2002年 香港特集 第3部

香港飲茶に異変  即叫即蒸方式の台頭

2002年 10月作成
2009年5月最終更新



(2009年5月追加) 一時の不動産の高騰が影響したのではないかと思われるが、広い面積の店の維持は難しく、即叫即蒸の方が、確実に増えてしまった。個人的には、従来からのワゴンで押して来る方が好きだが、下に示してあるように、二つの方式はそれぞれ、多長多短がある。ただ、味はどちらも同じなので、たまたま見つけて入ったところがどちらでも、特に問題ない。ここの話は、内容的には特に更新も不要であろう。

飲茶の各種点心。日本人に向かないのは、鳥の足を使った点心くらいだろう。はずれはほとんどない。日本のスーパーで買う 餃子やしゅうまいの味とは比べものならないほど美味だ。

前回の特集に引き続き香港飲茶を しつこく紹介する理由は、私自身が飲茶に魅せられているためでもあるが、それとともに、香港に来て、飲茶などは気にもかけず、一度も飲茶を経験しないまま 帰ってしまう人を結構 見かけるからである。以前、香港のユースで一緒に泊まっていた日本人学生を飲茶に連れて行った時のこと。 彼らは もともと飲茶には全く関心がなかったようだが、一緒に行って、実際に店で試してみると、驚くほど感激していた。香港飲茶は安くてうまい。コストパフォーマンスが良いのである。

さらには、飲茶に関心があっても、行った経験がないと、結構 難しい。 何も知らないと なかなか飲茶にありつけない。 まずは、慣れていないと店に入りにくい。飲茶は 通常、酒楼とか酒家とか看板のあがっている店で出されるが、特に酒楼の場合、ビルの2、3階にあり、エレベーターで上がることが多く、分かりにくい。また、入り口には何百HKドルもする夜のメニューのことが書かれていたりして、高そうで敬遠してしまう人も多い。しかし飲茶なら値段は手頃。心配せずに入って良いのである。
その他 ノウハウの詳細は
前回の特集に譲ることにする。 


さて今回は、即叫即蒸方式の紹介である。

これまで飲茶と言えば、おばさん、おばあさんがワゴンに点心を乗せて、回ってくる場合が多かった。ところが最近は即叫即蒸と呼ばれる方式が急伸している。テーブルにおいてある注文書に必要な注文を記入して 係員に渡すや否や、すぐに蒸し始めて 注文の点心が届けられるというシステムのことである。今回は4軒入ったが、その中で これまで通りワゴンを押してくる店は 一軒だけでだった。その他は、即叫即蒸だけに対応していた。以前も 混在型は よく見かけたが、今回は即叫即蒸のみの店ばかりに出くわし、注文しないと いつまで経っても点心にありつけなかったので、その大きな変化に気付いた次第である。

従来方式のワゴンで、
点心を運んでくる様子

即叫即蒸方式の注文書
ある店で観察していたところ即叫即蒸の注文は、即 端末(写真中央)に打ち込まれた。


香港飲茶と言えば、何と言っても ワゴンで押してくる点心の実物を見ながら選べるのが楽しい。即叫即蒸などは邪道だというのが、私の基本的な意見だ。しかし、ここでは、少し譲って、従来方式と、即叫即蒸方式のメリット・ディメリットを比較してみた。

 

メリット

ディメリット

従来方式
・早い。ワゴンが来るや、食べ始められる。
・実物を見て選べるので、間違いが少ない。初心者にも簡単。
・香港飲茶のこれまでのイメージに相応しい。
・沢山お客が来ても対応力がある。
・売れ残りが発生する可能性あり、値上がりにつながる。
・特殊なものはなかなか回って来ず、食べられない可能性が高い。
・座る場所により有利、不利がある。
・適当に点心を選ぶと、値段が結構高かったことに、後で 気付くことがある。

即叫即蒸方式
・自分の好きなものを選べる範囲が広がる。
・大・中・小といった価格区分を気にしながら発注し易く、財布に優しい。
・売れ残りが発生せず、コストダウンできる可能性がある。
・ワゴンのおばさん、おばあさんの人件費を節約できる。
・座る場所による有利、不利がない。
・点心の名前を覚えるのに便利。
・即叫即蒸と言っても、注文してから少し待つ。
・これまでの飲茶のイメージを損なっている。
・見込み生産(見込み蒸し)でない分、大量の注文が来た場合の対応力に劣る。
・点心の名前をそこそこ理解していないと、発注が難しい。
・現物を見ながら選ぶわけではないので、慣れないと量が分かりにくい。

比較したからといって、どうということではないが、現実に多く採用されるようになった即叫即蒸方式にも たくさんのメリットがあることがわかる。そうかと言って、従来方式が無くなるのは困る。両方に対応するようになって、ワゴンでは余り回って来ないものを、即叫即蒸方式で注文する。さらには、どこか一箇所の店に集中して通い、即叫即蒸で、すべての点心を制覇する。そんなことをすれば、とても楽しそうだ。

また、即叫即蒸方式はワゴンのおばさん、おばあさんのリストラを狙ったかどうかという点は気になるところだ。



 最後に二つ補足しておく。

今回行った店の中で、かたくなに従来方式を守っていたのは、私がいつも通っている倫敦大酒楼という店である。前回の特集でも紹介した店だが、地下鉄の油麻地を出たところにあるので、初心者でも行きやすい。庶民的な値段で、味も申し分無いため 私は良く行くのだが、いつ行っても賑わっている。 しかしながら、ここが どれだけコストパフォーマンスが良いかは、まだまだ検討の余地がありそうだ。ガイドブックには出てこない地下鉄の駅でフラッと降りてみると、さらに安そうな店を見かけることがあるからである。観光客が行かないところには、さらに安くて美味しい店のある可能性がある。これも今後の課題としたい。

次に新聞の話題。飲茶屋の前には必ずと言ってよいほど、新聞を売る露店がある。飲茶には新聞が不可欠と言っても過言ではない。飲茶で席に座って、ゆっくり新聞を読むのはとても楽しい。

さて、飲茶の雰囲気と新聞の組み合わせも楽しいのだが、香港の新聞自体も楽しい。余り真面目とは言えないが、香港の新聞の中には日本の週刊誌的な要素を含んだ物が多い。今回買った新聞の中で その一例を紹介する。

「悪妻狂鞭夫」 

金銭のトラブルから、35歳の妻が虐夫(日本ならDV妻?)。48歳の夫を鞭で打ち、夫の背中にあざを負わせた。書いてあることが すべてわかるわけではないが、広東語も漢字なので、雰囲気は伝わってくる。
また、香港には、英語の新聞もあるので、書かれている内容を、より正確に知りたい場合は、そちらを買えば良い。ただし、英字新聞の場合は、日本の週刊誌的な要素には欠ける。



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