山の上の絶景に日本人Hさんが建てた9万ペソのコテージ 

2014年8月作成
2018年10月最終更新


フィリピンのインフレについて

日本ではデフレが言われて久しいが、フィリピンでは基本的にインフレが続いている。最近の10年程度では、年率2%〜8%程度のインフレ率になっているが、平均すると4%程度だ。これで概算すると、5年で20%、10年で50%とみても、大きな違いはなさそうだ。(4%でもう少し細かく計算すると、5年で1.22倍、10年で1.48倍となる。)

金額について、後から再見積もりをしていない場合には、これらの数字をもとに、読んだ時点でのおおよその金額を予想して頂きたい。

建築途中のHさんの自宅コテージ

右の写真の手前側には、次回 さらにバルコニーを追加して、食堂と調理場にするとのことだ。
電柱がすぐ横に立っていて、電気を引くのも非常に安く済む。


2012年の台風24号の被災地支援でやってきた日本人のHさんは、シキホール島の山の上の被災地である現地に着くや、ここが終の棲家と直感で悟り、ホームステイから始めて、日本と現地を何度も行き来した後、2年後に自宅となるコテージを建てられた。

アクセスはお世辞にも良いとは言えないが バイクなら行けるし、何よりも山の上からの海の眺めが絶景で、さらに涼風でエアコンも要らない。

建物は、写真の通りの典型的なニッパハットで、図面なしで作り始めるやり方は私とは意見が異なるが、その分、折角だからと、ラウティングと言われる屋根裏部屋も後から簡単に追加され、一人で住むなら十分な広さとなっている。見た目にもお洒落で、費用も日本人にとっては かなり安くできていて、いろいろな点から、合格点を十分上回っているのは間違いない。強いて難を言えば、造りが現地レベルで頑強とは言いがたく、私が思っていたよりは、かなり大きめで、メンテに時間・費用ともそれなりにかかってくるだろうと予想されることだ。他の日本人が建てたコテージや家で、メンテを放棄している場合が散見されるが、理由は、カポイ(面倒臭い)、予算不足、時間不足等である。そうならないように、長くメンテしてもらうようお願いしているところである。

余計かもしれないが、当初の私の提案は、床や柱のフレームは木ではなくて、8インチ x 8インチくらいで、鉄筋とコンクリートで作ればどうかということであった。そうすれば、シロアリに食われても、建物が倒壊するようなことはない。残念ながらそれは採用されなかったが、これを読んでもらっている方には、是非参考にして頂きたい。

現地の眺め


費用

項目 説明 単価 数量 金額
ニッパ(Sak sak) 茅葺 30ペソ
(ちょっと高過ぎ)
230枚 6900ペソ
アマカン
4ftx8ft
竹の板
厚手のもの
200ペソ 20枚  4000ペソ
〜6インチ 約50ペソ/kg 約30kg 1500ペソ
セメント 基礎2、トイレ6 240ペソ 8袋 1920ペソ
基礎、トイレ用 60ペソ(高い) 20袋 1200ペソ
砂利 基礎、トイレ用 280ペソ 一式 280ペソ
鉄筋 10mm トイレ用 150ペソ 6本 900ペソ
鉄筋 8mm トイレ用 55ペソ 5本 275ペソ
針金 鉄筋固定その他 60ペソ 2.5kg 150ペソ
PCVパイプ 2インチx10ft
トイレ用
100ペソ 1本 100ペソ
PVC L PCV接続用 16ペソ 3個 48ペソ
PVCソルビン PVC接着用
ソルビン酸
40ペソ 1缶 40ペソ
便器 カバーなし 600ペソ 1unit 600ペソ
防虫薬 地面散布用 340ペソ 2本 680ペソ
床用等 40ペソ 28本 1120ペソ
ノミ ココナツ材加工 485ペソ 2本一式 485ペソ
ココナツの木 チェーンソーで切る前の木 300ペソ 9本 2700ペソ
ココナツ
加工費
チェーンソーで切る代金 6ペソ/voolft 1325vol feet 7950ペソ
ココナツ
運搬代金
山道を運ぶ 2ペソ/volft 1325 vol feet 2650ペソ
母屋の工事
大工の賃金
大工の日当 300ペソ/日 6日x4週x2人 14400ペソ
母屋の工事
ヘルパー賃金
ヘルパーの日当 250ペソ/日 6日x4週x1人 6000ぺソ
トイレ工事
大工の賃金
大工の日当 300ペソ/日 6日x1人 1800ペソ
トイレ工事
ヘルパー賃金
ヘルパーの日当 250ペソ/日 6日x1人 1500ペソ
合計 - - - 約5万7千ペソ

未着手・未加算分

キッチン・食堂用バルコニー

ニッパ 約100枚 約3000ペソ
ココナツ材 約400vol・ft 約4000ペソ
釘 約10kg 約500ペソ
大工ヘルパー 各1名 約10日 約5500ペソ
竹 約10本 約400ペソ

窓、扉

仕様によりまちまちだが 予想見積もり 約1万ペソ

電気工事+照明等

これも仕様によりまちまちだが 予想見積もり 約8000ペソ

未加算分まで、想定で加え 合計は9万ペソ程度

材料に関する補足説明

今回の一番のお勧めポイントは、ココナツ材であろう。直接ココナツの木を一本いくらで買って、チェーンソー業者に頼んで切ってもらっているのでかなり割安だ。体積の単位は、通常ボル・フィートが使われ、これは、1フィート(約30cm)x1フィートx1インチ(2.54cm)で、日本にあるもので例えれば、瓦を平らにしたようなものくらいの体積に相当する。ここでは、山道を人に運んでもらっているので、1ボルフィートあたり2ペソの運送費がかかっているが、それでも1ボルフィート当り10ペソ程度で済んでいる。以前は、最安値で1ボルフィート6.5ペソで買えたこともあるが、最近では15ペソはする。昨年の台風30号の被災地の一つであるバンタヤン島では、やしの木は産地で、台風で倒れていくらでもあるが、1ボルフィート20ペソをはるかに越えて、復興景気というより、復興ぼったくりが横行している。場所によっていろいろだが、とにかく、10ペソは十分安い。

壁の材料である竹製のアマカンは、値段は高めだが、通常よりかなり分厚い。そのため、通常より長持ちしそうだ。

土地

土地は、現地の人なら家族で50年住み続ければ自分のものにできると一般に言われている国有地だと当初の話では聞いていたが、その後 地主と主張している人が現れたそうだ。それでも、近所の人たちと同様で、個人で小さな家を建てて住む分には、ただで土地を使ってよいと言ってくれたそうだ。不在地主なら後から、とんでもない要求をつきつけてくる可能性もあろうが、現地の人もそうやって長らく住み続けているし、とくに問題は出そうにない。親切な日本人が現地の人を支援しながら仲良く暮らそうとしているのに、前言を翻して、後から高額の地代や立ち退きを要求したりしたら、地主も現地に住み続けるのが難しくなるはずだ。
そうは言っても、タイトルやTax declaration がどうなっているのか、私も興味があるし、家を建てるのと順番が逆だが、確認するのをフォローしたい。

訪問者用コテージの拡張

この場所は、前が斜面で、少し降りた場所は、上からは見えずプライバシーも保てるし、景観に影響を与えない。そこで、階段で下りられるようにして、下のほうに小さなコテージを建てれば訪問者ものんびり滞在できる。私の方からもそのように提案したら、本人も乗り気で、コテージを追加で建てて、何度もきているベテランバックパッカーが遊びに来たら泊めてあげると豪語されているので、期待できそうだ。この方は、私のところにもかなりの期間無料で泊まっているので、そちらも無料で泊めてもらえそうだ。

ここからは私のイメージだが、茶室のような小さな作りで、横にバルコニーは付け、さらに、離れてパラソルのようなものがあり、その下に椅子を置くかハンモックを吊るす。材料費は1万ペソが目標で、柱と屋根だけ取り付けた後は、訪問者に大工仕事をしてもらう。どうせ来た人も暇だろうから、大工作業で貢献してもらうのが良さそうだ。

人間関係

近くに 三兄弟が それぞれの家族とともに三軒の家に住んでいて、子供たちも多くて 賑やかだ。もともと被災者の支援でやってきたくらいなので、来た人の性格、目的などから、人間関係が悪くなる要素が見当たらない。実際、家族同様というより家族の一員となって この方は暮らしていて、良好な関係が続いている。

他の三軒の家に比べて、この家は、予算、大きさなどでかなりレベルが上だが、この方が亡くなったら近所の子供たちにこの家をあげることにしているので、もらうなら立派な方が良いということになるはずで、通常よく起こるように嫉妬されることもない。このような片田舎で周りが貧しいのに、外国人が立派な家を建てたら、嫉妬されるのが必定であろう。

よく例えに使うが、もしも、中国人の金持ちが日本にやってきて、数億、数十億円で豪邸を建てて、若い日本人の女性を高給で雇い、水着姿ではべたしていたら、周囲に住む普通の日本人は面白くないのは当然だろう。戦争になってもおかしくないと、そこまでは言わないが、その手の感情が浮かんでもおかしいない。比率で言えば、その程度の経済格差が、日本人が日本で支払うような金額の家をフィリピンで建てた場合と、フィリピンの田舎の人たちの普通の家との間では起こっている。嫉妬されない方がおかしいと言える。

建物に注目して嫉妬の問題を考えてみたが、実際には、それ以外にもいろいろある。人事のように書いているが、自分自身のことでも、例えば、停電が続くので、バッテリーで稼動させるため、LEDのバルブを買って来たら、そんなものを持っているだけで、かなりプレッシャーがかかる。以前から続く話をすると、ビールは田舎の人には高いので、現地の人はなかなか飲めない。それで、私の場合、家の中で、また 最近だと、外から見にくいバルコニーで、こっそり飲むということになる。自宅の前にプロックと呼ばれ、誰でも使えるようにした休憩場所があるが、近所の人も来るので、そこで飲むのなら、ビールを沢山買ってきて他の人にも振舞わないと厳しそうだ。

この方の場合、食事は、現地の人たちと同様の質素なもので満足しているので良いが、もしも食事で贅沢したくなったら、家族同様に付き合っている近所の人たちの人数分が食費に掛け算で影響してくるのは必定で 財布がもたなくなる。


最後に、写真を少し追加しておく。

建物の横から海側を見た様子
自然を満喫するには最高の場所だ。

隣のチャペルに設置した日本から持参のドラム
いろいろ揃っていて、こちらの方が家より高いのでは
ないかと思ったりするが詳細は不明。

(参考) 約30万ペソ、日本人Nさん宅の建築事例@シキホール島


(2018年10月追加)

残念ながら、オーナーは引っ越されて、空き家になってしまった。将来は、近所の子供たちに無償で譲渡するという話を聞いていたが、人が住んでいないと、長持ちさせるのは難しく、どうなることか、とても残念だ。



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