約30万ペソ、日本人Nさん宅の建築事例@シキホール島

2010年3月作成
2018年10月最終更新


完成当時の家の外観

フィリピンのインフレについて

日本ではデフレが言われて久しいが、フィリピンでは基本的にインフレが続いている。最近の10年程度では、年率2%〜8%程度のインフレ率になっているが、平均すると4%程度だ。これで概算すると、5年で20%、10年で50%とみても、大きな違いはなさそうだ。(4%でもう少し細かく計算すると、5年で1.22倍、10年で1.48倍となる。)

金額について、後から再見積もりをしていない場合には、これらの数字をもとに、読んだ時点での おおよその金額を予想して頂きたい。

(→2011年11月更新分へ)

シキホール島で、日本人が建てているセカンドハウスの建築事例を紹介する。この方は、こちらのHPで家の建築予算を50万円と提案しているのも考慮してもらったようで、予算が約25万ペソ。 ただし、オーバー気味ではある。オーナーは、こちらのHPで提案している内容に賛同して、近所の貧しい人々への支援活動に興味を持っておられるので、家の建築で失敗して、その後の取り組みが頓挫しないよう、私の方でもいろいろとフォローした。私もこの建築にかなり首を突っ込んでいるので、ここで取り挙げた。

今回は、当初、オーナーが、ほとんど建築現場に不在という状況になってしまったが、少なくとも、こちらのHPを参考にされている方は、この点だけは、是非、真似をしないよう お願いしたい。日本なら、家の建築は業者に任せてしまうのが普通だが、この日本の常識をフィリピンに持ち込んでは、とんでもないことになる可能性が非常に高い。シキホール島でも、そんな日本人だらけである。拡張性を考慮した大きくない家を建てて、自分で財布の紐をしっかり握り資材の買出しに行き、建築にどっぷり首を突っ込んで、現場をしっかり見張っていれば、とてもおトクに家を建てられる。



建築の概要

この方は 山の上のかなり涼しい場所に、現地で知り合ったフィリピン人の土地を無料で提供してもらって家を建てている。
建物の広さは5m x 8m = 40uの予定で進めて、実際には台所の部分が少し拡張されている。さらに、玄関のひさしがかなり伸びて、バルコニーのようになっているので、屋根はかなり大きく、さらに、ブロックをかなり高く積み上げていて、屋根裏もしくは中二階の部分もあり、全体にかなり大きく見える。実際にも、十分な広さの家と言え、当然のように近所では一番立派な家である。

予算

予算は約25万ペソだが、既にオーバーしている。1ヶ月で完成する予定であったが、いろいろ課題があって、実際には2ヶ月を越えしまっているのが 予算オーバーの第一の理由である。
また、約25万ペソというのは、最初に積み上げた値段をそのまま使っているが、フィリピンで普通に家を建てた場合、後から いろいろと不足分が発覚するのが普通なので、人件費以外でも、同様にオーバーしている。

大雑把に言って、最初に積み上げた合計が、予算の2/3くらいに収まっていれば、もしくは、予備費として50%くらいをさらに積んでおければ、なんとか予算を達成できそうに思う。これは、非常に大雑把な話だが、それほど外れてもいないはずだ。 そんないい加減なら、積み上げしても仕方ないという意見が出て来そうだが、そうではないと言いたい。特に日本人の場合で、オーナーが予算の中身に関知せず、全く人任せにして、後から膨大な追加の出費が出てくるか、もしくは、最初から吹っかけられているか、いずれにせよ 大金を無駄にしている事例は枚挙に暇がないからである。

最初に、私の方から「予算の積み上げをした方が良い。」と提案したところ、「現地の人はそんな計算はできない。」という答えだった。しかし、数日後に再訪したら、このオーナーが見積もりのできる人物を探してきて、一緒に計算して、既に積み上げはできていた。

今回の建築について、100点満点ではないが、十分合格点と私は思う。しかし、オーナーは、予算オーバーは困るということである。それなら、もう少し余裕を見た予算・計画にして、金額ありきなら、拡張性を考慮しながら 小さく建てて、必要に応じて増築するという案をオススメしたい。もしくは、もう少し安くあげられるノウハウと蓄積してから始めて頂きたいと言いたい。現状では、意見の食い違いもあるが、しばらくすれば、ほぼ賛同してもらえると思う。

オーナー不在の対策

フィリピンで家を建てるなら、財布の紐は自分でしっかり握って、自分で建材の買出しに行き、現場に居て、大工の仕事ぶりを見張っておく。以上を是非お願いしたいものである。もしも日本に帰るなら、その間は、工事を止めるようにお願いしたい。居ない間に、大工とお金を管理している人がとんでもないことを起こす可能性が高いのと、見張っているかどうかで、大工の働きぶりにも大きな差が出る可能性が高いからである。運良く働き者の大工に当たっても、オーナーの意図しないものが出来てしまうリスクもある。

しかしながら、今回は、オーナーがほとんど不在のまま、建築が進むことになってしまい、既に進行しているので私のお願いは聞き入れてもらえなかった。

幸運なのは、任せている現地の知り合いが非常に良い人で、私の見立てでは、現地の人々の中で、偏差値で言えば70以上で、上位数パーセントに入る善良な人だということである。実際にもそれに間違いないはずだ。任せておいてもインチキはしないと思われる。

ところが、そうは言っても難しいのがフィリピンである。親戚の一人がやってきて、悪知恵を授けて、悪の道へと引っ張り込むというのが、本やインターネットでも良く見かける例である。最初は良くても、後から変な方向へ進んでしまう可能性がないとは言い切れない。
そこで、対策として、私の方は、この手の建築には詳しいので、計画時点でいろいろ話に加わるとともに、かなり距離が離れているが、毎週、進捗確認に出向いた。

建築の様子

一週間後

柱を立て、ブロックを少し積み上げたところ。全残念ながら、この時点で、1ヶ月では終わらないことが容易に見積れた。大工はまじめに働いているので、かかる時間と、品質のトレード・オフという話になる。しかし、ここでは柱を立てるだけに、一週間近くかかっいて、家の大きさにしては時間がかかり過ぎていると言えよう。それよりは、そのままブロックを積み上げ、同時に併行して、柱の部分にコンクリートを流し込む工法の方が かなり早くできる。

二週間後

ブロックがほぼ積み終わり、屋根の工事に取り掛かったところ。

三週間後

三週目は、雨が降ったり、葬式に全員で出掛けたりして、あまり進んでいなかった。

四週間後

ここまでで14万ペソ

第四週は、予算も少なくなり、人が半分以下に減ったが、なんとか屋根がついて、雨が降っても安心な状態になった。

使っている材木の一部。 硬くて長持ちする木を使っている。

費用

初回の建材購入が約4万2千ペソ。内訳は

 ブロック1000個 x @15ペソ = 1万5千ペソ
 セメント 60袋 x @約220ペソ 
 砂、砂利、鉄筋、釘 などである。

当初は、これも加え、合計7万ペソでできるところまで、やらせて、第一期工事とするという話になっていたので、ブロック積みはできても、屋根までは無理かと予想していた。それが14万ペソに変更され、予算的には かなり楽になっていた。私の希望では、8万5千ペソで屋根がつくところまで、進めて欲しかったが、結局14万ペソかかって 1ヶ月が経過した。

上の4万2千ペソに加え、 

 ・材木 約1300 volfeet x @23ペソ = 約3万ペソ
 ・アルミのトタン 60枚 約2万ペソ
 ・Gutter (雨どい)
 ・4週間分の人件費等 約4万ペソ?(大工4人@250ペソ、ヘルパー4人@150ペソ)

以上で14万ペソになってしまったとのことである。

大きな差が出た理由は以下の通り幾つかある。

・トタン板を亜鉛メッキでなくて、アルミに変えたので高くついた。しかし、これは錆びないメリットを考えれば、少々高くついても正解だろう。
・材木の見積もりが 私の方では 必要な角材を、サイズごとに1本1本積み上げて計算して 1万5千ペソとしていたが、実際には3万ペソかかっていた。私の見積もりには加えなかった内側の壁などの分も買っているということだが、私が現場で見たところでは、曲がっていたり、木の外側のヘタの部分で、重要な部分には使えない木を 結構見かけた。木の売り手は、自分の所有する大きな木を何本か切って、全部売り切りたいという気持ちが伝わってきた。私の方で、現場で ずっと見張っていれば、クレームとつけるところだが、たまに行く程度では、それもできなかった。
大量に木を使うのであれば、木の持ち主から直接、切らないまま何本か木をまるまる買って、別途チェーンソーのオーナーを雇って切ってもらうか、自分のチェーンソーで誰かに切らせるか、とにかく、切らずに買えば、かなり安く済ませられる。私の近所の人たちも、そうしている場合が多い。しかし、高々三万ペソ。そこまですることはないとも言える。
・ブロックは、私の近所では、現状では、@9.5ペソで配達してくれる。これに対して、こちらは山の上なので、15ペソもしている。直接の製造者からではなくて、建材屋が仕入れて、収めるので、これくらいの値段になるとも言えるが 割高だ。自分で、トラックをレンタルしてきて、ガソリンを買い、それを製造者に使わせ納入してもらえば、安くなるはずだ。元々 配達無しなら8ペソ程度だが、自分で運ばせた場合は、すべて含めて11ペソ程度で済むはずだ。しかし、これも、高々1000個程度なら、そんな手間をかけるのは現実的ではないとも言える。それよりも、中抜きして、直接製造者と交渉するのが良さそうだ。
・ブロックと同様で、砂と砂利も、輸送コストのため、倍以上の値段になっている。沢山買うなら、ブロックと同様、自分で車と人を手配して、持って来る方がはるかに安い。砂利については、場所にもよるが、田舎だったら近所の子供たちから買うのをおすすめしたい。私も これまで、セメント袋に何百袋も買っている。
・4週間もかかってしまったので、人件費も大幅オーバーだが、これについては、工法に工夫の余地があるという話と、オーナーに現場監督して欲しいという話になる。
また、途中で電気カンナが故障して、工事全体の進行に影響しているのも課題である。待ち時間が生じると、工賃の高い大工まで、床にしく岩を集めだすような事態になり、全体の費用に影響している。対策として、電気カンナの持ち主を、高給で雇う羽目になったりしている。私の方から、電気カンナを貸そうかとも考えたが、既に予備の1台が壊れていて、残りを貸すと、こちらで雇っている大工の分がなくなるので止めた。

ラーニングセンターとの比較

一昨年に建てたラーニングセンターの場合は、これとほぼ同レベルで、屋根が付くところまで、工数5日x8人で、費用は約55000ペソであった。比較するとこちらのオーナーから嫌われるかもしれないが、読んでいる人の参考のため、比較させてもらいたい。ラーニングセンターの方は、広さは5mx6mで30平米。造りはただの小屋だと言われそうで、現状では便所もない。それでも、万一、この程度の建物に住むことになったら、便所は最初から付けるか、別に後から増設できる。 とにかく便所は現状に比べ追加で必要だが、あとは、カーテンをつけたり、内装をそこそこ整えたりして、ラーニングセンターをベースにしたものでも、十分住めると私は思う。ただし、人によって許容範囲の違いはあろう。

工事5日目のラーニング・センター
盗難対策で窓・扉に板を打付けてある
ここまでで5.5万ペソ

ラーニングセンターの現況

(参考)

ラーニングセンターの工事 1日目〜5日目
ラーニングセンターの工事の様子 6日目〜15日目
ラーニングセンター費用一覧

その後

私の方は、1ヶ月経過した様子を確認した後、しばらく出掛けてしまい、その後は忙しくて現地に赴いていないが、2ヶ月余りで、ほぼ完成したとのことである。現地に戻ったら、確認して、続きを更新する予定だ。予算の25万ペソをオーバーしたという話は聞いているが、具体的に、何がどれだけかかったのかは、確認できていない部分もある。それについては、後日の更新時に情報を追加したい。ただし、どこまでやるかにより、費用はいくらでも変わってくる。この家が具体的にどうなったかより、幅を持たせて、どういう可能性があるかを書いた方が 読んでいる人に より参考になるので、今回は選択されなかった いろいろなオプションを含めて説明する。

 見積もり 約1万ペソ

フィリピンで一般に使われている窓は、他でも何度が紹介しているが、ジェロシーと呼ばれているガラスのブレードが10cm程度の幅で 横長に分かれているタイプのものである。日本の感覚からすれば かなり安い。幅55cm、ブレードが12枚程度で、枠1つに対して400ペソ程度で、これは10年前からあまり変わっていない。予算は窓の多さに比例するが、家が80平米くらいまでなら、これを使っておけば、窓の予算は、1万ペソで十分であろう。ただし、これには窓枠の予算は含まれず、窓枠が結構高くつく。木の窓枠の場合、材木と工賃で、ジェロシーと同程度かかる可能性もある。そうは、言っても窓の数を少ないと、風通しが悪く 家の中は暗くなるので、窓は沢山取り付けたいものだ。
窓枠をセメントにすると、もう少し安くできる可能性もあるが、大工の腕が悪いと時間がかかり、精度が悪くなる可能性もある。セメントの窓枠なら、雨で木が湿って、虫が食うこともない。私の自宅の場合、雨は風を伴うことが多く、横から飛んでくる場合が多いので、窓枠や木の窓が 濡れて虫に食われたところもある。ただし、食われた部分に詰める材料があるので、容易に修理できる。

もう一つ良くあるのは、観音開きの窓で、現地ではFrench windowと呼ばれている。これには、木製とアルミサッシがある。場合によっては鉄製もある。木製が日本人の感覚では一番高級に見えそうである。木製の場合、既製品もあるが、ジェロシーに比べ約2倍程度の値段である。通常は窓枠の精度も良くないので、それぞれの窓枠に対して現物あわせで作るということになる。大工は、英語が通じない。小数が分からない。割り算ができないで、小学校行きなおしてくれ問題を抱えている場合があまりにも多いので、安くあげたいなら、早く正確に作れる大工を雇うのが重要になる。しかしながら、私の場合は、へそ曲がりで、わざわざ出来の悪い大工を雇い、小数を教え、効率の良い作り方をいろいろ指導して、少々コストはかかっても、スキルアップしてもらうことを狙っている。その分工賃は安くさせるが、失敗コストや自分の時間を沢山取られることを考えれば、出来の良い大工に任せるより はるかに高くついている。しかしながら、フィリピンの大工社会はとんでもなく上下の差が固定化してしまっている。大工とヘルパーと呼ばれる下働きは、日当もかなり差を付けられてしまう。ヘルパーはいつまでたっても、セメントを捏ねているだけ。スキルアップしないので 低賃金のままだ。

この話は、私がサラリーマン・エンジニアをしていた時とは、とんでもない違いがある。デジタル回路の設計の仕事を始めたが、やらせてもらったのは最初の1年くらいで、その後、「お前が設計していては、後輩が育たないから、指導に回れ」と言われ、さっさと現役引退を迫られた。それだけでは面白くないので、追加でやったのはサンデー・エンジニア。闇プロジェクトとも言えるが、遊んでいたのではなくて、先々必要になりそうなものを勝手に設計していたということだ。

木製のFrench windowを練習を兼ねて作らせるのはリスクが高いが、下克上に一石を投じたいという気持ちも理解して頂けたかと思う。そのため、話が横道にそれているとも思えるが、削除せずそのまま残した。

French windowのもう一つは、アルミサッシをつかったものである。私の家では、材料の耐久性や価格を比較するため、窓はいろいろなものを試している。アルミのFrench windowも試したが、こちらは、ジェロシーに比べ約7倍コストがかかった。安く済ませたいなら現実的ではない。もちろん、金属なので、横殴りの雨にあっても、虫に食われる心配はない。それが目的なら、窓枠も木ではダメで、セメント等で作るべきであろう。


扉 見積もり 約1万ペソ

普通に売られている既製品の扉は、三千ペソ程度である。 これも10年前とそれほど変わっていない。この家の場合、外に出るのは玄関と裏口の2箇所。家の中で、便所の扉。そして、寝室の扉で合計4箇所ということで、まとめて買った材木3万ペソとの費用の切り分けが不明確だが、おおよそ1万ペソと見積もった。

窓の鉄格子 8千ペソ

現地ではグリルと呼んでいるが、泥棒対策に鉄格子が必要であろう。ジェロシーのブレードと並行して鉄筋を入れる方法をラーニングセンターでは採用し、以前 紹介したが、それが一番安上がりだ。一般的には、外付けが多い。この家の場合もそのタイプで、全部で8千ペソとのことである。私は鉄格子など嫌いで付けたくないが、私の家の鉄格子のない窓から空き巣に入られ、警察にいろいろ相談したこともあり、実際に泥棒の進入経路となった窓を含め4つだけ取り付けて、5千ペソ払った。鉄が高騰していた時に発注したということもあるが かなり割高だった。

モルタル 見積もり 約2万5千ペソ(床込みの材料費のみ。人件費は別)

壁のブロックの上に塗るモルタルをFinishingと呼んでいるが、これの厚さに比例して、セメントを何袋使うか決まる。私の家の場合は、ブロック厚が4インチのところに両面1インチずつ塗って、6インチにしてもらった。これを1/2インチずつにするか、1/4インチずつにするかで、大きく変わってくる。ブロック積みにはセメント1:砂4に対し、Finishingでは、通常セメント1:砂2であることもあり、この工程ではセメントを沢山使う。セメント1:砂3で実験したこともあるが、左官がかなり苦労した。

ブロックが積み終わった時点で、当初の60袋のセメントが12袋だけ余って、48袋使っていたが、その後のFinishingと、床のコンクリートを加え、さらに90袋追加購入が必要と見積もった。


 追加購入のセメント 約90袋?(予想) 約2万ペソ?
 追加購入の砂(予想) 約5千ペソ
 (壁モルタル、床セメントの人件費(予想) 約1万5千ペソ)

通常は、ブロックを積むのよりも Finishingの方が、より多くの工数を取られる。

Finishingは、最初の粗塗りの上に、さらにセメントのみを薄く塗る場合もある。私の家の場合は、内壁はそのように二重にして、外壁の上塗りは 羽根車で白いセメントを吹き付け、凹凸のあるデザインにした。

床 

床はシキホール島では、20〜30cm程度の岩が沢山転がっているので、まずはそれを敷いて、次に砂利を入れ、小さめの砂利の入ったコンクリートを流し込むような手順になる。私の方でもいろいろなパターンで試しているが、やり方次第で、セメントの使用量がかなり違った。

私の自宅の場合、床は25平米程度の部屋に出っ張りがあり合計30平米弱だが、セメントを25袋使った。その時は、岩を敷き、砂利をまいたが、その後、セメントには砂だけで石は混ぜていなかった。さらに、家の周りにもセメントを敷いたが、これには、下に岩も敷かずそのままだったので、セメントを14袋使った。厚さ、表面積など正確な数字は出していないが、岩がない分、家の中の床に比べ、単位面積あたりで、かなり無駄にセメントを浪費してしまった。

これに対し、ラーニングセンターでは、床が5mx6m=30平米だが、わずか12袋だけで済ませることができ、嬉しい誤算となった。岩と隙間の粗めの砂利だけでなく、セメントにも細かめの石を混ぜたからである。セメントが少ないのは問題ではないかという疑問もあるが、小石の混ざったコンクリートはひび割れに強く、かなり強度がありそうで、これまで問題は出ていない。

タイル 見積もり 約2万ペソ

大きさ、デザインで値段は異なるが、例えば30cmまたは12インチ角の正方形のタイルで30ペソ程度。これから見積もれば、タイル代は1平米で400ペソ足らず。今回の建築なら全部で1万5千ペソ程度の予算でもなんとかなりそうである。作業は、知り合いのドイツ人の家で2人で1ヶ月くらい延々と作業していたのを見かけたこともあるが、私の家の場合は、30平米足らずだが、3〜4人x2日で終わった。タイルの大きさは30cmx30cmの正方形である。
要注意なのは、タイルの固定と高さの調整のために下に敷くセメントである。セメントの使用量が高さに比例するのは当然だが、これが3cm〜5cmなら普通だが、2cm〜10cmくらいまで いろいろある。知り合いの別の日本人の家では、これがかなり分厚かった。工事後しばらくは、タイルが割れることが少なくなかったという話を聞いたが、セメントが厚いので、乾いた後の伸び縮みにはムラがある。それが影響しているのではないかと私は疑っている。コスト削減のためにも、あまりセメントは使いたくない。

この家の場合には、全部で2万ペソの予算でタイルは張れるはずだ。

トイレ 見積もり 約2万ペソ

便器は、タンクが無ければ、5百ペソ程度からあるが、それには便座のカバーが無くて日本人はつらい。タンクと便座カバーが付いたものは、3千〜5千ペソ程度である。
床と壁にタイルを張る場合が多いが、壁の一番上までタイルを張る場合から、壁にはタイルなしの場合まであろう。日本の感覚なら、高さ1m余りか?タイルの使用量にもよるが、タイル代は、大よそ2千ペソ程度だろう。
米国やフィリピンなどの場合なら、シャワーとトイレは一緒になっているが、日本の感覚では別々だろう。一緒にしている場合なら、壁のタイルもそこそこの高さだろう。別々ならトイレの方は、壁にタイルがなくても問題ないだろう。壁にシャワーの水が当たる場合には、タイルがあった方が良いという考え方である。

一番高くつきそうなのが、マンホールの穴掘りである。大きさにもよるが、地面の硬さによって費用が大きく異なる。私のところは、地面はさんご礁の化石で ほとんど岩。シキホール島では同様ことが多い。通常は、手で掘るので、かなりの重労働だ。私は穴掘りチャンピオンを雇い2千ペソ程度で済んだ。近くの米国籍のフィリピン人のところも同様に岩だが、1フィートで千ペソ。8フィートなので8千ペソで発注したそうだ。10年余り前の話である。知り合いのドイツ人のところは、交代で一人ずつ作業にあたり、3ヶ月かかったそうだ。


シャワー関連 見積もり 約1万ペソ

前述の通り、現地風ならシャワーとトイレは、一緒だが、この家はオーナーが日本人なので、別々である。
シャワーの器具、タイル、電気温水器(3千ペソ程度〜)、その他の配管。人件費で約1万ペソと見積もった。

家の造りとのバランスで、タイルはあった方が良さそうだが、オーナーの話では、コスト削減のため、タイルは使わないとのことで、後ほど更新して、追加で情報を示したい。

炊事場 見積もり 約1万ペソ

流しや流しの上の標準的なキャビネット。流し台のタイル。全部で1万ペソ程度だろう。

電気関連 見積もり 約1万5千ペソ

私の自宅まで太い電線を引いて、そこから、近所の家々に、電気を引いてもらうというプロジェクトをしていたので、近所の電気工事にもかなり関わった。その時の最低の予算が5千ペソ程度であった。メーターを含めた電力会社への加入費用。引き込みの電線。ブレーカー。電球。コンセント。スイッチ。内部の配線等である。今回は、日本人の家で、現地の普通の家より明るくしたいというのが普通で、家の規模も加味して、見積もりは約1万5千ペソ。シャンデリアなど いくらでも高級な照明はあり、上を求めるならきりがない。しかし、全体のバランスもある。照明の最低レベルは、私が多用しているもので、天井にソケットを付けて、電球をつけるだけである。裸電球では消費電力が大きくなるが、日本でもよく見かける省エネ・タイプのもので、値段が40ペソ程度のものがあり、3〜18W程度である。残念ながら これは結構壊れるので、長持ちするものは、150〜200ペソ程度の値段で売っている。通常の蛍光灯は20W 1本のセットで、一通り付いていて、そのままコンセントに差し込めるもので200〜250ペソ程度である。カバーは無く むき出しだが、その方が明るいので問題ないだろう。

電線は、壁のFinishingの前に埋め込む方法もあるが、今回は、外に出してある。埋め込むと工賃がかなり上がる。

内装関連 見積もり 約2万ペソ

外壁および、トイレ・シャワー部分は、ブロックを積んでいるが、それ以外に、寝室および、中二階部分が、角材・ベニヤ板等木で作られていて、後からの作業になる。この家に限らず、家の大きさだけを同じとしても、内装にかける費用は、幾らでも変えられるし、最初に発注した3万ペソの材木の残りも使えるが、概略2万ペソと見積もった。


家具 見積もり 約5千ペソ

これが一番 ばらつきがあり、竹ベッドのみの約500ペソから、私の想定内で約2万ペソまで、いろいろ考えられる。
竹ベッドは、以前 私はドゥマゲッティで 一人用の小さいものを 220ペソで買った。最近でも300ペソ程度で買えるはずだ。一人用は飛行機のファーストクラスに比べれば1.5倍くらいの幅はあるが、ダブルで1.4m程度の幅のものが今回は適切だろう。これでも、私は以前450ペソで買ったが、そんなには値上がりしていないはずだ。しかし、シキホール島では、ハワイのパラダイス・タックスのように、交通費その他を上乗せされ、1.5倍程度になってしまうのが普通だ。ドゥマゲッティまで買いに行っても、自分自身の交通費と荷物の運送費がかかる。運送費は、ドゥマゲッティの陸路、船、シキホールの陸路でかかる。さらに港でポーターにぼったくられないようにしないといけない。面倒くさいので、誰かに頼んで、近所で買って来てもらえという話になりがちだろうが、私は、シキホールで適正価格のものが見つからなければ、面倒でも ドゥマゲッティまで買出しに行く。そうしないと、物価がつりあがっていくからである。家具ではないが、先日ドゥマゲッティの市場で1kg30ペソで売っていた魚を、シキホールの市場で90ペソで売っているのを見つけた。こちらで売っているおばさんにドゥマゲッティから来た魚かとたずねたら そうだと返事が返ってきた。物によって、ドゥマゲッティと比べかなり割高なものもあるし、反対に、少し前からの在庫なため、ドゥマゲッティより安い場合もある。

その他の家具としては、応接セットと呼んでもよい 竹の椅子とテーブルの4点セットがポピュラーだ。これは、ドゥマゲッティで1000ペソで売っていたが、シキホールで倍以上の値段になっていることもある。

別の知合いで、木製で数万ペソのテーブルを買った人もいて、家具はまさにピンきりと言えるが、数万ペソのテーブルは私の家と同様、この家には オーバー・スペックであろう。最初にあげた2万ペソに加えているのは、まずは、訪問者などのためのプラスチック製の椅子で、これは、最近では一つ500ペソ足らずである。その他に、食事やパソコン用のテーブル。さらにキャビネットや本棚などの棚である。

天井のベニヤ板 見積もり 約1万ペソ

天井は
(1)普通に日本でよくあるように水平に部屋の上側に取り付ける場合。
(2)屋根はこの場合トタン板だが、その裏側に並行で、貼り付ける場合。これは天井とは呼ばないかもしれないが、吹き抜けのように広い空間になり、特に暑いフィリピンには、これも有効であろう。
(3)天井なし。
主に、以上の3つの選択肢になるはすだが、田舎にある現地人の普通の家なら、天井がない場合がほとんどと言える。天井を付ける場合は、簡単に手に入り値段も安いベニヤ板を使うとしても、角材なども必要で、1万ペソ程度の予算となろう。

ペンキ 見積もり 約1万ペソ

ペンキは薄く何度も塗った方が はげにくい。トタン板には、通常なら、最初に金属表面用でRed lead とかRed oxideと呼ばれるオレンジ色のペンキを塗り、その後、所望のペンキを2回塗ることになろう。因みに、自宅の屋根のペンキを一度に沢山塗って大失敗して、その後全部剥がして、薄く合計5回塗ったら調子が良くなった。
知り合いのカナダ人は、トタン板の表面に塩酸を塗ってデコボコにして、その後砂などで中和させ、乾かした後にペンキを塗ったとのことである。これならペンキははげにくく、数十年大丈夫とのことである。
壁のモルタルには、予算に応じて2回か3回塗るということになるはずだ。この家は 壁がかなり高く、予算は約1万ペソと見積もった。

追加の人件費 見積もり 約5万ペソ

最初の4週間に加え、さらに1ヶ月余りかかっているので、その追加分。さらに、今後の追加分も少し含め、合計約5万ペソと見積もった。


以上、実際にこの家でどうしたかというだけでなく、いろいろな可能性を含めて書き並べた。例えば、今回はタイルはないことに決まった。しかし、数万ペソのテーブルは 割高でやめた方が良いと思うが、タイルは 日本人には割安なので、つけた方が良いと思う。そのため、ここではタイルを書き足している。現地の人は、予算ができたら後から付けるのが普通だ。

実際に この家がどうしたかについては、完成した写真とともに、次回、更新して、情報を追加したい。


(2010年4月更新分)

完成した家の写真

オーナーは不在だったが、別の日本人と 完成後の家を訪問したので、写真を紹介する。同行の日本人は、三人家族だが、三人でも十分な広さとのことだ。近所では一番立派な家である。
色使いと窓が少ない点がフィリピン人任せにした結果と思うが、100点満点はありえず、これだけできれば十分過ぎる。

玄関の屋根を広く取ってあり、地面がバルコニー風になっている。
前回の写真と比較して、正面の右の窓が、なぜか なくなってしまった。

奥行き8m(幅5m)

裏側は便所、シャワーなど

左側がオーナーの寝室
オーナーが不在の場合は、現地の人が利用するが、寝室は閉じられている。

寝室の上の中二階。
空間をうまく利用している。

右は中二階へ登る階段

オーナーが現地に到着後、再度訪問して、コストの内訳を教えてもらってから、また更新したい。
前回は、最終的にタイルが貼られると予想したが、全体がフィリピン的な色になったので、床は、赤セメントのレンガ色と容易にイメージされ、タイルはイメージしにくくなった。

最後に 上の家の配色を見て、連想した別の色の家を挙げておく。単に連想しただけで、どれが良いかどうかという話ではない。好みの問題である。これを読んでいる人は、海外に家を建てるのに興味がある人が多いと想定し、読者の参考のために取り上げた。

メキシコ カンクンの沖合い イスラ・ムへーレスの庶民的な通り

イスラムへーレスで、お店などが並び、小奇麗にした通りの建物。

マイアミ・ビーチのアート・デコレーション
最近は淡い色に変わった。

これ以外にも、出掛けた先で参考になりそうな建物は片っ端から写真を撮っている。南の島暮らしの参考に タイなどで、ビーチのコテージの写真も沢山撮っているが、余り熱心にやっていると、オーナーにスパイと思われ、あっちへ行けと手で合図を送られることもある。余談はこの程度にしておく。


(2010年6月更新分)

最終結果

オーナーが現地に来られたので、何度かこの家を訪問して話を聞いた。建築費用の詳しい内訳のリストを作るという予定はあったが、手間もかかるのでキャンセルしたそうだ。費用は合計で30万ペソ余り。日本円で70万円までは、かかっていないということである。私が途中で、その後の追加の費用を見積もったのと比べ、タイルと天井がないので、それを除けば、近い数字になっている。

現地で、管理していた隣の家の人の話も加えると、セメントが合計145袋。私の150袋という見積もりとほぼ一致している。セメントの量と大きく関係するが、壁のモルタルはブロックの両側1インチずつで、ブロックの4インチと合わせて合計6インチ厚の壁になっている。床にはセメントが25袋かかったそうだ。ペンキは合計1万ペソ程度。一缶4リットル入りで、500〜600ペソ程度。(片田舎のシキホール島では、輸送費を上乗せされるなど、工業製品は割高になる。) それぞれ、2度塗りまではしているとのことで、写真からでも、大よその見積もりはできるはずだ。


(2011年11月更新分)

約2年後、庭の草木が生え揃う


建て始めてから2年近くした現況を紹介する。太陽の光が強いので、ペンキの色は少し変色しているが、まだまだ新品と変わらない。さらに素晴らしいのは、周囲の庭であろう。隣の家族がマメで、彼らの世話により、いろいろな草木が生え揃っている、。当初は芝生はまばらだったが、それも生え揃った。フィリピンの田舎では、ガーデニングは、精神的に豊かな暮らしに欠かせないものであろう。通常は無料で草花を融通しあうので、あばら家でも 庭は綺麗なことが多い。



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