ボルネオ/コタキナバルでの日本人宅の建築事例

2010年3月作成



建築現場
横につながる海岸沿いの土地は政府の所有で、その横の土地をリースしているので、勝手に使えるとのこと。

先日ボルネオのコタキナバルに行った時に、日本人が家を建てているところを見せてもらったので紹介する。
たまたまビーチにある宿に泊まったところ、そこに80日も続けて泊まっている日本人が居て、近くに家を建て始めているという話を インドネシア人のスタッフから聞いた。

折角なので 夜 本人が帰ってきてから話を聞いて、さらに次の日 建築現場を見せてもらった。

宿のスタッフの話では、床が8mx8mの総二階ということだったが、実際にはそれより大きいとも小さいとも言える。1階も2階も100平米余りあると言えるが、実際には ほとんどがオープンスペースで、バルコニーや駐車場が大半を占めていて、壁で囲まれ部屋と言える部分は かなり少なく、半分以下である。日本を含め 熱帯以外では、冬寒いので 壁がないと困るが、熱帯では、壁がない方が開放的で、風が吹いて 快適な場合が多い。困るのは、蚊や その他の虫が飛んで来やすいこと。そして、風と共にやってくる横殴りの雨 (海岸沿いでは特に横殴りが多い。)、さらに、朝夕の横からの日差しくらいだろう。

ボルネオでは地震も台風もないので、このような設計が可能だが、日本のように台風が多く 地震も起こりうるフィリピンでは、残念ながら、そのまま真似をするのは良くない。しかし、一階部分のバルコニーを広くするのは、強度的にもコスト的にもフィリピンでもオススメできるかなりよい方法だろう。強度の面から、その上には二階は無しで、簡単な屋根だけなら、かなり安くできるはずだ。採光の良くない奥の部屋に昼間居るくらいなら、明るいバルコニーに居たほうがよっぽど快適だと思う。
私も、バルコニーが大半の 安くて広い家の間取りを試しにノートに書いてみた。

この家は建築の予算が200万円で、工期は3ヶ月。私が見に行った時には大工を3人雇っていたが、このまま ずっと3〜5人しか雇わない予定だそうだ。この広さ、この人数で3ヶ月というのは、フィリピンでは到底考えられない スピード建築である。

施工主は、日本で建築会社のオーナーをしていた方で、定年退職する歳になり、日本の仕事はすべて卒業して、コタキナバルで自分の思い通りの家を建てて 青春を謳歌しているとのことである。図面を どこまで自分で手がけられたのか確認していないが、とにかく、日本で建築会社が揃えるのと同じレベルの図面や資料が分厚くファイルされていた。日本語のままだが、図面なので、現地の大工でも、見れば大抵わかるはずだ。あとで役所に提出する図面を英語で書き直す必要が出てきそうだが、それはご愛嬌で、なんとでもなろう。

その日本人は、長年の経験から実務もすべて分かっているので、自分で現場監督をして、効率の良い作業の進め方を、大工に 自らやってみせて 指導していた。

早くできるというのは、まさにノウハウの塊があるからで、創意工夫の賜物である。

例えば、柱の中心に鉄のパイプを取り付けるが、それを固定するため基礎にボルト・ナットを使う。その固定方法に工夫がある。最初から穴があいた市販のブロックを買ってきて、そこにボルトを通して、さらにベニヤ板を使い固定している。
(右の写真 →) 
このブロックは、他の目的のために売られていたものを流用していて、本来は逆さまに使うもので、セメントで固めている反対側はデザインがあるそうだが、ここでは、それは不要なので、さっさと裏返して、そちらはセメントで固定してある。

私が見に行った時には、床にセメントを流し込むための外枠を取り付けているところだった。ここでも、いろいろなノウハウがあったが、例えば、作業中の工具の置き場一つにしても、次に作業を始める場所に工具を置くという指示があった。これは、必ずしも、作業時間を最短にするとは言えないかもしれないが、とにかく、先々の作業を頭に入れながら仕事を進めるというのは非常に大切なことである。例えば、建材を買出しに行くにしても、先々必要なものをまとめてリストアップして、建材店が複数あるなら、巡回セールスマン問題を解いて買ってくるのと、その都度、釘が足りない、ベニヤ板が必要だと言って、毎回往復しているのでは大きな違いだろう。

木枠の取り付けが終わると、金属のメッシュを敷いて、最後に生コンを流し込むという段取りであった。フィリピンでもマニラなら、高層ビルもあり生コンも買えるのかもしれないが、シキホール島ではそんな気の利いたものは存在しない。コタキナバルでは生コンは1立米7000円程度で、袋入りのセメントから買ってくる場合に比べ割高である。シキホールで生コンが手には入ったといても同様に割高になりそうだが、もしも入手可能なら 私も真似したい。ミキサー車がやってきて、生コンを床に流し、あっと言う間に作業が終わる光景。それを、近所の人々が見物人になって、ポカンと口を空けて見ている状況が目に浮かぶ。実際にその状況を見たいものだ。

他にも、沢山のノウハウを教えてもらったが、その一つを紹介しておく。工具や機材など、マレーシアでもフィリピンでも盗難に遭う可能性が高いが、それら所有物に書いておく自分の名前の話である。私の場合でも、いかにも盗られそうな椅子の裏などに、マジックで自分の名前を買いているが、それだけでは芸が無い。この方は、クリアホルダー等の樹脂を使い、自分の名前をくり抜いて、それを型枠にして、スプレーペンキを吹き付け、台車や電気ノコギリ等の所有物に自分の名前を刻んでおられた。そこまでは、私でも考えなくは無いとも言えるが、マジックで書くイメージから、型枠の文字を自分で書いて、下手な文字が最後まで残ってしまうのではないかと危惧してしまう。しかし、そうではなくて、パソコンを使って、自分の名前を大きな文字で印刷して、それを型紙にしてくり抜けば良いのである。直線的な字体なら くり抜き易い。漢字なので、現地の人に作業を発注するのは難しいかと最初は思ったが、図形をくり抜くのと同じなので、日本人でも、現地の人でも同じだろう。
一つ一つは単純な話だが、東南アジアで、このようにして、自分の名前を書いている人を、これまで 見かけたことはなく、私には画期的なアイデアに思えた。

メールで 盗難アジアと書いてよこす人はこれまでにあった。しかし、盗難は東南アジアの専売特許ではない。先日、マーシャル諸島のマジュロにサイクリングに行ったら、安宿の前に停めて置いた自転車が半日で消えて無くなった。警察に届けに行ったら、ちょうど1年前にも同じ場所で、日本の青年海外協力隊の人が、同じように自転車を盗まれていたことが判明した。 たぶん、船で他の環礁に運んだのだろうということで、どちらの自転車も出てこない。

余談はそれくらいにして、最後に、その他の参考写真をいくつか掲載しておく。

サムライと呼ばれるナタ。

コンピュータ制御で、ペンキを混ぜて、自由な色を作り出せるシステム。
NIPPON PAINT製。近所の建材屋で見かけたが、このように、自然な感じで日本製品が受け入れられている。マレーシアは台湾のように親日で、日本人はいろいろなところで感謝してもらえ 気分が良い。



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