行くときに、横に座った日本人の話だと、「ニューヨークの妹の家に行く」と毎回入国審査で答えていたところ、別室送りになり、次からはビザがないと入国できないと言われたそうだ。その次のチケットも既に買ってあって、なんとかそれまでに、ビザが取れたそうだが、その人はかなり苦労していた。

ガールフレンドやボーイフレンドだったら、米国人の常識としても頻繁に会いに行くのが当然なので、入国審査も楽勝だろう。

→ 読者の方から、「ガールフレンドやボーイフレンドに会いに行く」と答えると、そのままオーバーステイしてしまうのではないかと疑われる、との情報を頂いた。

カンクンでも一泊二日は駄目な場合も

先日、フィリピンのシキホール島まで来られた日本人男性からの情報だが、米国からカンクンに行って、土日の一泊二日で帰ってきたら、米国での入国審査でもめたそうである。
彼は、ビザなしだったが米国に長く仕事で滞在していて、3ヶ月の期限が迫ったので、一旦メキシコに出国して、再度米国に3ヶ月滞在できるようにしようと目論んだのであった。

ところが、米国人がハネムーンで行くようなカンクンに一泊二日で行くのは、常識外れで、普通はしないことなので、もめたそうだ。勿論、滞在できる期間を延ばしたいという魂胆が見え見えだったことも影響しているのだろう。


別室送りの事例

何で100回も米国に来たのだ?

前回の別室送りの事例を紹介しよう。

観光地のニューヨークに行くだけなので、すんなり入国できると期待したのだが、残念ながらまたまた別室送りになってしまった。そこで出てきた質問が「何で100回も米国に来たのだ?」  たまたま100回目だったのか? いちいち数えていないので不明だが、とにかく頻繁に米国に来ていると、いろいろ詮索されてしまう。仕事で何十回などと順に説明したが、なかなか放免してもらえない。 荷物を調べられ、質問が続いた。その後、カバンの中から、フィリピンの方言であるセブアノ語の練習のため フィリピンで近所の高校生に頼んで 英語の歌詞を対訳したものが出てきた。"Hello Goodbye." "For no one. (Para sa wala ka usa.)" "Strawberry Fields Forever."これはビートルズがと聞かれ、そうだと答えると、後は、すんなりと入国が許可された。ビートルズファンの入国審査官には、この対訳が免罪符になったのであった。

入国する都市の違い

前回も書いたとおりだが、どこの都市に到着するかによって、入国のし易さが、大きく変わってくる。日本からハワイやグァムに単純往復で、短期の観光に行く場合なら、入国でもめることは何もないだろう。大切なお客さんをいじめるような入国審査官がいたら、非島民扱いされるに違いない。もちろん、ハワイに泊まらずそのまま、関係ないところに行ってしまうような輩は お客さんでも何でもないので、こってり絞られても仕方ないだろう。

サンフランシスコやロサンゼルスの場合も、同様にして入国審査でもめることは、少ないはずだ。前述の別室送りの2週間ほど前に、サンフランシスコから入国したが、何の問題も無かった。

私の場合、デトロイトからの入国は 気が重いのだが、先のカンクン一泊二日の情報を頂いた人によると、ポートランドでは、同じ会社の人が、立て続けに入国拒否を受けたそうだ。自動車メーカーの人がごく普通に出張しようとして、入国拒否を食らったので、その会社では、ポートランド便は使わないようにしたとのことである。9.11もあって、その後 ポートランド便は消えてなくなった。しかし、別の航空会社では、ポートランド便を就航させるところもある。


次の一手

次回の米国行きの準備の意味合いもあり、まとめてみたのだが、では 次回入国審査で質問されて、どう答えるのかと言っても、なかなか妙案は浮かばない。

ほんとだったら、UA810便でSFOで入国というのが 一番気乗りがする。しかしながら、NW利用が多くなり、特に関西から出発するとなると、どうしてもデトロイト入国になりがちだ。

「何で100回も米国に来たのか?」と、また聞かれたら、「100万マイラーのカードが欲しかった。」と答えるか?
次回は、まずソルトレークシティに行くのだが、「どうしてそんなところに行くのか?」と聞かれたら 「ホームページに写真を載せたい。」と答えるか?
沢山目的がないと、航空券代の元は取れないと思っているので、その中で、どの目的を言えば、すんなり入国を許してくれるのか?

次回はすんなり、関所を通れるのか? またまた別室送りか?
結果は、この後に 追加することになるだろう。

いつでも誰でも当てはまって、嘘ではない、入国の十分条件となりうる汎用の答えを用意したいものだ。


(2004年6月追加分)

観光、1週間でOK

予告してあったように、今回2004年6月分の米国入国の結果を紹介する。

なんと 心配とは裏腹に、こちらが答えたのは「観光」、「1週間」この二言だけであった。これまで、ほとんどの場合にサンフランシスコで答えていた言葉と同じで、楽勝だった。

楽勝の理由を詮索してみる。
今回も、NW70便KIX/DTWを利用したのだが、ほとんど同時にNW72便NGO/DTWすなわち、マニラからフィリピン人を一杯のせた便も到着していた。そのため沢山の人で混雑していた。

できるだけ、空いている列を探そうと、いつものように、前へ前へ、番号の若い方へと進んで並んだ。しばらくして、前の方を伺い、入国審査官の顔を見てピンと来た。以前、入国審査でやたらと書き込みして、記録を残し、そして、別室送りにしてくれた人物に違いない。

これは、駄目だと思い、これまで並んだ分を さっさと放棄して、別の列に並んだ。
すると、全体に列が短くなりだしていた。よくあることだが、米国人とグリーンカード保有者の列が 空いたので、一般の外国人も そちらで処理し始めたからであった。

そこで、米国在住者用の列に移動し、確か58番だったと思うが、端から2番目か3番目のところまで移動して、並び直した。私の前の日本人退職者夫婦が もたついているので、ここもまずいかと思ったが、彼らが別室送りにされそうな風ではないので、そのまま並んで入国審査を受けた。帰りの航空券を調べたりもせず、「仕事か?」「いや、観光だ。」「滞在期間は?」「1週間ほど」という、定型のやり取りであっさり終了。航空券を調べないのと同様、以前に書き込まれた私の記録など、いちいち見ていないようであった。

とにかく、普段から処理が早い米国在住者用の列に、後から加えてもらい、その中でも、別室送りが無さそうな列を選べば、入国OKの十分条件に近いのではないかと思われる。
次回も同じ方法を試す予定である。


読者からの情報

読者の方から、非常に参考になる情報を頂いたので、以下、そのまま引用しておく。

「最私は何十回も訪問しているアメリカに「観光に来た」などど言うのもしらじらしく思い、具体的な目的を言うようにしています。「カジノで勝つために来た」とか、「ダブルマイルなのでデルタに搭乗するため」だとか、「エリートレベルを維持するため」や「UAアップグレード券のエクスパイアが3月いっぱいなのでそれを使う為」とか、ニューヨークやタンパなら「松井を見にきた」やオーランドなら「ミッキーマウスに会いにきた」なんて言ってます。滞在先は個人の住所ではなく、必ずホテル名を記入しています。

あとは日本に帰る必要があることを示します。それは日本で仕事をしている事です。私は顔写真入りの会社のID(本当は入館証)を提示します。他に名刺をだすこともあります。多くの場合最後はこのIDで入国スタンプをバンバンとおしてもらってます。

ダブルマイルキャンペーンなど、マイレージ関連の理由を どしどし答えて、それで すんなり通る実績をつくっていきたいものだ。

さらに、同じ方から、「異性の友人に会いに行く」と言うのは考えもの という意見を頂いた。そのまま、ガールフレンドあるいはボーイフレンドといっしょに不法滞在されることを嫌う為、難癖を付けられる。「同姓の友人に会いに行く」という方が良いとのことである。

同姓の友人にも会いに行くのならば、そちらの方を言っておいた方が良いのかもしれない。
ただ、異性の友人にしか会いに行かないのに、同姓の友人に会いに行くと嘘をつくのは駄目である。
私は未経験なので よくわからないが、頻繁に米国に来ている人なら、「今回は3日だけしかないが、ガールフレンドに会いに来た。」と答えても十分通用しそうな気がする。
フィリピンや台湾あたりから若い女性が一人で初めて米国に来て、「ボーイフレンドに会いに来た」などと答えるとかなり難しいそうだし、実際にも、ほとんどの場合、入国審査官が疑うように オーバーステイしそうな気がする。



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